見出し画像

東日本大震災を経験したぼくらが、今伝えたいモノコトバ #tohokuru

災いは、忘れた頃にやってくる」とは言うものの、東日本大震災から10年を待たずして、未知のウイルスが東北にもやってきました。私たち東北スタンダードマーケットが立ち上げたオンラインプロジェクト「#tohokuru / トホクル」の商品ページには、東日本大震災を乗り越えてものづくりを続けてきた東北の作り手78人の、強い想いがメッセージとして掲載されています。

そこには、この未知のウイルスを乗り越えるための、数多くのヒントが眠っているように感じられました。この記事ではその中から抜粋して、いくつかのコトバをお届けします。

目次から気になるタイトルに飛んでご覧くださいませ。また、気に入ったモノ・コトバに #tohokuru のハッシュタグをつけてシェアしていただくことで、作り手さんを応援できます。東北から全国に、前向きな気持ちをお届けできましたら幸いです。

「相手を想い、手をかけて、何かをつくるやさしさ」

東日本大震災をきっかけに、大槌復興刺し子プロジェクトを立ち上げ、もうすぐ10年を迎えようとした矢先、東北は再び難局に直面することになりました。今回は、東北だけでなく、そして、日本、世界が同様の状況にあります。
新しいウィルスの感染拡大は、ほとんどの方にとって初めての経験であり、不安な日々をお過ごしのことと思います。一日も早く事態が収束してくれることを願って、皆さんと心を一つに乗り越えていきたいと思っています。モノや情報が溢れ、スピードや効率が求められる時代だからこそ、私たちは手間暇をかけ、心を込めて、何かをつくる「手しごと」の価値を大切にしたいと考えながら、刺し子の製品づくりを行ってきました。
相手を想い、手をかけて、何かをつくるという「手しごと」は、私たちの生活に豊かさや、やさしさ、ゆとりをもたらしてくれると信じています。こうした局面にあるからこそ、東北の豊かな自然や文化が生み出す品々が皆さまの心にゆとりや温かさを届けてくれると思います。
微力ではありますが、地域を盛り上げる一助になればとこんなに嬉しいことはありません。力を合わせて乗り越え、人・環境にすべての生命にとって優しい未来を一緒につくっていきましょう。 - 岩手・大槌復興刺し子プロジェクト

2011年に立ち上がった大槌復興刺し子プロジェクトさんからは「HOME」と刺繍されたトートバッグをご出品いただきました。HOME=ホームタウン。大槌町はご存知の通り、東日本大震災により壊滅的な被害を受けられた町です。今は「STAY HOME」な時ですが、実は家にいられることこそ、幸せなことなんですね。このバッグを手にして、いつか事態が収束したらお出かけに出かけたいものです。「あの時、大変だったなぁ」と言える日が早く来ますように。

「東北で作り出された工芸品や食は自由に旅をすることができる」

人の移動が制限される中、お客様と直接お会いすることは出来なくても、このプロジェクトに参加する事で、東北で作り出された工芸品や食は自由に旅をすることができます。私たちの作った物がお手元に届く事で、少しでも気持ちが晴れやかになれば、作り手としてこれ以上嬉しいことはありません。 - 青森・さきおりCHICKA

さきおりCHICKAさんは、青森市で南部裂織を制作する作り手さんです。「裂織」とは、古い着物を裂いて、もう一度織って布にするアップサイクルの技術。その昔、生地が貴重だった時代には一般の家庭でお母さんがしていた「家仕事」です。裂織に宿るあたたかさをお届けしたいとの想いを寄せていただきました。

「田舎は、これからポジティブな意味でのトップランナーとなる可能性を大いに秘めている」

東北にとっては東日本大震災から10年経たずに、再び厳しい局面を迎えることとなりました。今回の新型コロナウイルスが直接的・間接的に引き起こしている様々な事態は、これから数百年の未来に向かっての大きな変革期だと感じています。大量にモノが作られ、遠く地球の裏側まで大量に運ばれ、環境に負荷をかけ続けながら、大量に消費される世の中に投げられた強力なメッセージではないかと。
雪深く長い冬を乗り越え、やっと迎える春。生命の息吹そのものの山の恵みをいただくの喜び。自然を畏れ敬いながら田畑に汗を流し、神に祈りを捧げる夏。そうして収穫の秋を迎えたときには、また冬がすぐそこまで来ている。
自然と寄り添いながら続けてきた東北の営み。過疎、人口減少、少子高齢化といったネガティブな意味でのトップランナーである東北、全国各地の地方、わかりやすく言えば田舎は、今回のことを経て、これからポジティブな意味でのトップランナーとなる可能性を大いに秘めていると思っています。この自然から与えられた試練を力を合わせて乗り越え、希望に満ちた未来に向かって歩んでいきましょう。わたしたちの生み出したものが、この試練の時期の毎日の暮らしに、一滴の潤いとなれることを願っています。 - 秋田・casane tsumugu

