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きみの匂いがするパジャマだけが残った


元彼の家に置いてあったパジャマが私の元に帰ってきた。受け取ったパジャマを自分の部屋へと持ってきた瞬間に私の部屋に元彼の匂いが漂う。なつかしい。2ヶ月も付き合ってないのに、胸がチクっとする。付き合って初めて彼の家に入ったときの緊張とか、同じ布団に入った時のドキドキとかを思い出した。たばこの匂いが染みついて時間が経った時の匂い。ぎゅっと包まれたときの匂い。記憶の中にはあるのに、たしかに私達の人生は交わっていたのになんだか夢だったような気もする。交際期間が短すぎて。むしろ、夢だったらよかったのにと思う。夢よ覚めろ覚めろ覚めろと心の中で叫んでも、実際に口に出して叫んでみても夢から覚めることはなかったし、やっぱり現実だった。

私が作曲家だったら歌が作れそう。題名は「パジャマ」

きみの匂いがするパジャマ〜

きみの匂いがするパジャマ〜

あたかも家にあったのを持ってきたようなフリをしたけど

本当はきみの家に置いていきたくて そのためにわざわざ買ったパジャマ〜

明るい色の方が自分が可愛く見えるかな

いや、パジャマといえば紺とか暗い色がいいかな

わざわざ試着までして買ったパジャマ〜

きみは隣にいないのに 匂いだけきみの綺麗に畳まれたパジャマが残った〜♪

なーーーーんてね。

今の私は、ひどく後悔をしている。こんなに短い間しか付き合えないなら、もっと素直になっておけばよかった。好きって思った時に好きと言えばよかった。好きって言われた時にもっと嬉しそうにすればよかった。もっと歩み寄ればよかった。もし2ヶ月前に戻れるなら…告白された時に断ればよかった。元カノの物がたくさん残ってて嫌だって泣いて喚いてみればよかった。元カノの写真消してよって怒ってみたらよかった。たばこ吸う人嫌いだから辞めとよと言えばよかった。大人ぶって、そのままでいいよなんて言わなければよかった。どうせ別れるんだし。後悔が暴走している。

自分の人生が後悔ばかりのような気がして嫌なんだ。嫌で嫌でたまらない。どうせきっとこの先も後悔を重ねていくんだ。そんな自分が嫌だ。後悔したくない。まず後悔をしないなんてことが生きている限り無理なんだと思う。よくある主人公が最後に亡くなってしまうドラマでも最後に後悔しているじゃん。え?この世って後悔の塊なんじゃない?地球って7割が水で出来ているって聞いた事があるけど、本当は水じゃなくて後悔でしょ。じゃあ仕方がないか。

後悔に後悔を重ねていつか報われるのかな。幸せになるためには後悔を重ねるしかないのかな。後悔した分だけ強くなれたりするのかな。真実はわからないけど、そう思いたいから、地球の7割は後悔でできていることにする。

また、そこに置いてあるパジャマから元カレの匂いがしてきた。鼻がつーんとする。この匂いを忘れたくないけど忘れたい。でも時間が経てば私の家の匂いに侵食されていって、ただのパジャマになる。そんな風にこの気持ちも消えていくんだろうな。こんなに後悔した気持ちも風化して忘れて、また後悔をするんだろうな。嫌になっちゃうけど、これが自分だ。

鼻がつーんとするのは涙が出る前兆なのか、きみの匂いがするパジャマのせいなのか分からない。

#失恋 #匂い #エッセイ #ひとりごと

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