メタバースと観光

こんばんは。相変わらずその日を生き延びるので精一杯の私です。

ANAホールディングスがメタバースでの観光事業に取り組むという発表がありました。

レポートでこの事例を取り上げたので、再編してnoteに投稿しようと思います。人は忘れるので。

まず、学問としてのマーケティングにおけるANAの事業の定義と、コロナ禍における同社のプロセスとしての競争、および事業の定義の変遷を検討します。

マーケティングにおいて企業の定義は「誰に」「何を」「どのように」提供するかの認識によって決まります。(石井 他, 2020)言い換えるとそれは、「顧客」「機能」「技術」です。

ANAの事業の定義を考えると、それは「旅行客」に「移動」を「空輸によって」提供する事業であると考えることができそうです。

さて、昨今のコロナ禍はこの多くを不可能にしてしまいました。産業における市場がほとんど消滅してしまったのです。

市場はあるけどシェアが低迷している、そんな状況ならマーケティング戦略の見直しで生存戦略を図ることもできそうですが、現状シェアどころか買い手がいないとなってしまうとそうもいきません。

私はANAの中にいる人ではないので、これは推測に過ぎないのですが、窮地に立たされた航空産業にあって、ANAは抜本的に自社の事業の定義を大きく見直すとともに、新たに参入できる産業を模索していたのかもしれません。

さて、ここでメタバースについて検討します。メタバースが具体的にどう定義されるのかは私もあまり詳しくありませんが、「商業利用できる場としてインフラレベルで普及した仮想空間」とでもしておきます。概念が新しく、かつぼやっとしているので、どう活用するかについてはどの産業においてもまだ手探り状態でしょう。

ANAの経営戦略の検討に戻ります。「移動を」「空輸で」かなえるという事業の定義になぞらえれば、仮想空間なんてものは全くお門違いな分野でしょう。仮想空間にあって移動が問題になることは考えられません。

しかし、ANAがもともと価値を提供していた顧客についてはどうでしょうか。「旅行客に」便益を提供する、という同社の対象顧客を考えた時、ニーズの解像度を上げればそれは「観光を楽しみ、旅行に足を運ぶ人たちに」と捉えることができそうです。(実際には旅行の定義には遊興を含まないビジネストリップも含まれますが、コロナ禍で発展したリモートワークのための技術の普及を考えると、そこにこだわるよりかは「旅をしたい」というオフラインでの欲求が強い遊興旅行客に目を向けたほうが良さそうです。)

では、「観光を楽しみ、旅行に足を運ぶ人たち」とメタバースの可能性について検討してみます。彼らにとってメタバースは擬似観光を体験しうる場であり、いわば実際の旅行につながる流通と購買の場になりうるわけです。

現状まだ可能性でしかない、「観光の流通の場としてのメタバース」には、まだ参入した企業はありません。そこに名乗りを上げたのがANAと見ることができるわけです。もしメタバース×観光という未開の産業において主導権を握ることができれば、いずれ同社がもともと提供している「空輸」での「移動」というニーズを持つ「観光客」の獲得につながる期待が持てます。

まだ産業として確立していないメタバース観光の今後の動向がどうなっていくか、気になるところです。

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