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ドトールのサンドイッチ

ひとり日帰り東京旅行。
旅行と書いたが、遊びに行くわけではない。でもせっかくだから楽しむに越したことはない。

うちには2種類のカメラがある。
大きくてごつめのミラーレスカメラとコンパクトデジタルカメラ。

少し前から、どちらのカメラを持っていくか悩んでいた。

最近スマホのカメラでは物足りなくなってきて、大きなカメラを首にかけて出歩くことが多い。

どちらもスマホと比べるとかなりきれいではあるけど、大きいカメラの方が画質も色味もいいと感じるから、大きい方を持ち歩いている。

でも、旅行となると話が変わる。いい写真を撮りたい気持ちと同じくらいに荷物を軽くしたい気持ちがある。

パソコンもあるから、日帰りとはいえリュックは重い。でもせっかく普段行かない場所に行くんだからいい写真が撮りたい。

夫に相談する。

「邪魔やろ、ちっちゃい方でいいんちゃう」

"できるだけ身軽に"を重視する夫にあっさりそう言われてしまった。小さい方を持って行くことにした。

新幹線に乗り、車内を3枚、ドトールのモーニングセットを12枚、外の景色を3枚撮影する。

東京駅に着き、待ち合わせ場所である上野駅へ。
「公園口」という出口名に惹かれて改札を出てみると、目の前にピンクと緑のポスターできれいに飾られた東京文化会館があった。写真を撮る。1枚。

目的地までスマホで調べずに行ってみたくなり、設置されている地図を頼りに歩いていたら意外とちゃんと到着できたのが嬉しくて、そのときの景色を撮る。1枚。

上野での用事が終わり、VOCA(ヴォーカ)展という展示を見に上野の森美術館へ。

チケット売り場が分からず、どこかに着けそうな黄色いエレベーターがあったから乗ろうとしたら警備員さんに止められた。チケット売り場って上じゃないんですか?と聞くと、こちらですよと笑いながら案内してくれた。チケット売り場は今いる場所の目の前だった。

写真OKの美術館でも、作品は撮影しないと決めている。その場で見る体験が大切だと思うから。後から作品の写真を見返すことはないと思うから。写真を撮らずに見ている人の方がかっこいいと思うから。

記念に外観を撮ろうと思っていたのに、周りを見ながら歩いていたら写真のことなどすっかり忘れていた。

その後、以前住んでいた場所を巡るつもりだったけど、帰ることにした。あの場所は家族と話しながら歩く方が楽しいだろうということに気がついてしまったら、ひとりで行く気にはなれなかった。

東京駅に着き、"THE東京駅"の景色を撮る。寒いから2枚だけ。

むすめへのお土産を買おうと「すみっコぐらしショップ」へ行くとTシャツが安くなっていた。お土産にセール品はどうなのか?という考えが頭をよぎったけど、結局買った。

夫へのお土産を選び、バタバタと新幹線へ乗る。

自分はどんな写真を撮ったのだろうかとカメラを見る。

行きの新幹線で食べたドトールのサンドイッチセットの写真が半分以上を占めていた。

どっちのカメラを持っていこうか悩んでいた自分を思い出し、なんともいえない気持ちになった。


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