日本人ですらあまり知らない温泉の秘密(3)〜ロケーションの違いを活用する
温泉の知られざる魅力について、どしどし書いていこうと思う菅野です。
(1)では、「そもそも温泉ってなんだろう?」ということを書きました。
(2)では、「療養泉の泉質ってなんだろう?」ということを書きました。
今回(3)では、「ロケーションによる印象を活用すること」について書きたいなと思っております。その前に、様々な温泉の作用についても、ご紹介します。結論急ぐ方は、「転地効果っ!」あたりから読んでください・・・笑。
|温泉の作用あれこれ
温泉には、様々な作用をもたらしてくれます。
・「温熱作用」
体温上昇/保温効果がある。
→疼痛緩和/筋・関節拘縮の改善/血行促進効果/免疫力増強作用/タンパク修復機能がある。
・「物理作用」
浮力→胸まで浸かると体重は1/3になる。
水圧→圧力が全身にかかり、肺を縮め、心臓に負担をかけるので押し出す力を増やしてくれる。(心臓に疾患のある方は要注意)
粘性抵抗→運動に負荷をかけてくれる。
・「化学・薬理効果(入浴・飲泉)」
温泉に含まれる陰イオンや陽イオンについては皮膚から入ってくる量はわずかということだが、ガスになると皮膚吸収量が比較的多いとされている。
(二酸化炭素、ラドン、硫化水素などはガス=温泉)
高い温度や高い成分量の温泉入浴に入る方が吸収量が多くなる。
・変調効果
ホルモン分泌、神経系機能の調整をしてくれる。
自律神経の調整にも役立ち、リラックス効果をもたらしてくれる。
|温泉入浴以外の効果因子
上記は温泉入浴による直接作用なのですが、それ以外にも温泉入浴に伴う行動や活動による「運動効果」「食事効果」「休養効果」、そして今回取り上げたい「転地効果」というものがあります。
・運動効果
ジョギング・散歩・フィットネスなどの運動による効果
・食事効果
バランスやリズムのいい食事による効果
・休養効果
入浴・運動の後の休養による効果
・転地効果
気候や土地・風景、植物等の違いによるリラックス効果 ←今日はこれを書きたい!やっと出てきたよ・・・
そのくらい、温泉っていろいろあるし、ちゃんと書かないとと思ってつい、前半が長くなる。結論を急ぐ方は、後半から読んでいただく方がいいのかもしれない。
|転地効果っ!
転地効果、転地療法などと使われ、今いる日常の場所から別の場所へ移し(たとえば温泉地に移し)療法したり、転地による効果を期待する・・・。そういった意味で使われています。
「温泉地に行くことは、たいてい非日常である」ということから、それを前提に温泉ワードとしても「転地効果が期待できる」とされたのでしょう。
習慣や慣れは、人の五感をなめらかにしてしまいます。刺激的ではない。
刺激をたまに与えて、五感を使うこと。視覚、嗅覚、味覚、聴覚、触覚すべてを活用するには、今いる場所ではない場所へ行くことが簡単です。これが転地効果にこめられた意味だと考えています。
しかし、転地効果じゃ〜!と温泉地に住むことを選んだ私にとっては、
大好きな鉄輪温泉も、数年経てば、これが日常化していきます。
どうする、わたし。
|別府には2,800over、大分県には5,000overの源泉の穴がある
鉄輪温泉が日常化してしまう、温泉地に住む私のような方も安心してください。
湧出量、源泉数ともに日本一、入れる温泉の数が世界一と言っている大分県。別府には2,800本以上、大分県には5,000本以上の源泉を誇ります。(2022年段階)
犬も歩けば棒に当たる、ひとは歩けば温泉にあたる別府・大分県。別府だけでも2800本って、1日1本入ったら2800日ってことは、365日毎日違う源泉に入ったとしても8年くらいかかります。
そうです、私たちは、鉄輪温泉でいつも入っている温泉以外の他に行けばいいのです・・・!これが転地効果!
|ロケーションの違いを活用するって?
