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あなたは天気を変えられない

外に出る。

雨が降っていたとしよう。

例えばそれに対して悲嘆したり激昂したりするだろうか。

恐らく良識ある人間であればそんな無駄なエネルギーの消費はしないだろう。

人間ひとりが憤ったところで天気はどうにもならないからである。

世の中には自分の力でどうにかできる問題とどうにもできない条件がある。

現実として雨が降っていれば、傘を用意するか雨が止むのを待つか予定を変えるかして、受け入れた対処をするものである。

例えばやる気が起きないとか失恋でどうしようもなく気持ちが沈んでいるだとか、自分の心持ちにも移ろいゆく天気と同様に浮き沈みがあって当然だろう。

それを無理に奮い立たせようとするのは、たとえ有効に思えてもそれは恐らくその場しのぎである。

ああ今自分の精神状態は上り調子ではないな、とだけ認識できていれば、例えば普段聞かないような失恋ソングに痛く共感してみたりのんべんだらりと何もしない贅沢を謳歌したり、そういった「その時しかできないこと」をエンジョイしてしまおうと開き直ってしまうのも一つの手だと思う。

露に葉を垂れる紫陽花や濡れたアスファルトのどこか落ち着く匂いは雨の日にしかお目にかかれない。

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