子猫ちゃん、どこイクの?[SF小説]#0
注意
この小説はフィクションです。登場する全ての固有名詞や概念は実在のものとは全く関係ありません。
この小説は近未来を舞台としたSF小説シリーズの一部です。前作は『All Lost Human』であり、Kindle出版物として販売しています。
この小説の主要なテーマは《有性生殖》であり、物語の都合上、全編にわたって《男女の対立》が表現されます。作者は女性であり、その立場から認知・表現をしています。
テーマの都合により性的な言葉や表現が頻出します。ただしポルノ的な表現はしないように心がけました。(noteの規制により18歳以下は閲覧禁止になる可能性があります。)
この小説は全体として10万字以上のボリュームがあり、学術的な内容の文がセリフとして頻出します。
高校程度の生物学、特に進化学に関する知識が有ることを前提としています。(バクテリア、アーキア、ゲノム、エピゲノム、原核生物、真核生物、細胞共生、性淘汰、ミトコンドリアなどの用語について意味をだいたい理解していること。)
以上のことを了承した上で読んでいただけるよう、お願いいたします。
登場人物
《築6とその周辺》
カナエ:20代前半の女性。一度は家出していた地方の実家に戻っていたが、家族の崩壊によりふたたび博多に舞い戻ってきた。言動はぶっきらぼうで人づきあいも苦手だが知能は高め。髪型などを派手にしたがる。
アイ:博多の隣の天神を牛耳るヤクザ組織《グシカイ》の幹部の娘で、ヤクザが嫌で博多の築6に逃げてきた。世話好きだが神経質でネガティブなところもある。
マミ:築6で働く女性。幼いユウの母親。ヤンキー気質でいつも疲れていて言動が荒れている。
サト:築6の同僚でリョウの母親。リョウのために仕事を頑張っている。グループの中では年長なので諭すような言動が多いが、どこか他人とは一線を引いている雰囲気もある。
ジュカ:築6などのCCC委託業務をしている博多駅周辺ビルの治安維持活動を行う自治組織《エキケイ》のボス。本来その業務を担当するハカタCCCの防犯組織《クシナダ》から内密に業務を委託され、コンニャクと呼ばれる武装スーツを貰いうけて常に着用しているため、女性ながらエキケイ内外で誰も反抗できない権力を持つ。
ノマ:カナエが前に築6にいたときに同僚だった女性。軽い知的障害があり、築6に入るための審査に苦戦していたのを偶然カナエが手伝ったことで彼女を慕うようになった。
《オヲハ》
リョウ:サトの息子で彼女と共に築6で暮らしていたが、15歳になった頃にジュカに追い出され、シンゴに誘われてオヲハに加入した。築6時代に声をかけてくれたアイに一目惚れした。能天気で感情的だが好奇心は強い。
シンゴ:元エキケイだがマミに手を出したのがジュカにばれて追い出され、今はオヲハにいる男性。女性など自分より立場が下の相手にはチャラい態度だが自分より上の相手にはビビリで媚びた態度をとる。自分のことをクズだと思っていて虚無的な雰囲気を持つ。なぜかリョウには慕われている。
ヒロ:オヲハのリーダー。容姿にも体格にも知能にも恵まれていないが誰にでも傲慢な態度で上昇志向が強い男性。すぐ怒るがすぐ忘れ、あけすけで陰険では無いのがほとんど唯一の長所だが、シンゴのことはあからさまに嫌っている。
モンタ:オヲハのサブリーダー。隠した上昇志向を持つ男性。倫理観や教養は無いが状況や他者の発言に対する理解力が高い。ヒロと違ってネチネチしている。
ノブ:オヲハのメンバー。細身で敏捷。権力者に取り入るのが好きでヒロに心酔している。ヨーフィの扱いが上手く、たいてい2人で行動する。
ヨーフィ:オヲハのメンバー。大柄で力が強いが知的能力は低い。なぜかヒロとノブが好きで、モンタは嫌っている。
《CCC》
ホーラン・ジン:ハカタCCC(ウェスタリーズ社)所属の社会学者。荒廃した都市中心部に暮らす人々を観察記録するフィールドワークの実践者。ルーツは日本人だが祖父母の代から中国の上海在住であり、ハカタCCCの完成後に日本に移り住んだ。
バーバラ・ダジャニ:ベイルートCCC内で暮らす女子学生。両親共にCCC所属の研究者。幼少時から先進的でリベラルな環境で純粋培養されたお嬢様。自分の興味がある学問内容は熱心に追求するが、少しでも興味から外れると眠くなってしまうという欠点がある。
ニナヤ:バーバラがモークス内で知り合った女子学生。たまに同じ講座を受けたときに議論をする相手としてつきあっている。
バーバラの父親:宇宙生物学者。ベイルートCCCに居ることが多く、娘の良き話し相手。
バーバラの母親:著名な社会心理学者。研究では対面での議論を重要視し、世界中を飛び回っている。
《その他》
パセ:バーバラがモークス内でレポートに書くためのネタを探す過程で知り合ったユーザー。
オドゥオール:パセと同様で彼と議論しているところにバーバラが現れる。
ティエン・グァン:バーバラがモークス内で知り合った男子学生。彼女と同じように《有性生殖と性淘汰》の講座を受講してレポートを書いていたが、それよりも宇宙生物学に興味があるらしい。
用語
(この小説がシリーズの一部のため、わかりにくいと思われるものについて解説)
CCC:トリプルシー。2051年にゲノム解析学者のリン・フランクリンが自身のチームの研究成果として公表した《人類絶滅予測》の後、その研究と対策のためとして世界中の科学者やグローバル企業の幹部などが共同で設立した組織であり、複合企業体の高層ビル群。日本では福岡県の博多湾埋立地に有り、ハカタCCCと呼ばれる。CCCに居住するほとんどが人類の上位0.5%程度の知的能力が高い研究者とその16歳以下の家族である。CCC内部は建設地の国内法には縛られない国際行政特区であり、所属する研究員にはさまざまな特権が与えられている。トリシーとも略され、所属員は自分たちのことを「トリシーサー」または「トリサー」と呼ぶが、CCC外の世界ではやや侮蔑の意味を込めて「チェイナー」と呼ばれている。
モークス:マルチクリエイトスペースの略。CCC企業のウェスタリーズ社が開発・運営している一般向け仮想ネット空間。2050年代に量子ネットが実現し、その技術を使用しているため非常に堅牢性が高い。それよりも前のインターネットは「オールド・ネット」と呼ばれている。モークス内では「セット」と呼ばれる固有の仮想環境をいくらでも構築することができ、運営が用意した大型セットやユーザー自身のオリジナルなセットが大量に存在するのが特長。モークスに入るための最も簡易的な端末は無料で提供されるが、ユーザー登録には当人の全ゲノム配列データの提供が条件である。
クシナダ:ハカタCCCの防犯組織。CCC所属員とは区別される。CCCのビル群の周辺の広大な専用地を拠点とし、基本的にCCC内の所属員とは交流しない。CCCの建造物と所属員を守るのが仕事だが、地域行政からの委託で周辺地域の治安維持を担ったり、CCCが外部委託業務のために整備した施設やその職員の保安業務なども受け持つ。
グシカイ:過去の福岡ヤクザ抗争における勝者で、福岡都市圏の旧繁華街である天神の地下街を拠点とするヤクザ組織。
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