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眠りについていたマイスターシュテュック149がついに動きだした気がする

昨年六月に譲り受けたモンブラン、マイスターシュテュック149。インクがこびりついた状態で長い間放置されていたからか、それとも――譲渡者が、放置する以前には相当使い込んだ模様であり――その癖が強く付いているからなのか、はじめ私はうまく書けなかった。私はわくわくしてインクを入れ、書こうとしたが、ペン先は紙の上を空しく滑るばかりで、少しの跡もつかなかった。

そこで念入りに洗浄し、インクを入れ、はらはらしながら再び書いてみると、うん、線が引けた。しかし一安心したのも束の間、染み一つ残さずにペン先が空しく滑る現象はけっこうな頻度で、ほんの三四画を書くうちにもやはり起こってしまう。生じたときにはその見えない跡をなぞるほかはない。ペン先の角度を変え五六度試すとようやく目に見える線が現れる。しかし、また三四画を書くとそこで不意に線が飛んでしまう。紙との相性かと疑い変えてみてもあまり違いはなく、これは使えたものじゃないな、とガックリ来ざるを得なかった。

それでも、書きつづけていればそのうちには、ペンが私の癖を覚え、馴染んでくるのではなかろうか、と淡い期待を保持しつつ、間欠的に気持ちを奮い立たせて使っていた。

春先には、少しうれしいことに、三四画に一度の高頻度で線が飛ぶということに改善がみられた。私が無意識にペンの持ち方を覚えたのか、ペンが私に合わせてくれたのか、理由はわからない。

ただ、半行や一行に一回はやはり不意に線が飛んでしまい、ペン先は紙に些かの染みも残さず空しく滑っている。褒められた仕方とはいえないが、私は空しく引いたその見えない線を、少しペン先の角度を変えてすばやくなぞる。一度で済むこともあれば、二度三度と繰り返すこともあるが、そうした無駄な工程を挟みつつも何とか纏まった文章を書き終えることができた。

が、そんな書き方はエレガントではない。インクが出てくれることを優先したためか、字の形も何だかおかしくなってしまった。やはり使えたものじゃない、と考え、その後一昨日まで私はこのペンをほったらかした。

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Montblanc Meisterstuck 149 / Montblanc Mystery Black / Tsubame Note W30S

一昨日久しぶりに書いてみると、ペン先が空しく滑るだけで線が飛ぶというあの忌々しい現象が、驚いたことにまったく起こらない。正直に白状すれば、線がかすれてしまいすばやくなぞったことは三回ほどあったが、あの忌々しい現象はうれしいことに一度も生じなかった。それは大いなる進展と云ってよい。

私は半年もこのペンを触らなかったのだから、書きつづけたことで改善されたわけでもなさそうだ。インクを入れたまま寝かせていた間に、衰弱、疲弊した毛細管力が整い、復調したとでもいうのだろうか。消息はよくわからない。

いずれにせよ、これまでは書き味云々以前のところでの格闘を余儀なくされたが、ようやくこのペンもデイリーライターの役割を果たし得るところまで来た。今後このペンはもっと書きやすくなる予感があるし、私にもそろそろ書き味を愉しむ余裕が出てくるだろうか。うれしい。

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