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学際研究の立ち上げについて

電子光理学研究センターの時安敦史です。今回は学際研究の立ち上げについて私見を述べたいと思います。

近年、社会が抱える問題が複雑化しており、単一の専門分野だけでは解決が難しいという現状が発生しております。このような中、複数の専門分野の研究者が集まって、分野を横断した研究を行い社会問題に取り組むことが推奨されております。COVID-19による社会不安などはまさに顕在化した例です。医療研究者や感染症の研究者だけでなく、政治経済の研究者や心理学の研究者、データサイエンティスト等、様々な専門分野の知見を総動員しなければ解決を視ることは難しいです。

文科省も学術変革領域研究をサポートし、異なった研究領域の融合による新たな学術分野創生に力を入れております。(https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/39_transformative/index.html)

しかしながら、実際問題として、異なった分野の研究者が集まって新しい研究を立ち上げるするというのは非常に敷居が高いです。(この点に関しては学際科学フロンティア研究所(FRIS)の當真先生がわかりやすい記事にまとめられております。”異分野交流の楽しさ、難しさの話。”:https://note.com/tohoku_ensemble/n/nfe36c22dd19f

私の考えでは、学際研究は生み出そうと思って生み出せるものではなく、異なった専門分野の研究者が集まる環境を用意すれば勝手に生まれるものだと思っております。私自身、若輩者ではありますが、何回か学際的な研究に携わる機会がありました。今回は、どのように学際研究が開始されたかその経緯を紹介したいと思います。

1.自分の持っている技術を他分野に応用する。

私自身の専門分野は「高エネルギー光ビームを用いた原子核反応の研究」です。これ自身は余りに専門的すぎて他分野に応用するということは難しいです。ただこの研究を行うために、世界でもトップレベルの放射線測定の技術を用いております。詳細はまだ述べられないのですが、私のこの技術に注目してくださった方がおり、一緒に研究をすることになりました。

2.他分野の同期との雑談から生まれる。

大学時代の同期で全く異なった分野の研究分野に進んだ友人と久しぶりに話す機会がありました。自分が今何をやっているか等についてざっくばらんに話していると、それは相手のの分野とも関係しているということが分かりそこから共同研究が始まりました。その友人が非常に顔が広い方だったので色んな方を紹介してもらいさらに研究の輪が広がることになりました。

3.興味があるから参加させてもらう。

私の専門分野ではないのですが、一般向けの解説書などを読んである研究分野に興味を持ちました。自分が今こういうことに興味があると色んな人に話していたのですが、たまたま昔の先輩がそれを聞きつけて、新しいことを始めるから参加してみないか?と声をかけていただきました。自分の専門分野ではないため知識もほぼないのですが、学生時代に戻った気分で一からその分野のことを勉強しております。ただ、自分の知識というのは全く無駄ではなくて、新しいことを勉強するにも役立っているなと感じております。知識の収集の効率は明らかに学生時代よりも上がっていると思います。

以上、私が学際的な研究を開始した経緯について3個ほど述べさせていただきました。これらに共通して言えるのは、私自身が学際研究を始めたいと強く願って始めたわけでなく、偶然が重なって始まったということです。そこでは他人の紹介というのが大きな役割を果たしております。やはり人の縁というのは大切にしなければいけないのだなと思っております。
また、常日頃から自分がやっていること、興味を持っていることについて色んな媒体で発信しておくことも重要です。自分が所属するコミニュティだけでなく、他分野の研究者の方にも目に付くところでの発信していれば、誰かが興味を持ってくれることがあるかもしれません。逆に自分自身もそういう所に常にアンテナを張っておくと、自身の抱えている問題点を一気に解決してくれる仲間を見つけ出すことが出来るかもしれません。

東北大学の若手アンサンブルプロジェクトは上記の環境を整えてくれる絶好の場であると思います。何か学際研究を始めようと強い志を持って参加していただくのは素晴らしいことなのですが、それ以前に他の研究がどんな感じなのか少し見てみようかな?という軽い感じで参加することも意外と学際研究につながるかもしれません。

(時安敦史・電子光理学研究センター(ELPH))


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