第6章 初動
「10万株や20万株買うならそれもできるでしょう。しかし2億円足らずの会社を丸ごと買ってしまおうというのでしょう。そんな大きい計画を気取られずやれますか」私は三人に尋ねた。「いよいよとなったら三分の一買えばいい。そうだろう山口君、そうすれば我々の同意なしには.昭和ゴムは何もやれなくなる」
「ところがその三分の一がむずかしいのです。あっさり買えると思いますか。最高の相場技術を駆使しなければ買えません。みなさんはもう買占めが成功したように思ってますが、とんでもないことです。株ってそんなに安直なものでしょうか、一つの企業を生かすか殺すかの大計画ですよ」と私は三人に言った。三人は私を凝視し続けている。「山口君に実行を任せたらどうなる」と一人が言った。「私に任せてくれれば、まず確実に発行株数の三分の一は押さえてみせます」私は強く言いきった。自信はなかった。しかしチャンスというものは、そういうものだと思った。絶対に間違いがないというようなものは相場ではなかった。
不確定な要素に賭けるからこそ、大きな利益が得られるのである。その不確定なものを成功させるのは信念だ。
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