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桜を見るならやっぱり日本!

今回のテーマ:桜

by らうす・こんぶ

前回日本で桜を見たのはいつだっただろう。ニューヨークに住んでいたとき、帰国するのはいつも航空料金が安くなる5月の終わりから6月にかけてか秋だったので、ずいぶん長いこと日本で桜を見る機会がなかった。もしかしたら、20年以上見ていなかったかもしれない。そして、この春、久しぶりに日本で桜を見ることができてしみじみ思った。

桜を見るならやっぱり日本!

ニューヨークにも桜はある。セントラルパークでソメイヨシノを見ることができるし、ブルックリンのボタニックガーデンでは、5月の初めごろ、毎年「桜祭り」が催される。ここではさまざまな種類の桜を楽しめるが一番多いのは八重桜で、八重桜が満開の頃に桜祭りがある。でも、日本人にとっては桜と言ったら八重桜じゃなくてソメイヨシノだよね?毎年、この時期になると、八重桜には悪いけど「ちょっと違うんだよなあ」という軽い違和感を覚えた。

初めて海外で桜を見たのはカナダだった。よく覚えていないけれど、桜の木がたくさんあってちょうど見頃だった。きれいだったが、日本で桜を見たときのような、待ちわびた春がやっと到来し、その証であるかのように桜が咲いたときのなんとも言えない嬉しい気持ちが湧いてこなかった。桜の木の背景となっている景色が日本とは違うカナダの自然だったからだろうか。

その後、ニューヨークの桜も、有名なワシントンDCのソメイヨシノの桜並木も見たけれど、日本で桜を見たときのような感動がなかった。きれいな花を見たという感動はあったが、桜を見たときの喜びはほかの花が咲き誇っているのを見るときとは違う。それがなかった。

桜の花自体は同じはずなので、桜を見る環境か、桜を見る私自身の気持ちが違うからだとしか思えなかったが、ずっと理由がよくわからなかった。

そして、去年帰国し、この春久々にあちこちで桜を見て、もしかしてこれが理由かもしれないと思ったのは、日本では桜がどこにでもあるということだった。もちろん、桜の名所と言われるところがあって、そういうところには花見客がどっと押し寄せるけれど、そういうところじゃなくても、小学校の校庭や住宅街の一角にあるような小さな公園などにはたいてい桜の木があるし、街路樹や川沿いに桜並木があることも多い。よその家の庭先や駅前などにある名も知らぬ木が、春になって花をつけて初めて、「ああ、桜の木だったんだ」と嬉しく思うようなこともよくある。日本では普段の生活の中に当たり前に桜があるのだ。

桜は1本だけでも十分に春の気分に浸らせてくれる。家の近所を歩いていて、小学校の校庭や人の家の庭先に咲いている桜を見たとき、わざわざ桜の名所や桜祭りなど人がごった返すところに出向かなくても桜を見ることができるささやかな幸せを感じる。こうしたことはニューヨークでは感じることがなかった。


らうす・こんぶ/仕事は日本語を教えたり、日本語で書いたりすること。21年間のニューヨーク生活に終止符を打ち、東京在住。やっぱり日本語で話したり、書いたり、読んだり、考えたりするのがいちばん気持ちいいので、これからはもっと日本語と深く関わっていきたい。

らうす・こんぶのnote: 

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