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The Major Bill Tapes vol.1 / Larry & The Blue Notes

テキサスがアメリカでも有数のガレージバンド輩出州だということはみなさんご存知ですよね。
そのテキサスの中でも特に層が厚い地域がFort Worthです。
砦ですものね。

以前、アメリカに住んでいたことのある人と話をしていた折、
テキサスに長くいたというので、軽い気持ちで
「Fort Worthのあたりですか?」なんて聞いてみたら、とても驚かれました。

東京に住んでました。
「赤羽ですか?」くらいの感じでしょうか。

Fort Worth Teen Sceneを聴いて思い出す

さて、Fort Worthですが、テキサスのこの地域だけでコンピレーションアルバムが組まれるほどに
ガレージバンドを輩出しています。
いつものようにそんなコンピレーションアルバムをSpotifyで聴いていたんですが、
ちょ待てよ、と思い出しました。

そういえばずっと昔に購入したFort Worth Teen SceneのLPがあったはずだと。
手元にあるのは2枚なのですが、もしかするともっとあるのかもしれません。
まずはその1枚目、Larry & The Blue Notesのアルバムを確認しましょう。
そうしないと、のちに続くFort Worth Teen Scene3枚で横道にそれるようにLarry & The Blue Notesに触れることになってしまいそうだからです。

Larry & The Blue Notes

元々は1962年に二人のLarry(SlaterとRoquemore)によってハロウィンのライブのために結成されます。
メンバーはデモを録音し地元のプロデューサーで起業家の元へ持っていきます。
その曲が"Night Of Sadist"でした。
が、テキサスは保守王国。
Sadistという言葉が攻撃的すぎるのでラジオで放送されないのではとして、Phantomに変更されてリリースされることになります。
1965年に無事リリースされ、これが地元でヒットします。おめでとう。
このヒットにより、20th Century Foxからもリリースされ全国区となります。
その後もリリースが続くのですが、ヒットはなく挙句に変名でのリリースとなってしまいます。
The Bad や The Mark Fiveというとってつけた名前で。
また詳細は不明ですが、偽Sir Douglas Quintetとしてツアーを行った記録もあるようです。
確かに楽器編成は同じような感じだし、テキサスだし・・・ってそんな理由だけか。
1966年、心機一転。Larry & The Blue NotesとしてシングルIn & Outをリリースします。
その後1967年にかけて、レーベルはIn & Outをカップリング曲を変えつつ4回リリースします。都合5回。
1966年、7月、11月、12月
1967年、2月、7月
なぜ頑なに、この短期間でリリースを繰り返したのか、真意は不明ですが、
それくらいにこの曲が売れることを願っていた、売れるに違いないと信じていたのかもしれません。

バンドは1968年頃に分裂し、消息不明に。Roquemoreさんはソロでシングルリリースをしているようです。(ハーマンズハーミッツのカバーとか)

Larry & The Blue Notes - The Major Bill Tapes vol.1

今回のアルバムを見ていきましょう。
トラックリスト

01 In & Out (Unreleased Version)
02 Night Of The Sadist (Alternative Version)
03 In & Out
04 It's You Alone (Unreleased Version)
05 Love Is A Beautiful Thing
06 She'll Love Me (as The Bad)
07 What Made Me Lose My Head (Unreleased Version)
08 The Train Kept A 'Rollin' (Unreleased Version)
09 Just Stay (as Larry Roquemore)
10 Talk About Love
11 Everybody Needs Somebody To Love (as The Bad)
12 The Phantom (as The Mark Five)

彼らのルーツ、ハロウィンでのライブのためというのを念頭に入れておくと
これらの収録された楽曲に納得しそうです。
In & OutのようなファズナンバーとShe’ll Love Meのようなムーディーなだけの曲が入り乱れているのです。
なんかその相反するような音楽性が両立しているあたりにうっすらと狂気を感じます。

In & Out

彼らの代表曲といえばやはりIn & Outですね。
数々のコンピレーションアルバムに収録されており、どこかで耳にしたことがあるかもしれません。
あ、あくまでもガレージ界隈での話です。一般的にはヒットした曲ではないので無名です。
個人的に初めて聴いたのはPebblesのHighs in the Mid-Sixties Vol11 Texas Part Oneでした。
これにより、テキサスにはこんなバンドが沢山いるんだろうなと興奮したものです。
何せPart Oneですから、他にも編纂されていることは間違いないわけです。(実際には3枚です)
さらにはTexas Flash Backやら、テキサス系のコンピレーションアルバムには漏れなく入っていそうです。

In & Outには、いわゆるガレージパンク的な要素が全て詰まっています。
ファズ、シャウト、オルガン、レイブアップ、勢い、若さ、怪しさ。
何せ「ヘイ!」から始まりますから。
そして怒涛のようなファズ、オルガン、ハープ、そしてズンドコドラム。
これは異世界です。テキサスでは我々と違う流れがあったのではないかと思われます。

彼らはこのIn & Outの1曲のみでガレージ界にその名を刻んだのです。
名誉かどうかはよくわかりませんが。

その他の曲

Night Of The Sadist/Night Of The Phantomは中間です。
ややムーディーな面も残しつつ、彼らのガレージバンドとしての本質が溢れてきている曲です。
前述のようにSadistからPhantomに変えてリリースされているのですが、改めて聴いてみると、
再録したのではなく、明らかにその部分だけ被せていますね。
しかもそのせいでバッキングトラックの音量が下がっているという荒さ。
違う意味で荒々しい楽曲に仕上がっています。

カバー曲の2曲もかなり興味深いですね。
Love Is A Beautiful ThingとThe Train Kept A’Rollin’をやっているのですが、
どちらもこのバンドの音に合いそうでワクワクしますよね。
ただシンプルにカバーしているだけですが、偽Sir Douglas Quintetツアーで培った演奏力が堪能できます。

Love Is A Beautiful ThingはThe Rascalsの曲をややテンポ早めに仕上げています。
オルガンのソロとか、コーラスとか、この曲はメンバーが好んで楽しんで演奏している雰囲気が伝わります。

The Train Kept A’Rollin’はThe Yardbirdsのバージョンを再現しているようです。
イントロの汽笛は彼らのファズが良い感じで鳴り響きます。期待が膨らみます。
しかし、各駅停車といった感じでなので大きな期待は過剰です。

音源

これね、かなり前のLPなんですよね、さすがにSpotifyにはないのですが、
なんとYouTubeにまるっとありました。

Spotifyにも沢山ありました。


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