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海外短期ゼミ研修 ~韓国・ソウル 新しい日韓観光交流を考える~

「ツーリズムと社会」をテーマとする中村忠司ゼミでは8月7日から10日まで3泊4日のソウルゼミ研修(2、3、4年合同32人)を行いました。ソウルは成田から約2時間半と近く、4日間の行程でもフルに時間を活かせるのが魅力です。

成田国際空港でのブリーフィング

研修の目的は3つあります。1つ目は、観光学ではトップクラスの漢陽大学李ヨンテク名誉教授が所長を務める韓日観光交流研究所を訪問し、研究員の方たちからお話を伺い、学生と議論を交えることです。2つ目は、21世紀の観光の主要なテーマとなった「持続可能な観光」のフィールド調査です。清渓川(チャンゲチョン)の再生事業や北村(プッチョン)韓屋村での観光客と住民の共生、世界文化遺産水原(スウォン)での資源保護を視察しました。3つ目はニューツーリズム(フードツーリズム、コンテンツツーリズム分野)の視察です。韓国ならではの食やK-POPなどの文化を感じました。

【行程】
1日目 成田から仁川へ、清渓川再生事業視察、ロッテJTBインバウンド担当者の講話、懇親会
2日目 韓日観光交流研究所訪問、昼食、仁寺洞・北村韓屋村等視察
3日目 世界文化遺産水原華城・行宮視察、昼食、韓国観光公社広報館・ロッテワールドタワー等視察
4日目 仁川から成田へ

復元された清渓川

【1日目】
清渓川は1950年以降都市ソウルの発展とともに急速に水質汚濁が進み、1971年には暗渠化して川の上に高架道路が通されました。2000年代に市民の要望で復元計画が持ち上がり、2003年から2005年にかけて高架道路を撤去して河川の復元事業が進められ、今は市民や観光客の憩いの場所になっています。夜もイルミネーションに多くの人が集まり、路上コンサートなど人の交流が促進され、都市気温の上昇を抑えることにも一役買っています。


ロッテJTBインバウンド担当者の講話

懇親会では、現地で研修のサポートをしていただいたロッテJTBの李ウンスクさんから日韓の旅行者の特徴について講話がありました。円安・ウォン高もあり韓国から日本への旅行は急速に伸びています。訪問地では、LCCの便が多く近くて行きやすい大阪・福岡での食べ歩きが人気とのことでした。日本から韓国では圧倒的にソウルで、K-POP、韓流ドラマの舞台地巡り、タレントショップが集まるエリアが人気で、今はインバウンドもアウトバウンドも若い人が牽引しているとのことです。

韓日観光交流研究所でのセミナー
李ヨンテク所長らとの集合写真

【2日目】
韓日観光交流研究会として、最初に宋ナヨン副所長による韓国旅行のトレンドと朝鮮通信使再現パレードを通した釜山と対馬での市民相互交流が紹介されました。その後の質疑応答では学生から「再度のパンデミックでの観光への影響の懸念」が問われました。それに対し、李所長は「観光は外部の小さな変化が影響を及ぼす敏感な産業であるが、観光産業を深化させることでゆるぎない産業にしていくことができる。そのためにはお互いに深い交流を創り出せる政策が必要になる」と答えられました。


北村韓屋村

昼食後は、韓屋カフェや伝統的な雑貨が並ぶ仁寺洞と伝統家屋が建ち並ぶ北村地区を視察しました。北村は住民が主体となって伝統的な韓屋を守っていく取り組みで知られています。近年はオーバーツーリズムが課題となり、住民と観光客の共生のために様々な取り組みがなされています。マナー掲示だけでなく案内人は観光客が騒いでいると「静かにしてください」と注意します。

世界文化遺産の水原華城

【3日目】
水原はソウル市内から車で約1時間の城郭が残る街です。1997年に世界遺産に登録されました。周囲約5㎞の城壁と東西南北に大きな門があります。水原市では城郭周辺のカフェなど観光施設の増加に伴い、家賃の高騰や駐車場問題など住民と観光客の軋轢が起きており、地域資源を保全しつつ、観光に活用していくための観光専門部署が2015年から設置されています。

【食文化】

石焼ビビンバ
海鮮チジミ


水原名物のワンカルビ 

韓国で日本との食文化の違いを感じるのは、何といってもパンチャン(おかずの小皿料理)が多数、しかも無料でお代わりできることでしょう。数種類のキムチやナムル、サンチュ、ヤンニョムケジャン(ワタリガニの甘いコチジャン漬け)など、おかずでおなかが膨れるくらいです。

豪華なパンチャン

日韓関係は現在良好で、特に若者を中心に相互に海外旅行者数が増加しています。今回の研修旅行の中で面白く感じたことは、K-POPや配信によるドラマが日常化している中で、韓国語をそれなりに駆使する(特に女子)学生が多かったことです。語学研修や授業での取り組みではなく、韓流ドラマやYouTubeなどの趣味を通して言語能力を獲得する若者が日韓共に増え、お互いに共通するコンテンツを話題にして交流していく。一度友だち関係になると、何回も訪れ、どんどん会話が成り立つようになってくる。どちらの国も固有のものがあり、似ているがちょっと違うところを楽しみにしながら、日韓の交流が深化していくといいなと思います。

(中村忠司)

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