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「明日の組織のモデルはオーケストラである」P.F.ドラッカー

ドラッカーは『マネジメント 課題、責任、実践(中)』(1973年)において、実に124ページを使って組織について論じています。

それほど、組織の構造については、マネジメントの世界において、古くから最も深く研究されてきました。

でも、組織の構造については唯一絶対の解答はありません。

そのうえでドラッカーは組織のモデルについて大切なことをいくつか教えています。

組織とは、目的志向の機関である。しかも、組織はひとつの目的に集中して、初めて成果をあげる

『ポスト資本主義社会』71p

組織にはいろいろな形がありますが、共通しているのはひとつの目的に集中して組織されていなければならないということです。

そして組織は様々な知識をもつ専門家が活躍することで成果をあげることが可能となるのだから、目的が明確でなければなりません。

組織はひとつの使命しか持ってはならない。さもなければ、組織のメンバーは混乱する。それぞれの専門家が、自らの専門能力を中心として自己中心的に動くようになる。(中略)それぞれが自らの価値観を組織に押し付けようとする

『ポスト資本主義社会』72p

私がかつて勤務していた建材メーカは、歴史的に新築志向で経営されていましたが、85年頃にリフォーム市場に進出するために組織をつくった際に、しばらくの間、従来からの新築組織と新しく作ったリフォーム組織が社内で大混乱し、お互いが自分たちの価値観でものを言い合う場面が毎日のように見られました。

共通のミッションが明確でなかったために、まさにドラッカーが指摘した通りの様相が何年か続きました。

その上で、ドラッカーは理想的な組織のモデルはオーケストラだと言っています。

200人の団員のそれぞれが極めつけの専門家で、オーボエ奏者はバイオリンを弾くことはできません。しかも、オーボエだけでは音楽を演奏できず、演奏するのはオーケストラです。オーケストラは200人の専門家全員が同じ楽譜をもって演奏します。

オーケストラでは、すべての団員が、それぞれの専門能力を全体の使命に従属させる。そして、すべての団員が一度に一曲だけを演奏する

『ポスト資本主義社会』73p

あらゆる組織には、オーケストラの楽譜に相当する「使命」がなければ、各メンバーが自身の専門性のゆえにバラバラな行動をとる可能性があります。

当然、演奏は聞くに堪えないものとなるでしょう。

そして指揮者は、すべての団員の専門性と高い能力を、ひとつの演奏のために最大限発揮させるように指揮しなければなりません。

たとえ、1曲の中に数回しか登場しないシンバルであっても、そのシンバルの最高の出来栄え抜きには演奏が成り立たないまでに、各人の強みを発揮させ、活用しなければなりません。

さらに、どんなに出来の悪いトランぺッターがいたとしても、トランペットの得意な指揮者が代わりに吹くわけにはいきません。

いかがですか?

みなさんは指揮者ですかバイオリニストですか?

みなさんの組織には楽譜がありますか?

指揮者なのに自ら演奏しようとしていませんか?
バイオリニストなのに最高の音色を奏でるための日々の練習を怠ってはいませんか?
楽器はいつも最高の状態にメンテナンスされていますか?

オーケストラをモデルにすると、いろんな課題が見えてくるかもしれませんね。


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