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頭の中には常に、面接官がいる

就活を始める前、いわゆるガクチカとか、自己PRとか、例えば「優勝した」とか「売り上げ何倍にした」みたいな、"すごい"エピソードじゃないと受からないのかと思っていた。

でも、就活をしていくうちに、だんだん「エピソード自体はどうでもいい」「エピソードの内容を見ているわけではない」とよく言われることの意味がわかってきた。
なぜそれをやったのか、どんな意図でその行動を取ったのかを聞くことによって、面接官はその人の思考力や性格を見たいのだな、と。

だからこそ、就活の面接って、とにかく根掘り葉掘り聞かれる。
私はベンチャーばかり受けていたから、面接官と一対一でお話しする(ゆるくお話ししながら実際はがっつり選考されてるわけだけど)という形式の面接がとても多くて、そういうタイプの面接は特に、一つの出来事、一つの経験について、とにかく深く聞かれた。

なぜその大学を選んだのか
なぜ専攻はそれにしたのか
なぜそのサークルに入ったのか
なぜインターンを始めたのか
なぜそれに興味を持ったのか
なぜそういう行動を取ったのか
なぜその価値観が形成されたのか

絶対と言っていいほど聞かれるのは、その意思決定に至った動機や理由、目的。

何回も面談やら面接やら受けていくうちに、この「なぜ」を答えた後には、次はこの「なぜ」を聞いてくるだろうな、みたいな感じで、面接官が突っ込んでくる「なぜ」ポイントが何となく予想できるようになっていった。

面接対策をする時も、「なぜ」の部分を徹底的に自分自身で深ぼって、いくら「なぜ」を繰り返されても答えられるようにしようと準備をした。

そんな感じで、春休み、就活漬けになっていた私は、毎日のように自分自身の「なぜ」と向き合っていた。

その結果、どうなったか。
頭の中に面接官が棲みついてしまった。

何かしようとするたびに、面接官が「なぜそれをやるんですか?」「どういう目的でやったんですか?」「どんな目標を立てましたか?」と聞いてくる。
映画見ようとしても、「なぜその作品を選んだんですか?」
絵を描こうとしても、「なぜ絵を描こうと思ったんですか?」

特に理由もなく、なんとなく「これやってみたいな〜」と感じることって、よくあると思う。
でも、それをやってみようと手を出そうとするたびに、面接官登場。
面接開始。
「なぜそれをやりたいのですか」
「どういう目的があるんですか」

何をやろうとしても、私の頭に思い浮かぶのは面接の場面。
(これをやってるって言ったらなんて聞かれるかな)
(こんなどうしようもない目的じゃ不合格にされる…)

理由なんて、面接官が納得するようなものに、後からいくらでも"編集"すればよいのかもしれないし、実際それくらいの心持ちでいた方が、「うまいことやり抜く」という考え方の方が、生きやすいのだと思う。
ただ、私は「ちゃんとした理由がないとダメなんだ」という呪縛から逃れられなくなってしまった。

「なんとなく」じゃダメなんだ、何か立派な理由がないと、常に目的を持っていないと…。

実際、これまでの人生振り返っても、そんなにやる前から目的とか理由とか意識したことなんてなかったはずだ。
「なんかやってみたかったから」
「楽しそうだったから」
「ワクワクしたから」
大半は、こんな単純な理由、というか直感からはじまった。
あとで振り返ってみたときに、「もしかしてあのとき〇〇だったから、こういう決断をしたのかも」というような感じで、直感に論理を後付けしてきた。

だから、それをやった意味や目的は、やった後にわかるものであって、本当ははじめから「なぜ」とか「何のため」とか、崇高な理由がなくても構わないんだよ、と、頭では理解しているはずなのに。

脳内の面接官はいなくなってくれない。
何をするにしても、面接官に目的や理由を伝えないと、それで面接官を納得させないと、それに取り組むことが難しくなってしまった。
なんとなく、で何かをすることが、怖くてできなくなってしまった。
何に対しての怖さか、それはやっぱり、面接官に「なぜ」と聞かれたときに、答えられないことへの怖さ。

どうしてこうも、私は自分で自分を生きづらくさせてしまうんだろう。
面接官も、私が勝手に作り出したもの。
私の思い込みさえ変えられれば、もっと自分の「やってみたい」に忠実に生きられるのに。
これじゃ常に自分の選択、自分の決断を、誰かに評価されてるみたいだ。

就活や面接といった概念を自分の中から取っ払いたい。
誰かに話すこと、誰かに説明することを前提とした意思決定じゃなくて、もっと自分の心の中から溢れてくる感情や直感みたいなものに正直な意思決定がしたい。
誰かに評価されることを考えずに、自分がやりたいからやる、そんな真っ直ぐな生き方ができるようになりたい。

どうしたらそんなふうになれるんだろうか…。

恐れ入ります。