見出し画像

卒業生インタビュー①ANA国内線グランドスタッフ田中琴さん

2022年度大学院研究科修士課程ピアノコース修了。現在ANAの国内線グランドスタッフとして活躍する田中琴さんに桐朋学園大学で過ごした6年間のこと、就職活動のこと、学生時代に学んだことが仕事にどのように活かされているかなどをうかがいました。


「演奏で身に付けたスキルが仕事に活きています。」

お客様対応はアンサンブル!?

Q 現在、国内線のグランドスタッフとして勤務されていますが、どのようなお仕事をされているのですか?

田中琴さん(以下・田中) 空港の搭乗手続きカウンターでのお客様の対応と、搭乗口でのご案内が主な業務です。また、飛行機を乗り継ぎされる時、どのようにしたら良いのか分かりにくいことがあると思いますが、そのような方をご案内したり、車いすなどで移動されている方や、お子さまの単独搭乗など、お手伝いや配慮を必要としているお客様のサポートなどをしています。

つまりは、目の前で起こっている状況に合わせて瞬時に判断し動く、というのが私のお仕事なのですが、空港は、些細なことから、テレビのニュース番組などで取り上げられるような大きなことまで、予測できないアクシデントがとても多いところです。お客様はもちろんのこと、場合によっては私たちスタッフもどのように対応したら良いのかわからない、という局面に立たされることもあります。
私はまだ入社1年目です。日々の業務にはだいぶ慣れてきましたが、最初はとても大変でした。

Q 状況はだいぶ違うと思いますが、「瞬時に判断して動く」というのは、思考の面では室内楽などでのアンサンブルと似たところがありますか?

田中 そうですね、確かにアンサンブルの思考に近いかもしれません。今、何が必要とされているんだろう? 今、私はどのように動いたら良い? と、瞬時に自分の役割を把握して、やるべきことを判断して行動に移す。そういったところが特に似ていると思います。

学内アルバイトで知った仕事の楽しさ

Q 在学中、音楽以外の仕事に就くことを視野に入れ始めたのは何年生の頃ですか?

田中 視野に入れ始めたのは大学3年生の頃からです。しかし、私が大学に在籍していた頃コロナが流行してしまい、講義やレッスンのほとんどがオンラインだったのです。室内楽などをすることもできませんでしたし、まだまだ学びたいことがあったため大学院に進学しました。ですから、本格的に動き始めたのは大学院に進んでからです。

でも実は、音楽だけで自立することはもしかしたら難しいかもしれない、というのは入学当初から少し感じていました。楽器の演奏技術を磨いて、プレイヤーとしての経験や技量を上げたい、頑張りたい、と思いつつも、演奏することだけに注力していては将来の可能性を狭めてしまうのではないかと、薄々とではありますが感じていたんです。
そういうこともあって大学では教職課程を取り、音楽科の教育職員免許状の取得と教員になることを目標のひとつにしていたのですが、それも漠然としたものでした。

キャリア支援センターのセンター長で、教職課程で教鞭を執る杵鞭広美教授と再会

Q 一般職に目を向けるようになったきっかけは?

田中 在学中、入学試験や学内コンサートのスタッフなど、積極的に学内のアルバイトを行っていました。それらの仕事を通して、働くことの楽しさを知ったんです。そして、「もっと他の仕事も経験してみたい」と思うようになり、歯科助手のアルバイトを始めました。そこでの出会いが就職をもっと具体的に考えるきっかけになったんです。
実はそこで出会ったアルバイトの先輩が当時大学4年生でANAのCAとして内定が決まっていらっしゃいました。

私が就職活動を始める前年、アルバイト先の先輩がキャビンアテンダントになることを目指して採用試験に挑んでいたのですね。その方から、空港でのお仕事のことや採用試験に向けての準備についてお話をうかがっているうちに、航空関係のお仕事への関心が高まっていきました。
それと同時に、自分に合った職種はどのようなものなのか?と考えるようになったんです。それまでは、「教師でいいかな」とぼんやりと考えていたのですが……(苦笑)。考えを巡らせた結果、一般職で自分の可能性を探ってみよう、という考えに至りました。それが就職活動の「はじめの一歩」でした。

因みに、私にとっての大きな転機となったその時の先輩は、ANAのキャビンアテンダントに採用され、今も活躍されており、時々仕事中にお会いする事もあります。

子どもの頃から大好きな場所

Q そこから航空会社の採用試験を受けるようになるまでの経緯は?

田中 一般職を考えるようになったきっかけが、キャビンアテンダントになられたバイト先の先輩でしたから、そもそも航空会社への憧れはとても強かったんです。また、私の両親が旅行好きということもあり、子どもの頃から飛行機に乗る機会がとても多かったので、空港は旅行の出発点で大好きな場所でした。
子どもの頃、キッザニアで全日空のCAとパイロットのお仕事体験もしているんです(笑)。それも自分の意思で職種を選択しましたから、もしかするとその当時から空港で働くことに憧れを抱いていたのかもしれません。こうして振り返ると自然な流れだったかもしれませんね。

自信に繋がった自己分析

Q 就職活動はどのようなことから始めましたか?