秋田県横手市を拠点に、県内の伝統産業を今の暮らしに馴染むようリデザインされている「casane tsumugu」さん。未知のウイルスも「自然から与えられた」と捉え、どっしりと地に足をつき、一歩一歩進んでいくたくましさ。そんな強さが秋田にはあります。

「100年後の故郷のために」

いま、地方は「人が減っている」、「活気がない」と言われる時代ですが、実はしっかりと目を向ければ素晴らしい地域資源が眠っています。私たちは、生まれ故郷の南部町に寄り添い、地域のヒトとモノを結び付け、1年後の自分、10年後の家族、100年後の故郷のために、地元に密着した商品づくりに取り組んでいきたいと考えております。 - 青森・合同会社南部どき

青森県南部町は果樹栽培が盛んな地域。フルーツそのものではなく「果樹チップ」によるスモークナッツやスモークオイル商品を製造する「南部どき」さん。人が集まる場所が良いという価値観から、逆に、人が分散した方がいい社会にこれからシフトしていくのかもしれません。生まれ故郷の「地域資源」に目を当てて、発想の逆転で美味しいものを提供していく。未来のヒントが隠されている取り組みです。

「良い物を大事に使う。現代にこそ求められる日用品」

漆は縄文の昔から日本の人々の中にありました。山々に自生する豊富な「樹木」からなる森、そこに自生する漆の木から採れる「漆」、そして足元に眠る「土」。これらを、これまでの歴史の中で多くの職人が、創意工夫を重ね、今日の漆器の技の礎を築いて来ました。漆器は、その土地から生まれ、その土地で愛用されるものでした。  
寿次郎では、こうした本来の漆器のあり方を次世代へと繋いでいくため、その本質は変える事なく、変わりゆく人々の暮らしに寄り添い続ける事を目指す「不易流行」の志のもと、日々、技の研鑽を重ね、自家栽培の漆や、一つ一つの工程を大事にした漆器づくりを行っています。木と漆の普遍的な素材で手づくりされているからこそ、修理を重ねて永く使えることも漆器の魅力です。良い物を大事に使う。現代にこそ求められる日用品のあり方だと寿次郎は考えます。 - 秋田・川連塗 寿次郎

秋田県湯沢市の伝統工芸「川連漆器」。漆は縄文時代から人と共にあった素材なんですね。自然の木材を挽き、漆の樹から出た樹液で固める。漆器は、おうちの中で生きる木そのものです。ウイルスや人との関係に気疲れしてしまいがちですが、自然と向き合っている職人さんは、どこかどっしりと構え、長いスパンでものごとを見ていらっしゃるように感じます。

「何気ない日常において大切にされるべき豊かさ」

秋田で個人のデザイン事務所を営む「澁谷デザイン事務所」の澁谷和之と申します。普段は秋田(東北)を中心に、秋田(東北)らしいデザインとは何なのかを模索しながら、農業をはじめ、日々さまざまにデザイン活動をしています。
何気ない日常において大切にされるべき豊かさや価値観が180度ひっくり返ろうとしている今、いよいよ首都圏集中型のデザインから、地域に根ざした地方のデザインへの意識転換の時と信じて、「秋田デ、〜秋田で、デザインするということ〜」の一冊を、秋田からお届けしたいと思います。 - 秋田・澁谷デザイン事務所

澁谷デザイン事務所さんは、元々は東京で広告マンして働かれていましたが、10年ほど前に生まれ故郷の秋田に戻られました。実家の農業をお手伝いしながら、土の匂いのするような、地元に根付いたデザイン活動をされています。東北スタンダードマーケットの実店舗でも「東北デ、」というイベントを開催させていただきました。澁谷さんが秋田の作り手と、どのようにしてものづくりをしてきたかが書かれている本著は、ぜひ皆さんに読んでいただきたいです(お子様でもわかるくらい、簡単な言葉で綴られています)。

「孫の代まで使える一枚を」

Home(家庭で)Spun(紡ぐ)。イギリスから、岩手に伝わった手紡ぎ手織りのホームスパン。岩手には、今も、ホームスパンの会社・工房が残っています。
ホームスパンは、たくさん草や土のついた羊毛を洗うことから始まります。洗った羊毛の草や土を取り除き、ふわふわにほぐし、糸を紡ぐ。ここまでに相当の時間を要します。その後整経という作業を経て、織り機に糸をかけて、織り始めます。織り上がると房を撚り、織り間違えや、糸の結び目を解き、縮絨をし、仕上げます。
ひとつひとつの作業を全て手作業で行なっているため、商品の金額は、上がってしまいますが、子ども、孫の代まで大切につかわれている方もたくさんいらっしゃいます。一家に一枚は、ホームスパンを!日々のくらしに、ホームスパンのやさしさをお届けします。 - 岩手・mää-mää homespun

