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365日のてのひら話

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200文字を基本に500文字までの物語。
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2024年6月の記事一覧

2024/06/30 風鈴売(ふうりんうり)

チリンチリンと涼し気な音が緑の葉の間から響いた。 そんな場所に風鈴は飾っていない。音の生…

名野凪咲
1か月前

2024/06/23 「国際寡婦の日」 

「あんたの夫は見つからない」 姉さんは真っ青な顔でそれを聞いていた。そして次には叫んでい…

名野凪咲
1か月前

2024/06/29 日向水(ひなたみず)

「何この水?」 「陽に当てただけの水。ビニールプールに貯めておいたの。冷たくはないでしょ…

名野凪咲
1か月前

2024/06/22 「かにの日」 

「かには、足が沢山あって食べ応えがあるんだよね」 同居人が死んだような目でそう言いながら…

名野凪咲
1か月前

2024/06/28 日照雨(そばえ)

「狐の嫁入りだね」 青空から落ちてくる雫を掌で受け止めながら、彼はそう言った。キラキラと…

名野凪咲
1か月前

2024/06/21 「キャンドルナイトの日(夏至)」 

ゆらゆらと揺れる炎は少し怖い。 「これ、倒したら大変」 目の前のろうそくに独り言を言って…

名野凪咲
1か月前

2024/06/27 月涼し(つきすずし)

「月の光は熱を分散させた残り香なんだよ」 そう言ったのは誰だったろうか。 「太陽の光は熱そのものだから、熱いんだ」 夢見心地でそんな言葉を聞いたような気がする。 「気が付いた? もう。びっくりしたよ。倒れるから」 目を覚ますと、同居人が私をのぞき込んでいる。身体の熱がぐるぐると回っているような気がして、起き上がることができない。 「ごめん」 水分を取り忘れていたかもしれない。普段から救急車は呼ぶな。涼しい場所で水でもぶっかけてと言っていたので、そうしたようだ。水ではな

2024/06/20 「世界難民の日」 

それは、静かな前触れだったのかもしれない。 「こんにちは。困りごとありませんか」 水汲み…

名野凪咲
1か月前

2024/06/26 ハメルンの笛吹きの日(諸説あり)

「笛の音が聞こえる」 4つの妹がそんな事を言い出した。 「聞こえないよ」 私はそう言ったけ…

名野凪咲
1か月前

2024/06/19 「朗読の日」 

「あめんぼあかいな」 「おいしいな」 変な言葉が混ざり込んできたが、韻が上手く合っていて…

名野凪咲
1か月前
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2024/06/25 寝冷子(ねびえご)

「お……はよ」 同居人の声が変だ。 「おはよ」 私は体温計を差し出す。 「んー。そこまでじ…

名野凪咲
1か月前

2024/06/18 「おにぎりの日」 

「食べる?」 そう言って差し出されたのは、海苔が巻かれたおにぎりだった。 「んー。中身何…

名野凪咲
1か月前
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2024/06/24 合歓の木(ねむのき)

「あれはねむの木。ねんねんねむの木。あの木の葉っぱは夜になると閉じて眠るのよ」 そう言っ…

名野凪咲
1か月前

2024/06/17 「おまわりさんの日」 

「おまわりさんって、回る人? 警察官とは別?」 同居人が不思議そうに首を傾げてテレビを指さした。ほとんど使ってないテレビに、警察の仕事の番組が映っている。 「うーん。そっちの国にはなかったの? 地域を見回る人みたいな。落とし物を届けたり、道案内してくれたり……警察官と同じだから、事件が起きたら行く事もあるかもしれないけど、捜査はしない人っていうか……」 言いながらも自信がない。改めて聞かれると説明が難しいことに気が付いた。 「案内所の人? 落し物はその施設の人に届ける