優しいのかな緩い糸でいい

「そのゆったりした感じと、顔が好き」

私より少し歳上の、独身の彼が答えた。私はどうして既婚者の私と会い続けて行くつもりなのか、たまに聞きたくなる。単なる興味だ。

私からは「婚活もしてね、お仕事も頑張ってね」彼にはそう言っている。でも2人きりの時間は本当はそんな言葉が要らないのだって、わかってる。

手を繋ぎながら駅に向かう途中に、手を繋いだカップルとすれ違う。

「私達も他の人から見れば、ごく普通のカップルか夫婦に見えるかもね」

私はそんな風に言ってみせて、彼は「本当だよね。どんな関係かなんて誰もわからないよ」

彼は、続けて「いつか2人で旅行に行ける日は来るのかな？」そう言って微笑んだ。

背が高くて、身体も鍛えている。ファッションセンスも良い。顔も少し目元が濃くて、きっと悪くない。

ラインのレスポンスも早く、とても優しい。

沢山の本を読んでいるし、勉強もしている。田舎には親の残してくれた資産もある。

とても素敵な人なんでしょうね。

一緒に居る時間は、それは優しく接してくれる。前日には映画の「糸」を観たと言って、私もそれ観たいの！なんて興奮まじりで話したりなんかした。

だから、帰宅して彼から

「2人の糸は、切らさないようにしようね」

なんてラインを貰った時には、私はもう既に違う事を考えていて、でも今翌日になって久しぶりに強いセックスをしたから、私の足や腰の筋肉が少し痛んで、なんとなく、それは嬉しいよな、なんて思った。