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ユニセックストイレについての率直な感想

今回のテーマ:トイレ
by らうす・こんぶ


最近、日本ではろくな議論もないままに慌ただしくLGBT理解促進法が成立し、トイレや銭湯、温泉などはどう対応したらいいの?という戸惑いの声も聞かれるようだ。こういう時はたいていアメリカにすでにお手本があるもので、ニューヨークでは数年前からユニセックス(男女兼用)トイレが増えてきた。

私が一番初めに男女兼用のトイレを体験したのはクイーンズにあるMoMA PS1という美術館。ここはMoMA(Museum of Modern Art)の分室で、PS1というかつての小学校を美術館にした、私が好きな美術館のひとつだった。建物自体は小学校そのままなので、美術品を取り除いたら今でもそのまま校舎として使えるだろう。日本の小学校の校舎とさほど違いはないので、外国人である私でも懐かしさを感じる。そして、そこには日本の小学校のように男女別のトイレがあった。

だが、数年前に行くと、それがユニセックストイレになっており、私は入り口を入ってびっくりした。そこは元々男子トイレなので、男子用便器がずらりと並んだ奥にドアのあるトイレが並んでいるというレイアウト。女性用トイレを使うには、男性が用を足している脇を通って奥のトイレにたどり着かなければならない配置になっていたのだ。私はギョッとしてそのまま出てきた。ジョーダンじゃないよ(怒!)それからその美術館に行っても絶対トイレには行かなくなったので、その後もトイレがあのままかどうかはわからない。

それからしばらくすると、マンハッタンのホールフーズという高級スーパーマーケットのトイレがユニセックスになり、トイレの前に男女混合の列ができるようになった。このトイレは全てにドアがあるので、MoMA PS1のトイレで感じた程の不快感はなかった。ただ、私には男性に混じってトイレに並ぶというのはやっぱり気持ちのいいものではなかった。

もし、私がお年頃で思いを寄せる人がいたとして、その人とトイレで遭遇してしまったら、さぞかしばつが悪くて嫌だろう。それとも、今はそういうことを気にしない人が多いだろうか。ニューヨークでは気にしない人が多いだろうけれど。

ユニセックストイレについて、知人のある70代の女性(ニューヨーカー)は、「男性はトイレを汚すからユニセックストイレはあまり使いたくないのが本音」と言っていた。また、男性と一緒ではトイレでお化粧直しができないから嫌だという声もよく聞く。

では、どうしたらみんなが不満を持たずにトイレを使えるかとちょっと考えてみたのだが、日本ではすでに駅やショッピングモール、ドライブインなどには、男女別トイレの他に車椅子の人や赤ちゃん連れの人が使える広いトイレがある。あのようなユニバーサルトイレを男女別のトイレの他に設置すればいいのではないだろうか。小さなお店などだったら、誰でも使えるユニバーサルトイレ一つあれば十分かもしれない。

ただ、これを新たに設置するとなると、コロナ禍で疲弊した飲食店や宿泊施設は費用がかかってすぐには対応できないに違いない。それについては政府が助成金を出すべきだろう。政府はろくに議論もせず性急にLGBT理解促進法を成立させておいて、あとは現場でなんとかしろというのはあまりに無責任だし無能だ。



らうす・こんぶ/仕事は日本語を教えたり、日本語で書いたりすること。21年間のニューヨーク生活に終止符を打ち、東京在住。やっぱり日本語で話したり、書いたり、読んだり、考えたりするのがいちばん気持ちいいので、これからはもっと日本語と深く関わっていきたい。

らうす・こんぶのnote:

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