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異分野交流の楽しさ、難しさの話。

学際科学フロンティア研究所(FRIS)の當真です。FRISには人文社会学系、理学系、工学系、生命科学系、情報学系など様々な分野の若手研究者が集っています。その中で私は理学系の宇宙物理学の理論研究をしています。地球で確かめられているいろいろな物理学は、どこまで宇宙に適用できるのか?というのが私の一番の関心事です。そのためいろいろな物理学(力学、電磁気学、熱力学、量子力学、相対性理論、素粒子論など)に興味があります。また学生の頃から人文学にも興味を持っていますし、FRISに所属してからは生物物理の共同研究も始めています。FRISの若手研究者の同僚との異分野交流はいつも新鮮であり、時に思ってもみなかった共同研究の芽を見出すことがあります。私も実際に、それまで全く考えてこなかった宇宙の暗黒物質の正体について、新たな研究のアイデアを見出し、大きな共同研究に発展したものもあります(academist Journalのコラム:https://academist-cf.com/journal/?p=11534)。若手アンサンブルプロジェクト(以下アンサンブルと呼びます)は、必ずしも異分野融合研究を求めてはいませんが、学内の異分野交流を促進する活動ということで、私は積極的に参加しています。

こういった新たな交流活動の試みは最初は物珍しさで盛況になりますが、それを維持していくのは知恵と労力が必要になると思います。異分野交流は、誰であってもやってみるまでは何が得られるか(あるいは何を与えることができるか)分からない(そして全く何も起こらない場合もある)だけに、その魅力を伝えて参加者を増やすのは容易ではありません。私はFRISに着任してから、FRIS内において異分野研究者の同僚を巻き込んで様々なセミナーや交流の場を立ち上げてきました。やはり各研究者、各分野の特有の考え方や振る舞い方がありますし、さらには毎年メンバーの異動がありますので、参加者の数を維持するのは非常に難しいです。しかし多くの会は6-7年続いています。続けるために、時には全分野の異分野交流に前向きなシニアの先生の意見を後ろ盾にしたり、責任者を別のメンバーに任せて会の趣旨や形式を少しずつ変えたりしてきました。とにかく続けようと思うのは、やはり初参加した方から「参加してよかった」というコメントをもらうことがあるからです。さらに、「新しい研究の糸口を見つけた」とか「視野が広がってキャリアパスの考え方が広がった」というような意見をもらうと、やはり維持する価値を信じる気になります。このように参加者が何か発見する頻度は、やはり参加者が多い方が上がるはずです。アンサンブルプロジェクトの参加者が今よりさらに増え、発見の頻度が増え、その口コミで参加者がまた増える、といった正のサイクルが回ればいいなと思っています。

コロナ禍によって様々な交流活動が今まで通りにできなくなっています。しかし幸いにもオンラインコミュニケーションツールが発達し、昨年の冬あたりには多くの人がオンラインでの交流に慣れてきた印象を持っています。FRISではGoogleドライブ、Slack、Zoomなどを駆使して異分野交流をなんとか維持しようと努めています。そして若手アンサンブルプロジェクトのワークショップでは、ワーキンググループ委員長の甲斐さんが創作したソフト「バーチャルポスターセッション」を使ったポスター交流会を行っています。ロールプレイングゲームをやっているような感覚でPCの画面上のポスター会場を歩き回り、他の参加者が側にいることが感じられるユニークなソフトとなっています。これを一度使ってみるだけでも参加する価値はあるのではないかと思うほどです。前回のアンサンブルワークショップは、学際高等研究教育院の大学院生とFRIS教員のワークショップも合同開催し、このバーチャルポスターセッションソフトを使った交流ができました。

引き続き、アンサンブルプロジェクトが活力を持って維持されるよう、ワーキンググループ内で色々と知恵を出し合っていきたいと思います。

(當真賢二・学際科学フロンティア研究所(FRIS))

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