上司に覚悟がないのならマイナス査定はしない方がいい【人事評価の話し】
マイナス査定をするなら、上司の覚悟が問われる、そんなことを最近考えていたので、備忘録として残します。
最近、20代で年収2000万円も可能に、という記事が出ていました。
年功序列の廃止、中高年社員の一律減給廃止は、業界を超えて、従業員の処遇の変化のトレンドとなっています。
少子高齢化による採用難に直面する中、優秀な人材を確保するために、各企業が試行錯誤を繰り返しています。
優秀な人材に高い給料を払うためには、給与原資が増えない前提の場合、一定の割合の従業員の給料を減らすことが必要となります。
人事査定において降格・減給を制度として組み込む場合、取り扱い注意です。
✅分配の在り方が変化している
まず評価と査定が異なるという前提で話しを進めていきます。
上記記事で個人的意見を記載しておりますが、
今後は、限られた給与原資を
労働市場からの調達コストが高い人に対して優先的に分配し、
残りを調達コストが低い人で分ける形を取らなければ、
組織の生産性が維持できなくなります。
労働者の年齢分布の変化、
中途採用市場の出現と常態化、
AIを始めとした技術的な変化により、
労働市場からの調達コストが変わってきています。
調達コストが高い人は、若くて、かつ、変化に対応できる人材
調達コストが低い人は、老齢で、かつ、変化に対応できない人材
です。
よって、老齢で、かつ、変化に対応できない人材については、給与を減らさざるをを得ない状態です。
✅年配社員の理屈ではない感情
『自分たちは、若い頃に薄給で働いた分、歳をとった今、高い給料を貰うことは、当然の権利だ。』
このように考えている年配社員の方は多く、
時代の変化に、年配社員の意識はついていくことが出来ていません。
✅マイナス査定=受け入れがたいもの
変化に意識が追いついていない年配社員に限らず、
会社がどんなに説明を行ったとしても、
喜んでマイナス査定を受け入れることができる社員はいません。
いかなる理由であっても、自分の給料の金額が下がることについて、ポジティブに受け止められる方、成長の機会だと素直に捉える方はいらっしゃらないのが現実です。
私はこれまで、50社以上の人事評価制度構築に携わってきましたが、
額面で5000円の昇給は、従業員にそれほどポジティブな影響を与えない、(上がって当然だと考える方がほとんど)
一方で
額面で500円の降給は、従業員の方に、かなり大きなネガティブな印象を与えます。(なぜ、こんなに頑張っているのに、今までよりも給料が下がる!)
特に、これまで減給が制度上なかった企業にとって、
減給を制度として導入し、
実際に減給を行うことは、
従業員からすると「人格否定された」ぐらいのインパクトがあります。
そのため、評価制度について、変更段階については、説明も必要ですし、減給制度を導入する際は、事前のシミュレーションや、テスト運用を繰り返し、1年ぐらいかけて導入することが望まれます。
✅業績ダウントレンドの際は慎重に
人事評価制度と等級制度、報酬制度を連動して変更する場合、
人事評価制度をどんなに精緻に作ったとしても、
報酬制度で、給料が下がると、従業員からの不満は必ず出ます。
逆に言えば、
大雑把な人事評価制度であったとしても、
従業員が何となく公平であると認識し、
なおかつ自分の給料が上がれば、
変更時点での
従業員から制度に対する不満は出ません。
そのため、業績が下降し、給与原資が減る中で、
過半数の従業員の給料が減る形で、
評価制度と報酬制度を変更することは、
どんなに精緻な制度を作り、説明を尽くしたとしても、
従業員から不満が出ないことはあり得ないです。
そのため、特に報酬制度を変更する際には、
給与原資が従前よりも増やせるタイミング
(ベースアップとセットで実施する等)
で変更することが望ましいですし、
逆に、給与原資が従前よりも減るタイミングで変更する場合、
従業員の離職を想定し、
それでもこのタイミングで制度変更に踏み切るか否か
を検討することが求められます。
よって、マイナス査定を報酬制度に組み込む際の注意点は、以下の2つとなります。
✅注意点1:離職の可能性を考慮すること
これまで減給の仕組みがない中で、
報酬制度改定により減給の仕組みが導入され、
減給が発生した場合、
減給となった従業員は辞める可能性があります。
特に、従業員の側から見て、
減給の理由が、
自身の働きではなく、
「市場が悪い」
「会社の戦略が悪い」
「自部門以外の部署が足を引っ張っている」
といった他責に由来すると認識している場合、
自分の給与がこれから更に下がり続けるという発想となり、
離職に繋がる可能性が高まります。
これを回避するためには、
今後の勝ち筋をマネジメント側が明確に示すことが不可欠です。
それが『経営側の自責』と繋がります。
✅注意点2:経営側の自責
このような発言をされる経営者の方はいないと思いますが、
万が一いたとして、
これを聞いた従業員はこう思うはずです。
業績が低迷している原因を
経営と現場で擦り付け合っていても何の解決にもなりません。
大切なことは、これからどうするか?
という視点に目を向けることです。
そのためにも、まずは、経営側が自責で捉え、
これを明確に伝えることで、
会社のメンバーが同じ方向を向けるようにしなければなりません。
✅まとめ
環境の変化によって、
組織内の報酬における分配の在り方が変わります。
これが
プラスに働く人、
マイナスに働く人、
どちらもいるでしょう。
プラスに働く人とマイナスに働く人との間で、
分断が起こってしまったら、
組織は上手く進みません。
変化は必要です。
変化に上手く対応するために、
組織は制度を変更します。
この制度変更の際、
経営側は、
これまでの振り返りと、
あらたな方向性を指し示し、
その先に、どのような未来を描いているか、
ビジョンを共有することが求められます。
人事のトレンドに影響されて、
人事制度・報酬制度のみを変えることは、
組織の崩壊を招くことに繋がります。
未来のビジョンを共有すること。
物事が上手くいっているときは、難しくないことですが、
物事が上手くいっていない時、ビジョンが共有できているか、
これは、組織が永続する上で、重要なポイントです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?