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旅の直前にバッグが欲しくなる病

旅に行くその直前になって毎度バッグが欲しくなるのは何故なのだろうか。皆そうだろうか。私だけなんだろうか。

毎度欲しくなるというくらいには、私はたぶん人より旅に出ることが多いと思う。ガイドブックや旅行記を読むのも好きで、観光地などとして有名な場所や、映画や漫画のモデルとなった地域(所謂「聖地」)なんかには必ず行きたいし、思い立ったら早めに予約をしてしまってあとから体力的な限界を感じ後悔するくらいに連続して行ったりする。20代半ばの頃、本当に多い時には月に一度は必ず旅に出るというノルマを自分に設けていた。仕事でも出張が多くて年間少なくとも10回は国内外を旅している。そんな自分が旅行バッグの一つや二つ持っていないはずも無い。それならいま持っている旅行用バッグが気に入ってないのかと言うと、とても気に入っている。事足りていないのかと言われれば、十分足りている。メインだけでも三つある。

①ハーシェルのボストンバッグ
ネイビーの野鳥柄で、中側はハーシェルお得意の赤ストライプ(バッグは中側デザインが派手なのが好き)。程よく軽いながらも自立できる硬さ。ハンドルの長さもしっかりあるので肩掛けも可能。

②IKEAのバックパック
たくさん歩く時は両手を開けておきたいのでバックパックタイプが好ましい。大容量で夏服なら三泊も余裕。ポケットが沢山付いていて使いやすいし、ファスナーが全面開くからスーツケースのように荷物の出し入れが簡単。柔らかい素材を使っているので背負い心地がとてもよく、荷物が少なめの時は少し平べったくなって形も好き。外側は黒、中側は黄色で中側派手デザイン好きも納得の御用達。

③仕事用の黒キャリーケース
機内持ち込み可能ギリギリサイズの布タイプで4泊まではこれでいく。アキバヨドバシの広大なキャリーケース売り場で吟味して買ったやつ。なによりも無難なところが最高で、もう10年近く使い倒しているけどもうしばらく現役でいて欲しい。ハードタイプのスーツケースが格好いいと思った事もあるけど、布を使って片面だけ開くソフトタイプの方が、いざという詰め込みの際に多少の収縮がきくし、軽くて、冬場も触って冷たくない。狭い部屋で泊まった時に開くのも簡単だし次買うのもこのタイプが良い。このサイズ以上のスーツケースが必要な場合は②のバックパックを専用ゴムストラップを括ってつける。もしくはそれほど多い荷物の時というのは仕事で荷物を運んだり土産だったり現地に置いてくることがほとんどなので、ダンボールに入れて現地まで郵送する。

以上のように、サイズ的にもデザイン的にも充足している。それなのに何故か出発の3日前くらいになってから突然Amazonで「ボストンバッグ」だとか「旅行用バッグ」とスマホで入力して検索をしたりする。しかも寝る間を惜しんで検索してしまう。でも結局それで買ったことはほとんど無く、出発前日に旅行用とは関係の無い街歩き用のトートバッグを買って、出張に持って行ったことがある程度だ。
どういった旅行用バッグを探すかというと、まず無難な柄なしのブラックだとかベージュのデザインの商品を探す。実際買って持つのは中側派手バッグだというのに。ちなみに衝動買いした上記の出張用トートも外は黒で中はオレンジだし、日常使用のPORTERタンカーシリーズのショルダーも中側がオレンジのくせに、何の変哲もない無難なデザインを探してしまう。

持っていないタイプだから欲しいというのは、買いもしないのについ探してしまう原因のひとつか。

考えられる原因のふたつめは、旅をより特別なものにしたくて新調したいという欲によるものであって、新しいバッグ自体は必要としていないということ。楽しみにしていたイベントやライブコンサートに向けて一張羅を新調したくなるのと同じだ。誰と行くだとか誰かに見られてるからだとか良く見られたいという理由はなく、なんか気持ちアゲたいという旅前に起きる気分の高揚でポチッとしたくなる、ということだ。

みっつめは、恐らくこれが最大の理由なのだと思うのだけれども、旅そのものが、散財をしてもいい理由として使えるからだ。日常ではほぼ同じものしか買って消費しない。着るものは季節ごとに古くなったものを捨てて買い足したりもするけど、基本バッグというのは試着不要で滅多に壊れず季節を選ばないことが多いのに「足りない」ということにはなりにくく、日常の中でバッグを買うという行為は無駄遣いになりやすい、というようなそんな気がする。旅をするタイミングであれば「無難なデザインが足りない」とか「もっと軽いのが必要」とか、何かと理由をつけられるし、クレジットカードの支払いの際も交通費や宿代の請求に紛れ込ませ有耶無耶に出来る。

恐らくこのあたりの理由があって、いつも出発直前になって必要も無いバッグを探し始めているんだろうと思う。いつも到着が出発時間に間に合わなくなる直前まで、旅先での自分を思い浮かべながら、悶々とああでもないこうでもないとカートに入れたり出したりしている時間こそ私にとっての至福なのだと思う。至福とはいえ無駄な時間なので、早く荷造りをしてしまえばいいとも思う。

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