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【転校生】

「転校生の秋月風夢君だ」
 その子を見たときイヤな予感がした。
 彼は人じゃないと。
 そして・・・彼は。

 放課後・・・
 私たち2人以外、誰もいない教室。
 今日まで提出の課題を冷夏に手伝ってもらっていた。
「いつも男に興味の無い冷夏が珍しいねボーとなるなんて」
 からかい気味に言ってみた。
「そんなんじゃないって言ったでしょ」
 冷夏がムキになって否定する。
 そんなんじゃなきゃ何なのかな?冷夏ちゃん」
 彼に気を取られていたのは事実だ。
 もちろん、私もだけど。
「ただ・・・・」
 冷夏はためらい気味に言葉を切った。
「ただ 何?」
「見たことがあるような」
 初めて見る転校生なのに?
「見たことがあるってあの転校生?」
「うん」
 冷夏の目は真剣そのものだ。
「なーんだ、やっぱり気があるんじゃない。それとも、前世で出会ってた とか?」
 う~ん。やっぱりからかう方が楽しい。
「そんな事言うなら手伝わないよ」
 ちょっとムッとされてしまった。
 やばっ
 気を悪くしちゃったかな。
「えーん。秀才の冷夏の頭が無いとこんなの終わらないよ」  私は冷夏にすがりつく。
「はいはい。それより、手を動かそうね」
 冷夏は子供にでも言うような口調で私に言う。
「楽しそうだね。何してんの」
 急に声がして振り返ると転校生がいた。
「今、秋月君の話してたの。秋月君は何しにきたの?」
 やっぱり来たか。
 と言うことは、冷夏が目的なんだ。
「僕は忘れ物を取りに来たんだ。 あれ、それって課題?」
 転校生が机を覗き込んできた。
「そう。雷那が今日までにやってこなかったから、手伝いしてるの」
 手を動かしながら答える冷夏。
 冷夏の視線はノートの上。
 お願いだからよけいなことは言わないで。
「へえ、手伝ってあげようか」
「もう終わるから」
 冷夏が素っ気なく返す。
「それなら一緒に帰ろう」
 え?
「ボディガードがわりにはなるだろ?」
 そう言って、冷夏に近づく気か。
 でも、私も近づきやすいよね。
「送ってってくれるの?嬉しい」
 私は転校生の腕を掴んで答えた。

 私の家は、冷夏の帰り道の途中にある。
 必然的に私を先に送って冷夏の家まで行くことになる。
 送ってもらうんじゃなかった。
 冷夏に何もなければ良いんだけどね。
 私は冷夏に触らせるまいと必死に話題を探す。
 そして、家についてしまった。
「あ、私の家ここなの。じゃ、また明日ね」
 ・・・・・・。
「彼はダメだよ」
 私は冷夏に囁く。
「何が?」
「つまり、彼に近づかないでねって事」 急にふざけた調子に変えた。
 あんまり真剣に言うと変に疑われそう。

 あれって夢の者かな。
 冷夏の・・・。
 私は自分の部屋で考えた。
 冷夏は渡したくない。
 渡さない。
 だってあれは私のだもの。
 ・・・。
 夢の中じゃ手のだしようがないか。
 しばらく様子見かな。




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