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江戸のシイラカンス

やァシイラカンスといふものが
飾られていると聞いたのだが
(和服を着崩している、ちらりと見える脇差)
古代も古代の大神秘、アフリカなる地の珍物とな と語る彼の背には、幾人もの影

現代を生くる化石なのだよと父君からは教えられたものだ
鮭 商人はこっそりと見せたのだ それは見紛う事なきただの鮭であるが
詮方無いこと それは彼の真実である

アフリカから来たる白い歯の男は言う      コントラストの美しい何某よ
シイラカンスなるものがあるならば
君にぴったりじゃないかね
無知は罪と言うからね(小声だ…)

耳を貸すな しがない時代遅れの産物だから なぁに 酒でも飲んでいれば忘れるさ
無知と忘却がこの世の美徳さね

彼は剣豪である 剣の理を誰よりも知るのであるが その理の深さが故に万事に通ずるという 幻想を抱いている
さが故に腕を腐らすうつけ者である
無知と忘却が
この世の美徳であるのに

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