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給与明細の法定控除【6項目+α】

給与明細を見たときにまず支給される金額に目がいきますが、目を通していくと税金などでいろいろ引かれて手元に残っている金額が思っていたより少ないな...といった経験はないでしょうか。

この記事では、法律で給与から控除(天引き)されることが義務付けられている「法定控除」6項目についてそれぞれ解説します。

この記事を読むことで、それぞれの控除項目がどういった理由で給与から差し引かれているのかを理解することができます。

結論としては以下の6つが押さえておくべき法定控除です。

① 健康保険料
② 介護保険料
③ 厚生年金保険料
④ 雇用保険料
⑤ 所得税
⑥ 住民税

補足として最後に+αとして「DC加入者掛金」について少し触れようと思います。

「控除」とは「差し引く」ということ

そもそも「控除」についてですが、ある金額に対して一定の金額を差し引くことを控除といいます。

給与においては支給される給与から差し引かれる「税金」や「保険料」などを控除項目と呼びます。この控除は法律で定められている「法定控除」以外にもあります。

例えば、労働組合費や社員食堂利用料、社宅費などがあります。「控除」は法律では定められてはいないけど、給与から天引きした方が個別で精算するより楽だよね、というイメージです。

①「健康保険料」とはすべての会社員が加入する健康保険

健康保険料は国民健康保険法で定められている国民健康保険に加入するために、会社員は給与から控除されるものです。

国民健康保険の考え方としては病気やケガをした時の医療費をみんなで出し合う相互扶助の考えが大もとにあり、日本国民の会社員は強制加入(加入必須)のものになります。

加入条件は細かく分かれており今回は割愛しますが、基本的には生活保護などを受けている人などの一部を除く日本国民は加入が義務付けられています。

一般企業に勤めている人は、この健康保険料は会社と自分で2分の1ずつ支払うことが原則とされています。基本全員が支払うものなので給与から天引き、控除した方が管理も一括でできるので会社・自分の両者にとって良いといえます。

②「介護保険料」は介護の長期化に備えた負担軽減

介護保険料は将来的に利用する介護サービスの利用料や介護に必要な物品の購入費用に備えて支払う保険料になります。

介護保険も健康保険と同様に、加入が国民の義務となっていますが支払いを開始する年齢が40歳からとなっています。40歳になると健康保険の一部として支払いが発生します。

その後65歳になると健康保険とは切り離され、介護保険料として支払うことになります。

65歳を超えると年金の受給額(18万円)を境に変わり、年金受給額18万円以下/年であれば口座振替やコンビニ支払いといった「普通徴収」で支払い、年金受給額18万円以上/年であれば2か月ごとに年金から天引きする「特別徴収」での支払いとなります。

③「厚生年金保険料」は国が運営する公的な年金

厚生年金保険料はいわゆる「厚生年金」と呼ばれる将来受け取る年金のために支払う保険料になります。

そもそも年金についてですが、年金はよく3層に分かれると言われています。年金の階層は以下のようなイメージです。

1階層、国民年金

20歳~60歳の日本国民が加入できる年金でこれはほぼすべての人が加入できることから基礎年金(土台となるところ)とも呼ばれています。

2階層、厚生年金

会社員や公務員が加入できる年金で常時雇用されていて且つ70歳未満の人が加入できます。自営業者や学生、フリーターの人は加入していません。1階層の国民年金と比べ加入できる人が少し限られますが2階層までが「公的年金」と呼ばれるものになります。

3階層、企業年金・個人型年金

会社で行う確定拠出年金や個人で行うiDeCoが3階層にあたります。1階層、2階層と比較すると自身で選択して加入するもので強制力が強いものではありませんが加入することで税制優遇される仕組みとなっています。

サラリーマン(企業で働く会社員)の人は給与明細に「厚生年金保険料」の記載しか書かれていませんが、実はこの中に1階層の国民年金保険料も含まれており実質1階層の国民年金と2階層の厚生年金をまとめて払っている形となります。

また、厚生年金は支払う保険料が標準報酬月額と呼ばれる4月~6月の3ヶ月の平均所得で決まりますが、支払う金額自体は会社側と折半して支払うことができるのも特徴です。※保険料は「厚生年金保険料額表」で確認ができます。