大量の洋服を安価に買える今だからこそ見直したいホームスパン。羊の毛を洗って染めるところから、糸にして織り上げるまで、途方もない作業量です。東北は冬の時期が長く、元から「ステイホーム」の時間が長い地域です。だからこそ生まれ、伝承されてきた手仕事があります。今回、日本全国的に自粛の期間が生まれた中で「本当に大切にしたいものと長く付き合おう」という気持ちになった方も多いはず。そんな時、東北の真面目な手仕事を思い出していただけたら幸いです。

「やさしく なかよく 生きるために。」

すみやのくらしは、東北、宮城県の七ヶ宿という山間の町で、炭焼きと炭のパウダーの入ったお菓子、パンの製造販売をメインに、自然の流れにそった世の中を願って暮らしている、佐藤光夫と佐藤円の家族の屋号です。すみやのくらしのメインコンセプトは「やさしく なかよく 生きるために。やさしく なかよく 暮らすために。」です。
ここで山暮らしをするのも、お菓子や炭を作って買っていただくのも、環境に負荷の少ない暮らしを目指すのも、命に学ぶのも、自給的な暮らしを願うのも、友愛経済を目指すのも、山暮らしをみなさんとシェアするのも、学びを深めるのも、すべてはやさしく なかよく 生きるために。やさしく なかよく 暮らすために。
2011年に東日本大震災による原発事故があり、見えない放射性物質と闘ううちに、からだのことを考えて食べ始めた炭パウダー入りのデトックスクッキー。山にチェンソーを担いでいって木を切り、自ら焼いた炭を粉屋さんにパウダーにしていただいたものを使って、この地の湧き水などで練りこんでいます。木も水も炭も、みんな森からの贈り物、山から湧き出た水が流れ染み渡り、やがて川となって、大地を潤し、皆が笑顔になっていく、そんなこともイメージしながらのお菓子づくりです。
炭焼きはもとより、永続可能な暮らし、より安全で安心なものによる、お菓子、食べ物、日々のご飯のこと、日用品、暮らしかたなどなど、心開いて、発信、紹介、交換、交流、そして一緒に学びを深めていきたいと願っています。 完璧は目指しません。あくまでやさしく なかよく 生きるために。やさしく なかよく 暮らすために。もっと土くさく、もっといのちに近い方へ。 - 宮城・すみやのくらし

私たちも実際に訪ねさせていただいたことのある「すみやのくらし」さんは、山に囲まれ、近くに家が無いポツンと一軒家で暮らしているご夫婦です。炭を焼いて暖をとって、自然の恵みで生きる。どんな時代も生き抜く持続可能な暮らしを、今改めて見直したいと思わされます。

「故郷に戻れなくとも、300有余年の伝統の火を消すことなく。」

大堀相馬焼陶吉郎窯の近藤です。初代近藤平吉が1760年に創業し、私で九代の歴史がある窯元です。大震災による原発事故の為、避難を余儀なくされ伝統の地を離れましたが、避難したいわき市で新たな工房を立ち上げ再開継続いたしております。
未だ故郷は帰還困難区域のため戻ることはできませんが、300有余年の伝統の火を消すことなく培った技術の継承と新たな歴史の構築に向け父子共々力を合わせ精進致しております。 - 福島・大堀相馬焼 陶吉郎窯

最後に、このブログのトップ写真にも使わせていただいた「大堀相馬焼 陶吉郎窯」さんからのメッセージをご紹介させていただきます。300年の伝統が続いてきた場に未だ帰れずとも、たくましく制作を続けられている陶吉郎窯さんの作品を見ていると勇気づけられます。「伝統」とは、歴史ではなく想いなのかもしれません。その想いをお客様に届けるお手伝いができることに感謝いたします。



東北からのメッセージが、皆さまに届きますように。

#tohokuru 期間中はInstagramFacebookTwitterでも毎日私たちのコメントを添えて商品をご紹介していきますので、ぜひ覗いてみてくださいね。また良いなと思った商品には #tohokuru のハッシュタグをつけてSNSでシェアしていただけると、きっと作り手さんにも想いが届きます。#tohokuru をどうぞよろしくお願いします。

[ ちょっと長めの #tohokuru 立ち上げの想いはこちら ]
●未来のスタンダードをどうつくる? - ぼくらが東北スタンダードを名乗る理由
https://note.com/tohoku_standard/n/nf9484b8f9b5f

[ 東北スタンダードマーケット ]
Instagram:@tohoku_standard_market
https://www.instagram.com/tohoku_standard_market/
Facebook:@tohoku.standard.market
https://www.facebook.com/tohoku.standard.market
Twitter:@TOHOKU_MARKET
https://twitter.com/TOHOKU_MARKET
あとがき:この記事は株式会社金入の岩井が執筆させていただきました。もしお問い合わせがございましたら、こちらまでお願いいたします。
メール:wholesale@kaneiri.co.jp
お電話:022-220-0179 (株式会社金入 仙台事務所)
*リモートワーク中につき、メールでのご連絡の方がスムーズです

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?