読書リハビリ:文集バイト
文學界9月号の特集、エッセイが読みたいで、高瀬隼子が紹介していた文学フリマで購入したエッセイ集が気になったので購入してみた。
紹介されていたバイトの話はこんなところ。
これ、思い当たるところがあって、その原因というか現象について、もう少し考えてみたいと思ったのが購入の決め手でした。
掲載されていた10のエッセイはどれも印象深かったのだけど、
特に響いたのは3つありました。
人間の着ぐるみを着るバイトだよ:とりあえずビール
まずはこれ。購入の端緒となったエッセイだ。
がしかし、ぼくが思っていたような深淵はなく、要するにカフェのバイトではあまり馴染めていなかったこと、そしておそらくそれはお互いにそう感じていたであろうというところ。
本題はやはりここ、なぜそれに耐えられなかったのか。
ぼくもこの経験がありかなり嫌な気分になった。
おそらく、いや間違いなくお客側も店員のことは覚えているし、その関係性が嫌だったのだ。
私的な会話がある関係性ではないのに、なぜかオーダーを理解させられている状態が。
簡潔にいうならば向いていないのだろう。そういうバイトだし、そういうものだから気にする点ではにということで。
根源的なところで「やりたい仕事ではない」というものがあるのも理由なのかもしれない。
ホームカットとトミーフェブラリー:千葉美穂
早朝バイトの話、開店準備のためのドーナッツ作りをせっせとするバイト。
同じシフトの小野寺さんと小気味良い連携で仕事をこなすのだけれど、個人的には全く繋がりは発生しなかった。
そして職場にエンドレスで流れるトミーフェブラリー。
唯一一人で完成させられるという、ホームカットの製造工程
流れるように説明される工程は、まさに誦じているという文章で心地よかった。
ぼくもバイトの「作業」に幸福を見出せる人間なので、粉をこねたりする作業の説明に心が躍った。
調理関連のバイトは未経験だった。これを読んでやっておけば良かったと少し思った。
産経新聞を一緒に読むバイト:中岡祐介
これはバイトの内容がまず気になった。
これは破格だ。事前に準備は必要ではあるようだけれど、時給時給五千円ならばできる。
しかしながら、時給が高いだけあって、それなりの相手であって、ただ新聞記事を読むというだけではなかったのだろう。
その対象者のバックグラウンドに合わせて記事を選択する必要はあるだろうし、かなり知識のある人のようにも思える。
実はAさんは右寄りで、筆者は赤旗を購入するような左寄りの人。
というか、それは事前に情報共有しておいて欲しい大事なポイントのような気もする。
Aさんのこと、自身のこと、諸々の説明が非常に明確で、文章をつらつらと楽しみながら読んでいけた。
そして気になるのは話の終わり方だ。
皮肉にも朝日新聞。
バイトとはいえ、縁があって繋がった人。
意外とその別れは覚えていないものなんですね。または記憶が曖昧になっているということかもしれない。
一通り読んでみて、バイトの経験というか、そこで得た想いとか、
学生時代の学校の話よりも、興味深いものがあるものですね。
で、おそらく本人は大したことない普通のバイトと思っていることでも、
意外と感じ方が違っていたりするもので、楽しめました。
ぼくも遠い昔のバイトのことを少し思い出してみたりしようと思う。
サポートをしていただけたら、あなたはサポーター。 そんな日が来るとは思わずにいた。 終わらないPsychedelic Dreamが明けるかもしれません。