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40代から変わる人生「記憶の道具」29

視点を変えれば二酸化炭素は簡単に減らせる?

 前回は、最近の地質学が、南鳥島沖の日本のEEZ内にある深海に大量の良質なレアアースが眠っていることを発見したというワクワクする話をしました。そこで今回は、その地質学という地味な学問が、地球温暖化の元凶と目されている二酸化炭素(CO2)を減らす方法も見出しつつあるという話をしたいと思います。これ発想法にも通じる話です。

 太古の昔、地球の大気は二酸化炭素だらけだったといわれています。それが徐々に減っていって、いまは窒素と酸素が中心になっています。学校では植物の光合成が二酸化炭素を酸素にしているからだと習ったような気がします。
 ところが地質学は違うアイデアを提示します。海水中にあった大量のCO2を岩石が吸収したので、平衡状態にある大気中の二酸化炭素も減ったのだと! そのメカニズムはこうです。海底には、火山から噴き出したカルシウムとケイ素の化合物であるケイ酸塩が大量にあった。そのケイ酸塩鉱物が海水中に大量に含まれていたCO2と反応して炭酸塩鉱物になった。

前回と今回取り上げたテーマを研究している東大のエネルギー。資源フロンティアセンター/システム創成学専攻 加藤・中村・安川研究室のロゴ
https://kato-nakamura-yasukawa-lab.jp/

 ちょっと難しいですね。もう少しかみ砕いてみましょう。
 地球上にはいまも、35億年前に海底火山から噴出した玄武岩が残っています。現在の玄武岩には大量のケイ酸塩が含まれていますが、太古の玄武岩には、ケイ酸塩の代わりに大量の炭酸塩が含まれているそうです。できたときには太古の玄武岩にも、ケイ酸塩がたくさんあったはずです。それが海水中の高濃度のCO2と反応して炭酸塩鉱物になったと推定されているわけです。

 ハイ、まだ難しいですね。要するに、地球環境は大気という気体、海という液体、そして地球という個体から構成されていますが、この気体・液体・個体という3つの層の間に物質移動がある。この物質移動によって、大気中・海水中にあった大量の二酸化炭素が、岩石の中に取り込まれて大気中のCO2が減ったというわけです。
 地球環境という話をするとき、私たち、大気や水の話をしていて個体地球のことを忘れていますよね。実は、その忘れている要素がけっこう重要なんだ、というのが地質学の教えるところなわけです。
 それでどうなるかって? この岩石が海水中のCO2を取り込むメカニズムを技術的に利用すれば、二酸化炭素による温暖化を止めることができるということです。そのためには100km2程度の海底で二酸化炭素を岩石にシンクさせればいいという試算もあります。100km2って円にすると直径12kmにも満ちません。広い大海から見れば点です。

 空気・水だけではなくて固体地球へと視野を拡げる。そうしてシステム全体をとらえる。地味かもしれないけれど、そういう努力をすると創造的な解決策が見つかるというとてもいい例だと思います。仕事でも部分に囚われて全体像をみていないためにムダな苦労していることって、結構ありますよね? 

 この話、ぜひ人に語りたいので、今日も「ケイ酸塩→炭酸塩」「玄武岩」というキーワードをiPhoneアプリ「キオクの達人」に入れて、2週間後に出てくるようにリマインド設定しておきました。1週間ぐらいは忘れませんからね。


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