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歴史気候学と創作

注意

※この記事はなんの専門家でもない、趣味として小説を創作している一般人が書いています。
※科学的に正確な記述を心がけていますが、作者の無知・勘違い等で間違いが含まれる可能性も大いにあります。

歴史気候学とは

 歴史気候学は、私の理解では過去の気候変動と人間社会の歴史的イベントを関連づけて考察する学問である。ここ20年ほどで極地の氷床コアや湖の堆積物コアなどから数万~数千年前の過去の気候を詳細に知ることが可能となり生まれた新しい分野だ。新しいので「古気候学」や「歴史気候学」など、まだ用語が統一されていない感がある。「古気候学」という言葉の方がやや優勢のようだが《歴史》の観点が薄くなるのでどうかなという気がする。「古気候学」は地球創生時まで含めた過去が対象で「歴史気候学」は人類史限定という感じもするので、別の分野になるのかもしれない。また研究者によって、過去の気候について当時の書物などの歴史的資料と照らし合わせる《気候》よりの視点もあれば、当時の気候から歴史のイベントがなぜ起こったのかを理解する《歴史》よりの視点もあるようである。
 私のような一般人は後者の見解に触れる機会が多いので、歴史気候学とはそういう学問だと思っていたのだが、実際にはいろいろな観点からの研究があるようだ。

 下記の『古気候学と歴史気象学:気候研究に関する文理融合のすすめ』という論文は11年前のものだが日本語で書かれ具体的な研究例がとても面白いのでぜひ一読をおすすめする。

https://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/26207/p011.pdf

西洋中世期と気候

 4900万年前から現在までの地球は氷河期(第四氷期)にあたり、その中でもここ12万年間は最終氷期(LGP)と呼ばれている。LGPの中にも氷期と間氷期があり、約1万2千年前からは間氷期になり、人類は農耕を始めることができた。ただし間氷期の間も一貫して気候がおだやかだったわけでは無く、有史以後も人間が生きていくのに問題となるような気候変動が繰り返された。

 歴史と気候との関連といえば「ヨーロッパ中世」を思い浮かべる人も多いだろう。
 10世紀から14世紀にかけてのヨーロッパは「中世の温暖期」と呼ばれる温暖な時期で北極海(ノルウェー海)が凍結していなかったので「赤毛のエイリーク」がそこを航海してグリーンランドを発見し、ヴァイキングの入植につながった。人口の増加や経済の発展が見られ、十字軍の遠征も行われた。
 10世紀より前は寒冷期であり、中世キリスト教の暗い雰囲気は寒冷期に形成され、その後の温暖期でルネッサンスに向かったと考えると理解しやすいかもしれない。(こうやって調べてみると私的には十字軍前が「中世」のイメージで、十字軍~ルネサンス前までの中世は別区分のような気がするが、歴史に詳しくないのでそれはまた別の機会に考えよう。)

 17世紀半ばから18世紀初期は「マウンダー極小期」という太陽黒点の極小期で世界全体で寒冷化したと言われている。日本では江戸時代の初期にあたり、凶作や飢饉が絶えなかった。

※下は国立極地研究所の片岡先生の講義資料だけど、グーグルで引っかかったんだから紹介しても良いよね?
『マウンダー極小期と魔女狩り』

http://polaris.nipr.ac.jp/~ryuho/pub1/Seikei_Kataoka07_MaunderMinimum.pdf

気象と創作

 気象は複数の要因が絡むとても複雑な現象であり、暑い寒いだけでなく降雨量なども問題で、短期間で極端な変化があると社会に大きな影響があり、簡単には語れない。
 私は趣味で近未来の福岡を舞台とするSF小説を書いている。2051年にある科学者によって『人類絶滅予測』というものが公表され、人類絶滅への対策として科学者を中心とするCCCという組織が世界各地に研究拠点を建設し、そのうちのひとつであるハカタCCCを中心舞台として半世紀くらいの時間の流れを描く世界観の小説である。
 シリーズの第1作目『ALL LOST HUMAN』は人類史と社会性の問題に、人類史ファンであれば絶対知ってる有名な一大気象事件を絡めた話。
 いま書いている2作目『Pussycat、Where Have U Came?(子猫ちゃん、どこイクの?)』は有性生殖の起源を中心としてまたまた最近有名な一大気象事件を絡める予定。
 3作目は『"I"(アイ・イン・コーテーション)』というタイトルで主観/客観とか自/他問題とかを生物進化と合わせて扱う予定だけど詳細は未定。
 そのあとは『Bio-Grapy』という作品を書く予定だが、これはこのシリーズの本丸で、生物・物質・情報の相関関係など、私がずっと興味を持っていることについてゲノム学や進化学、マイクロバイオームなどを絡めて描く予定である。

 このシリーズ小説は近未来が舞台なのだが、「気候変動問題」をどう扱うかというのは悩ましい。いちおうこのシリーズでは「人類に絶滅の危機がせまっている」わけだが、その要因はゲノム的な問題という設定である。私がいちばん興味を持っているのがゲノムや進化学なので、どうしてもそれが中心テーマとなる。現実の気候変動問題も人類の危機なのだが、それを入れこむと創作上のテーマがぼやけるので、この小説シリーズでは気候変動問題は小休止状態になっている。
 だからと言って、決して現実の気候変動問題を軽視しているわけでは無いので、そこはご了承願いたい。現実は現実、創作は創作である。

 ただ、今まであーだこーだ書いてきたように、私は気候・気象も大好きであり、創作には気象イベントも盛り込みたい。『Bio-Grapy』では地球大気圏もひとつの重要な舞台として考えている。そこで何が起こるかは内緒ですが!

 そんなわけで、小説の創作に関して、最近は気候歴史学という分野でいろいろな知識が増えているので、そういったことも生かしていくと面白いのではないかなと思う。
 私の場合は未来を舞台にした小説を書いているので、気候がどうなるのか、またどのようにそれを描くのかというのは未知数の部分になるのだが、人間社会と気候の関係を考えながら創作するのも楽しいんじゃないかと思うわけです。

※第1作目は完成して無料公開しているので良ければ読んでみてください。(なんど宣伝するんだって感じですが…)

※ということで、Stable Diffusion Onlineに『氷河期の十字軍』ぽいものを出してもらったんだけど…これほとんどGame of ThronesのNight's Watchじゃん。


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