1階層・2階層ともに将来受け取るための年金として支払っています。年金は65歳から受け取りを開始することができますが、それぞれ受け取る時は呼び方が違うので合わせて覚えておくとよいですね。

1階層、国民年金:受け取る時は「老齢基礎年金」
2階層、厚生年金
:受け取る時は「老齢厚生年金」

年金については条件や状況によっていろいろな要素が変わるため、自分の環境と照らし合わせながら調べたり、毎年郵送される「ねんきん定期便」をチェックしてみてください。

④「雇用保険料」は継続的に労働するための保険

雇用保険料は「失業等給付」や「育児休業給付」など失業時に必要な給付を受けるために支払う保険料になります。雇用保険は任意ではなく、労働者の全てが対象となる強制の保険で雇用保険法でも定められています。

離職した人に対する手当の支給が一般的にイメージされるものですが、これ以外にも終業を促進するための給付やキャリア形成・能力向上を支援する給付なども含まれます。

支払う金額は給与に「雇用保険料率」を掛けて算出されます。こちらも厚生年金と同様に、会社側の負担分がありここ3年は以下のような変遷となっています。(一般事業のみ)

令和3年度
労働者負担3.0/1000、事業者負担6.0/1000
令和4年4月~9月
労働者負担3.0/1000、事業者負担6.5/1000
令和4年10月~令和5年3月
労働者負担5.0/1000、事業者負担8.5/1000
令和5年度
労働者負担6.0/1000、事業者負担9.5/1000

ここ最近この料率が引き上げられていますが、その理由の一つとして言われているのは新型コロナウィルスです。新型コロナウィルスにより失業した人が増えた結果、雇用者から集めていた保険料では足りなくなってしまい、財源確保のために料率を引き上げたのではないかと言われています。

⑤「所得税」は収入に応じて支払う税金

所得税はその名の通り、所得に応じて支払う税金です。1年間のすべての所得から所得控除を差し引いた金額に税率を適用して税額が計算されます。

税率は、累進課税と呼ばれる計算式があり、所得金額に応じて税率と控除額が決まります。1年間の所得で所得税は決まりますが、毎月の給与からは概算の税率で計算がなされます。

12月の年末調整で各種の控除が反映されて初めて正しい所得税が計算される仕組みとなっています。(源泉徴収票に正しい数字が載ることになります)

⑥「住民税」は現住所市町村のサービス維持拡充のために支払う税金

住民税も所得税と同じくその名の通り、今住んでいる市町村へ支払う税金です。こちらは市区町村内に住所がある人はすべて納税義務の対象となります。

住民税は市町村の教育や福祉サービス、行政サービスに使われます。

日本で働く人は納税対象となる人が大半ですがそのうち企業勤めの人は個人で支払わず給与天引きとなります。企業が個人から回収した住民税は企業が個人の代わりに市町村に納税する流れとなります。

支払う金額は収入と住んでいる地域によっても変わるので、まずは自分の住んでいるところはいくらなのかを確認してみるとよいですね。

また住民税は前年の所得に対して課されます。そのため新入社員は入社してしばらくは課税対象とはならず、納税義務は2年目の6月から発生します。

+α 「DC加入者掛金」は確定拠出年金の個人支出分

ここまで6つの法定控除を見てきましたが最後にDC加入者掛金についても少し触れておきます。

DC加入者掛金は、会社が確定拠出年金制度を取り入れている場合、追加で拠出できる金額のことを指します。

確定拠出年金やDC加入者掛金(マッチング拠出)については以下の記事で詳しく書きましたので合わせて参照ください。

初心者向け確定拠出年金の【メリット3選】 >



合計7つの法定控除をざっくり解説しましたが「法定」と名前がつくようにどれも法で整備され、細かい条件がいくつもあります。

ここでは書ききれない点、特に「自分の場合は」という点についてはこの記事をきっかけに調べてみるとよいと思います。

控除や税金は正しく節税することができるものが多くあります。
自分の給与明細を見て何にどれだけの支出がなされているのか一度棚卸をしてみてはいかがでしょうか。

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