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「喋るわんこ」と発達障がい啓発

おうち時間が増えて、重度のスマホ依存な今日この頃です。
そんな中日課になってしまったのがInstagramチェック。

中でも「飼い主とコミュニケーションをする犬」とBuzzってる
ステラの飼い主のアカウント、@hunger4words をフォローしています。

上記のPeople Magazineでも取り上げられていますが、

「自分の飼い犬(猫)と意思疎通が可能になった!!!!!」

と、自分のペットたちに挑戦させている人がInstagramやTikTokで溢れかえっています。

この社会現象?流行?にのって
せっかく3月がアメリカの発達障がい啓発の月ということで、言語障がいのある人たちが使うAACについて綴ろうかと思います。

Augmentative and Alternative Communication

「動物と意思疎通ができる」ことに目が行きがちなんですが、
このブームのきっかけはステラの飼い主で、言語聴覚士でもある
Christina Hungerさんが、

「AACを使ってコミュニケーションをする人もいるんだよ」

ということを啓発しようと思いステラがAACを使う様子を発信したのが
はじまり。

Augmentative and Alternative Communication (AAC)とは、
言語障がいを持つ方達がコミュニケーションに使うものです。

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ステラの使っているAACはボタンに声が録音ができ、押すと再生するもの。主に身体障がいがあり、腕や指先を動かすことが困難で、言語障がいもある方が使っていることが多い印象を受けます。

そのほかにもとてもローテクなものやからタブレット端末にダウンロードできるAACアプリなどが何種類もあり、個人のニーズに見合ったものを
言語聴覚士さんによる査定で判断します。

自閉症スペクトラム(ASD)のある子どもたちと、ABAセラピストとして
関わった現場では、言語聴覚士の指導のもとAACアプリを使った
コミュニケーションの仕方の指導をしていました。

自閉症スペクトラムの診断がある方はとても雄弁な人もいれば、
AACや手話を使ってコミュニケーションをする人もいます。
同じ診断名があってもその特徴は十人十色、ですね。

「うちの子はいつになったら喋れるようになるの?」

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発語のない発達障がい者の支援をしていると、
特に幼いお子さんを持つご家族から聞かれることがあります。

「なんで○○は喋らないの?」

という、同じクリニックでセラピーを受けている子ども達の間でも
素朴な疑問としてよく耳にしました。

まだ経験が浅い頃の自分だったら、言葉につまってすぐには返せないだろうなと思います。

大学院で発達障がい支援に対しての社会からの偏見だったり、
実際に支援者としての携わった仕事で学んだこと、
そしてたくさんの失敗や反省を繰り返してやっと
自分なりの答えができるようになりました。

発語がない=コミュニケーション・意思疎通が困難である

といった懸念や疑問、前提があるのは、
発達障がいや言語障がいを持つ方たちが
大多数の人とは異なった行動や、表現、見た目をしていることに対して、
「健常者」が抱く「頑健な身体を持つ人間を優先する差別」Ablism)が
社会全体に浸透している現れなのです。

多分人から「言語」をとったら、
ACCを使わない犬と飼い主の意思疎通と同じぐらいなんじゃない?
というと大袈裟かも知れないですし、「犬と一緒にするなんて不適切」
と思われる方もいるかも知れませんが

何が言いたかったかと言うと、

AACや手話を第一言語とする人もいるんですよ

と言う、健常者から見れば「ふつうじゃない」「特殊」であると見られがちなかたの日常が様々な人が暮らす社会の「ふつう」の認識になればいいなと綴ってみました。

「喋る犬」BunnyのAAC啓発メッセージ

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このトピックを書いていたら、
ステラの活躍を見て自分の飼い犬であるバニーにAACを教え、今ではカリフォルニアの認知学研究チームとペット用AACの開発に携わっている方のInstagramアカウントに同じようなメッセージが今日アップされたので、
ぜひそちらも@whataboutbunny

第一人者の@hunger4wordsのステラではなく
Bunnyと共同開発をしているペット用AACマーケットの著しい成長に

AACに対する認知度が上がるかも?!

と期待する一方で本来のメッセージからかけ離れたマーケティングの方向にいってしまっているような・・・と、勝手ながら複雑な気持ちで見守っていたりもしますが、飼い主さん同士の交流もあるようですし、
AAC開発チームのサイトもきちんとChristinaさんのことを紹介していました。

それでもBunnyの飼い主さんも感じるところがあったようですね。

そんな私だってBunnyのアカウントは毎日楽しみにチェックしてますし、
うちの猫たちにAAC教えてみたい!と好奇心がウズウズするときも・・・

ただ、気をつけたいのが
必ずしもAACを本人が使ってコミュニケーションがしたいわけではない

と言うこと。

発語のない自閉症スペクトラムの診断がある青年の知り合いは、
AACの使い方は知っているけど、全く使いません。

でも、彼のジェスチャーや行動、最小限の手話で示した意思を汲んでくれる
家族や友人や近所の人に囲まれた「ふつうの日常」の形もあるのです。

うちの猫は「目は口ほどに物を言う」を地でいくのでAACは使わなそう🤣

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「このベッドはぼくたちが占拠しましたがなにか文句でも?」

長くなりましたが今日はこの辺で。

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