すっかすか~

パンの上で溶けた砂糖の甘い匂いが
キラキラしただけの子たちといっしょにエスカレーターを登ってくる
お揃いなキーホルダーがいくつか音を立てて
ふわりとした金木犀の匂いが混ざる、
幼稚なおとぎ話の花畑を眺めてるみたいで
そそくさと逃げるようにして
相手には聞こえないよう下向きに鼻で笑った

数学にイライラしていたんだ
前髪の作り方とか、ピアスを開ける場所とか
そんなことばかり気にする彼らが
キラキラになるまでの過程を無視して
結果だけ見ていつもイライラしてた
今すべきことは何なのか
なんでも知ってるつもりでいたし
欲深いヤツらめ、とさえ思って

周りの目を気にしないことは無かった
でもだんだん何をすることも出来なくなって
評価を言い訳に凍ったまま大きくなって
気付いたら順位は下から数えた方が早かった

あ、出遅れた。
いつから?生まれた時から?

また言い訳ができた。

甘いパンの匂いは3階へ上がっていく。
側のベンチに座った僕は
人や本棚で見にくい窓から
わざわざ灰色の空を眺めていた。

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