田中 まずは合同企業説明会に行きました。航空会社に入社したいという希望はあったものの、世の中にどのような会社が存在して、どのような職種があるのかほとんど知識がありませんでしたから、まずは職種を絞らずに様々な企業を見てみるところから始めました。
合同説明会に参加しているうちに、自分がどのような職種に興味を持っているのかが分かってきて、自然と徐々に絞り込むことができました。

それから、音大生を対象とした就活サイト「ミュジキャリ」に登録し、個別相談にものっていただきました。

今、当時を振り返ってみて「就職活動中にしっかりとやって良かった」と思うのは、自己分析です。自分のことは理解できているようで、意外にも分かっていない部分があったり、気づいていない部分があったりするようなのです。
私の場合は、自己分析によって「人と関わることが好き」ということが分かりました。それまで意識したことがなかったのですが、このことが分かり、自信をもってグランドスタッフの採用試験に臨むことができました。

その職への憧れだけではなく、自分の性格とマッチするところが見えてくると、それが自信へと繋がります。

Q 就職活動をするにあたり、自信をもつことは大事?

田中 とても大事だと思います。特に私は音楽大学の学生であることをコンプレックスに感じることがあり、面接で何をアピールしたら良いのか分からなくなり、迷走してしまうことがありました。一般的な大学生の多くは、面接の際にサークルやゼミでの成功体験を話されることが多いのですが、私にはそのような経験がありません。多くの音大生・音大出身者は私と同じような境遇にあると思います。
けれども、自己分析をするなどの準備をしっかりとして自信を付けておくと、落ち着いて、迷走することなく対応することができます。

面接もただ闇雲に挑戦するのではなく、どのようなことを聞かれるか質問を想定。一言でも良いのでそれに対しての答えを用意する、といった準備をしていました。自分をアピールするための種を作っておく。そして、実際に面接を受けることで徐々にそうした場にも慣れて、自信が持てるようになっていきました。

それからもうひとつ、就職活動に費やす時間が増えて忙しくなっても、ピアノはそれまで通りに頑張ろう、と思い練習に取り組んでいました。就職活動には直接的な関係はありませんが、実技での成果も自信に繋がっていたように思います。

音大生特有の粘り強さは大きな利点

Q どのようなところが評価され、採用に繋がったと思いますか?

田中 実際のところは分かりませんが、「人と関わることが好き」というところかな、と思っています。あくまでも想像ですが。でも、この仕事をする上で、大事な要素だと感じています。

それから、音大卒の人たちは負けず嫌いだったり、人一倍粘り強いところがあったりしますので、メンタル的に強い方が多いと思うのです。そうした面は、この職に限らず様々な職種で評価していただいているように感じます。

Q 学生の頃を振り返って、「受けておいて良かった」と思う講義はありますか?

田中 私は国内線の担当なので外国語を使う機会はあまりないのですが、英語の他にドイツ語やフランス語を学んでおくことができたのは良かったかもしれません。

それから、これは直接的に仕事には結びついてはいないのですが、指揮法の授業かな。オーケストラを指揮するなんて、なかなかできませんから、貴重な経験だったと思います。

それと先ほどお話に出た室内楽ですね。メンバーと一緒にひとつの音楽を作り上げるという経験、瞬時に冷静な判断をして行動に移すという経験は、間違いなく今の仕事に活きていると思います。

ピアノで社会貢献

Q 現在は音楽とどのように関わっていますか?

田中 社内でチャリティーコンサートなどが開催されることがあり、私も2回ほど出演させていただきました。学生の頃のようには練習の時間が確保できないので、新しい曲に取り組むことは難しいのですが、学んできたことで社会貢献ができるというのはとても嬉しいです。

またこれはプライベートでの音楽活動なのですが、同じく航空業界で働く友人たちとJポップなどを演奏するバンドを組んでいます。こちらも限られた時間の中での活動になるのですが、久しぶりに弾くとやはりとても楽しいですし、音楽をやっていて良かったな、と感じます。

もともと集中して何かに取り組むということが得意で、それはピアノの練習にも活きており、私の強みかもしれません。そのおかげで、今もお仕事と音楽とを両立することができているように思います。ときどき集中し過ぎてやり過ぎてしまう、ということもあるのですが(笑)。

Q 在学中の学生たちにメッセージを。

田中 私が在籍していた頃はコロナ禍ということもあり、夢中でピアノに向かい、孤独に戦っていた時期がありましたので、室内楽や伴奏など、もっといろんなことを経験しておけば良かったな、と思うことがあります。ですから、ぜひいろんなことにチャレンジして、仕事に関してもたくさんのことを見たり、調べたり、経験したりして自分に合った職種を見つけると良いかもしれません。

また、先ほども少しお話ししましたが、音大生であるが故、就職活動で悩むことがあるかもしれませんが、音楽、楽器を長く続けてきたということは、何よりのアピールポイントになります。ですから自信を持って就職活動に臨んでください。

ANA LINE公式アカウントキャラクター「そらっち」と

略歴

たなか・こと
桐朋学園大学音楽学部音楽科ピアノ専攻卒業。
2023年同大学院修士課程修了。
2023年4月ANAエアポートサービス株式会社入社。国内線グランドスタッフ。

2024年3月
取材協力/ANAエアポートサービス株式会社
構成/大島路子
聞き手・文/向後由美(キャリア支援センター)
写真/桐朋学園大学音楽学部キャリア支援センター


皆さまからの感想をお待ちしております。


https://www.tohomusic.ac.jp/college/campuslife/career/index.html

桐朋学園無料体験教室(管・打・ハープ・コントラバス)
2024年4月28日(日)開催!
https://www.tohomusic.ac.jp/college/topics/catetemp_college3_topics/2023-0711-1815-23.html

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?