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【ピラティス】 ロールアップを徹底分解!

こんにちは!ちーりんです🐪
理学療法士であり、駆け出しのピラティスインストラクターです。
ピラティスも取り入れながら、現在は病院で働いています。

ピラティスの中にロールアップというエクササイズがあります。
こんな感じのエクササイズです↓

簡単に説明するとこのエクササイズは、
・脊柱の柔軟性を高める
・腹筋群の筋力強化
など、脊柱を動かしながら腹部の筋力も鍛えられる、とても素敵なエクササイズです!

しかし、もっと細かく見ていくと脊柱の動きに合わせて頸部から股関節まで段階的に筋力を使い、脊柱をしなやかに動かすことができます。

今回はロールアップを行うことで頸部、胸部、腰部の筋肉がどのように使われるか、徹底分解してみたいと思います。

※本書では、ロールアップ動作のみの解説でありロールダウンの説明は行っていません。
※脊柱、骨盤の動きを中心としており、上肢の動きや筋肉の働きは省略しています。


1.本書での定義

解説するにあたり、いくつか定義を定めておきます。

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まず、図1-1のようにロールアップのスタートポジションである
・頸椎、胸椎、腰椎にそれぞれ自然な前弯、後弯がある状態
・骨盤がニュートラルポジション(ASISと恥骨結合を結ぶ線が床と平行)

を0度と定義します。

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脊柱はシンプルにロールアップしてくる動きを屈曲とし、骨盤は図1-2のように動く方向に応じて前方回旋、後方回旋と表現することとします。

2.頸椎

 2-1.頸椎の屈曲可動域

まずは頸椎です。
頸椎の合計可動域は約45〜50°と言われています。

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※今後、胸椎、腰椎でも同様のグラフが出てきますが、参考書を元に自ら考えた予測値です。あくまでも目安とお考えください。

この値を参考に、ロールアップ時の頸椎の屈曲角度をグラフ化してみます。

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図2-2をみていただくとわかるように、頸椎の可動域が大きく変化するのはスタートポジションから上部胸椎が屈曲し始めるまでの間です。
青く囲った部分を拡大し、実際にどのような筋肉が働くのか、下記に表現してみます。

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頸椎の屈曲は、まずインナーマッスルが働き、その後アウターマッスルが働きます。
インナーマッスルによって、頸椎の前弯が減少することが主動作筋を効果的に使えるポイントとなります。
その働きを細かくみていきましょう。

 2-2.頸椎屈曲時に使われる筋肉

①スタート→0c/C1
まずは環椎後頭関節の動きです。眼球運動や頭部のわずかな動きからスタートします。

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図2-4に示した通り、眼球の下方への動きは下直筋、上斜筋などの筋肉の働きによって引き出されます(図2-4①)。
この眼球の動きに伴い、後頭下筋群は弛緩し、前頭直筋や外側頭直筋の働きによって環椎後頭関節での屈曲が起こります(図2-4②)。
同時に、下顎を引き下げるため舌骨上筋群が働くと考えられます
(図2-4③)。

②0c/C1→C2/3
上記の筋肉の収縮を維持しつつ、頭長筋や頸長筋が働きだします。

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図2-5のように、頭長筋や頸長筋の働きによって頸椎の前弯が減少します。

①、②ではまず環椎後頭関節でわずかな動きが起こり、その後頸椎全体のわずかな屈曲が起こります。
この”わずかな屈曲”というのがとても重要で、ピラティスではこの動きを
”ヘッドノッズ”と言います。

他のピラティスエクササイズでもそうですが、脊柱の一部のみがたくさん動くという動作は望ましくありません。
なぜなら、そのような運動パターンが身についてしまうと、一部分にストレスがかかりやすくなり、疼痛などの不調を引き起こす可能性があるからです。
脊柱はエロンゲーション(長軸方向への伸展)をしながら全体的にしなやかに屈曲や伸展などの動きができることが理想的です(図2-6)。

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頸椎屈曲の際、0c〜C3ではわずかな屈曲(ヘッドノッズ)を通過して全体的に屈曲してくることが望ましく、この動きを可能にしているのが図2-4,
図2-5で示している筋肉たちだと考えられます。

③C2/3→C7/Th11
図2-5に示した通り、頭長筋や頸長筋によって頸椎全体の屈曲方向への動きが促されると、頭部が持ち上がり下部頸椎が屈曲してきます(図2-7)。

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頸椎の前弯が減少していることで胸鎖乳突筋は頸部屈曲に働き、頭部を挙上します。
そして舌骨下筋群や斜角筋も加わって更なる頸椎の屈曲が起こり、胸椎の屈曲へ繋がっていきます。

↓頸椎屈曲時に働く筋肉をまとめて動画で見てみましょう!

