40代から変わる人生「記憶の道具」31
ヴェストファーレン条約が抜けている!?
NHKの「3か月でマスターする世界史」が今月終わりました。楽しく、新しい発見がいろいろあったのですが、あれ? と思うことも何度かありました。その一つが、ヴェストファーレン条約(Westfalen、英語読みから日本ではウエストファーリアと記されることが多いですね)が出てこなかったこと。
この条約、勢力均衡(Balance of Power)という、今にいる重要な国際秩序の考え方を生みだした超重要な条約だと思うのですが、まったく触れられませんでした。
簡単に解説しておきましょう。
NHKの「3か月で世界史」では、17世紀のヨーロッパを「17世紀の危機」と括っていました。小氷河期にあって地球規模で寒冷化したので凶作が続き、大規模な飢饉が6回もあったそうです。その上にペストが流行して、人口が激減した時代と描写されています。プロテスタントとカソリックの対立から戦争に明け暮れ、ほぼどこかで戦争があった世紀でした。「軍事技術」が進み、銃や大砲のような火器が実際に使われた暗い時代だった。
こういう記述はあるのですが、この1世紀におよぶ相次ぐ戦争と疲弊に鍛えられて、大きな歴史的な転換があったという記述はありません。
その転換とは、従来の国王や宗教的権威、帝国ではなく、今日に続く「主権国家」という概念が生まれたこと。そしてそれが「国際関係」の基本単位となったことです。概念だけでなく、それを支える外交の枠組み(例えば、首都に他国の常駐の代表を設置する)が設計され、グロティウスのような学者によって国際法が編み出されました。これらは現代の国際関係を考える上で必須のものです。
その思想上の母体となったのが、ヴェストファーレン条約でした。この条約、ヨーロッパ史上で最も頻繁に引き合いにだされた外交文書だそうです。私見ですが、今日の中東の紛争は、17世紀のカソリックとプロテスタントの対立を起点とした一連の戦争状態と似ているような気がします。そうだとすると、解決には世紀単位の長い時間が必要なのかもしれません。
それほど重要なものなのに、なぜか「3か月でマスターする世界史」からは抜け落ちています。と、偉そうに語ってはみたもの、この番組のナビゲーターの岡本隆司先生は、そんなことは百も承知のはずです。わかった上で外しておられる。その意図を、お目にかかる機会があれば、ぜひ伺ってみたいと思います。
思いこまずに、クロスチェックをする。重要ですね。
そのためには、これを長く記憶に留めておく必要があります。「キオクの達人」を使ってときどきリマインドし、いつ来るかわからない好機に備えたいと思います。
追記: 最近、App Storeで「キオクの達人」アプリが見つからないことに気づきました。このブログを読んでダウンロードしようとしていた皆さん。ゴメンナサイ。うっかりしてメンバーシップの期限が切れることに気づきませんでした。すぐに復旧しますので、今しばらくお待ちください。
いまお使いのみなさん、ご心配なく。ダウンロードできないだけなので、ダウンロード済のアプリは引き続きご利用いいただけます。
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