そこで、ロケーションの違いを活用する視点になっていきます。
「ロケーション=場所・位置」のことです。
前回のnoteに、私はこう書きました。
別府の源泉数2,800本の個性。もっといえば、同じ源泉でも、湯船やお宿が違えば、提供される温泉のクオリティや雰囲気が違うわけなので、これまた違うと私は考えています。
これを、逆手に取り、活用する。 ということなのです。
|ロケーションの違いによる活用方法
たとえば、同じ鉄輪温泉、同じ「ナトリウム・塩化物泉」の温泉を比べてみます。(A)は組合温泉の鉄輪すじ湯温泉、(B)は鉄輪にある旅館「みゆき屋旅館」の温泉です。いずれもナトリウム・塩化物泉です。
(A)(B)ともに源泉箇所は違うところにあります。しかし同じナトリウム・塩化物泉。しかし、場所が変わるとやっぱり雰囲気が全然違います。
壁がタイルなのか、木なのか。
これで、入ったときの空間の包まれ方や印象は違うでしょう。色から来る印象も違ってきます。
内風呂なのか、露天なのか。
窓を閉めたら蒸気がこもる内風呂か、外気に触れることができる露天かによっては、温まり方、冷え方、リフレッシュ感はまた異なります。
洗い場がざらざらした石っぽいものか、つるりとした石か。
これによって、ひたっと足がひろってくれる触感が違います。おしりをつけたときの感じも違います。
光の挿し方の違い。
これは場所が違うことにより、窓の位置や露天により、光の挿し方が違ってくるのですが、
もうひとつ付け加えて言いたいのが、同じ浴室でも、朝・昼・晩で挿してくる光が変わること。朝は、うわぁぁぁ〜気持ちいいな〜っていう温泉でも、夕方だとあれ?なんか気持ちが乗らない。そんな温泉もあります。それは光のせいかもしれません。
壁に書いてある文字の違い。
フォントによって印象が変わることは有名ですが、掲示されている文字やテキスト内容によって、くすっと笑えたり、はて?と思えたりするのも面白くて、場所によってローカルルールがあったりもするので、違ってきます。
上記2つの温泉だけでもこれだけ違ってきます。
こういった空間から、「自分が、いつ、どこに入れば気持ちいいって感じる?」という傾向を探ることが、ロケーションの違いを活用する方法になると考えます。
|活用事例をお伝えする。
私は、たいてい、朝、ぱぁ〜っと気持ちを入れ替えて、よっしゃ〜!今日もがんばろ〜!って思える、エナジェティックな温泉を求めています。そうなると、「朝の光がめっちゃ入ってくるところ」「熱めの温泉でしゃっきりしたい」「あまり不慣れじゃない、むしろ慣れたところがいい」という傾向にあります。すると、どこそこ温泉、と決まってきます。
昼のすこっと空いた時間には、「ひょいっと行ける」「普段と違うところ」。
こういうときは、2800本のうち、行ったことのないところをぐぐってみたりします。
気分が鬱々してて、「気持ち晴々させたい」「俯瞰してものごと見たい」。こういうときには、絶景温泉を選びます。
逆に乗り過ぎちゃってて、「一回立ち止まってぐっと考え事したい」。こういうときには、穴ぐらっぽい温泉や、森の中の静かな温泉を選びます。
夕方、全ての仕事を終えて「とにかく全身弛緩させてリラックスしたい」。こういうときには、なるべくぬるめの温泉を選びます。長湯できて、ほへ〜、ふは〜、ぷへ〜、と全身からチカラを抜く感じ。ごろんと寝転がって空を見上げることのできる寝湯があるとなお良しですよね。
転地効果は、温泉地に住む私でも、毎日でも、可能でしょう。場所を変えればそこが転地。
さぶーんと入る・洗うだけが温泉じゃない。
今の自分をよく知り、どんな温泉をあてがってあげたら心身が喜んでくれるかな〜?という視点で、日本全国にある温泉(大分県は約5,800本、日本全国なら約2万8,000本あるらしいです。つまり大分県には日本の温泉源泉数のおおよそ20%が集中している・・・!)を、チョイスしてみてくださいね。
温泉の知られざる魅力はまだまだ続く・・・!
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