3.胸椎

 3-1.胸椎の屈曲可動域

次に胸椎です。
胸椎の合計可動域は約30〜40°と言われています(図3-1)。

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ロールアップ時の屈曲角度をグラフ化してみます(図3-2)。

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胸椎が主に動くのは緑で囲った部分です。
頭部の挙上に伴い、上部胸椎から徐々に屈曲が始まります。
そこから腰椎の屈曲が始まるまで段階的に屈曲角度が拡大します。
緑で囲った部分を拡大し、筋肉の働きを考えてみましょう(図3-3)。

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図2-3で示した頸部の筋肉は、胸椎が屈曲している間は常に働くと考えられます。
胸椎の屈曲では、Th5を境として上部胸椎、下部胸椎で筋の働きが分かれます。

 3-2.胸椎屈曲時に使われる筋肉

①C6/7→Th3/4

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Th3、4までの屈曲は先ほど説明した頸部の筋群の付着部から考えると、
頸部の筋群の持続的な収縮によって屈曲していると考えられます。
(図3-4)

②Th5/6→Th9/10

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Th5/6からは、第5肋骨に外腹斜筋や腹直筋が付着しているので、これらの筋群によって肋骨を介して胸椎の屈曲が起こります(図3-5)。

③Th10/11→Th12/L1

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第10肋骨には内腹斜筋が付着するため、Th10からの屈曲は外腹斜筋、腹直筋に加え内腹斜筋の収縮も加わります。

↓胸椎屈曲時に働く筋肉を動画で見てみましょう!

4.腰椎

    4-1.腰椎の屈曲可動域

続いて、腰椎です。
腰椎の屈曲合計可動域は約50°と言われています(図4-1)。

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ロールアップ時の屈曲角度をグラフ化してみます(図4-2)。

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黄色で囲った所が、腰椎が主に動く部分です。
腰椎の屈曲は下部胸椎が屈曲し始めるのと同時に、徐々に始まります。
黄色で囲った部分を拡大し、筋肉の働きを考えてみましょう(図4-3)。

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腰椎の屈曲のポイントは”腹筋群の働きによって腰椎前弯を減少させる”ところにあります。
ここで腰椎の前弯が減少できると、大腰筋による腰椎の屈曲がスムーズとなります。
詳しくみていきましょう。

    4-2.腰椎屈曲時に使われる筋肉

①Th10/11→Th12/L1

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胸椎で出てきた図3-6です。
外腹斜筋、腹直筋、内腹斜筋の働きによって胸椎の屈曲が起こりますが、同時に腰椎の屈曲(腰椎前弯の減少)が起こります。

②Th12/L1→L5/S

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大腰筋が働く時、腰椎が屈曲位であれば、更に屈曲方向へ働きます。
腹筋群の収縮によって腰椎の前弯が減少しているので、Th12→Sまで大腰筋の働きによって腰椎が一つずつ屈曲してきます(図4-4)。

腰椎屈曲で使用される筋肉は骨盤の動きと一緒に動画を載せます。

5.骨盤

最後に骨盤です。
骨盤は可動域ではなく、動きで表現しています。

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図4-2で示した腰椎の屈曲と同様に、下部胸椎が屈曲し始めるあたりから骨盤は後方へ回旋していきます。
その後、腰椎が床から離れて屈曲しだすと、骨盤も前方へと回旋し始めます(図5-1)。
オレンジで囲った部分を拡大してみましょう(図5-2)。

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ポイントは骨盤の回旋が切り替わる下部腰椎の屈曲の部分。
また、最終域で梨状筋や骨盤底筋群が働く部分です。
骨盤全体の動きからみてみましょう。

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骨盤が後方へ回旋するのは、腹直筋や内腹斜筋の働きです。
その後、下部腰椎が屈曲するにつれて、腸骨筋の働きで骨盤は前方へと回旋していきます(図5-3)。

では、最終域での梨状筋、骨盤底筋群の働きにはどんな作用があるのか。
少し細かいですが、仙骨と寛骨の動きを考えてみます。

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仙骨のカウンターニューテーションは、腸骨の後方回旋とほとんど同じタイミングで動くと考えられます(図5-4 ①)。
一方で、骨盤全体が前方へ回旋し始める時は、わずかですが仙骨のニューテーションが先に始まり、その後寛骨が回旋し始めると考えられます(図5-4 ②)。
その際、仙骨の過度なニューテーションを防ぐために、梨状筋や骨盤底筋群が遠心性に働くと考えられます(図5-5)。

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では、前章の腰椎屈曲と一緒に、筋肉の働きを動画で見てみましょう!

6.動画で見てみよう!

今まで見てきた筋肉達を一連動作の中で見てみましょう。
”脊椎を一つ一つ動かす”ためにどんな筋肉が働くのか、よくわかると思います。

7.まとめ

いかがでしたか?
一つのエクササイズを遂行するために、どんな筋肉が働いているのかを細かく考えていくと、
・何が原因でエクササイズができないのか
・代償動作が出てしまう原因は何か
考えるヒントになると思います!
これからもいろいろなエクササイズを分解していきます!


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