電話もメールもLINEも怖い

 人とのコミュニケーションはあまり得意ではない。とはいっても、対面で話す分にはそれなりに取り繕って話せているのではないか、と思う。

 その代わりテクノロジーを用いたコミュニケーションが怖い。一番怖いのはメールだ。

 メールが怖くなった理由は沢山あるが、そのほとんどが「怒られたから」だ。初めてメール関連で怒られたのは小学生のとき。親が共働きだったからキッズケータイを持っていた。たまたま夜に母親と買い物に行った時、父親からのこれ買ってきてというメールに気が付かなかった。それで帰ってからこっぴどく怒鳴られ、1週間ほどケータイを取り上げられた。今振り返ればそれだけのことでとも思えるが、その時はショックだったし、自分が悪いのだと思ったし、ケータイを取り上げられた時の悲しさはとてもよく覚えている。

 ともかく、それでなんとなくメールが苦手になった。大学生になって、研究室に配属されるとメールの送受信の回数が格段に増えた。連絡事項や注意事項がメーリスで回ってくるのはもちろん、休む時も連絡が必要だった。ストレスから体調を崩しがちだった頃は、何度も申し訳ありませんとメールをするのが苦痛だった。そんな頃、他にも休む人がいて教授としては休み過ぎだと思ったのだろう、全体メーリスでこの頃体調不良が多すぎるという内容のメールが送られてきた。名指しだった訳ではないけれど、その時休みがちだった数名のことを念頭に置いていたのは何となくわかるし、周りも気がついていただろう。体調管理(メンタルも含め)をしっかりしろという内容だった。そのメールを見て、研究室を辞める決意をした。
 その後も、だいたい年に1回か2回くらいの頻度でお怒りのメールを頂戴する。社会人の方にとってはそんなの少ない、と思われるかもしれないが、わたしにとってはキツい。大抵、メールの注意自体は真っ当だけれど、言い方が強すぎるものだからだ。過去のトラウマで余計に怖く感じる。

 だからメールを見るのがとても苦痛だ。送るのはまだしも、返事が来ると身構えて、何時間もかけてやっと開く。ほとんど怒ってなんかいなくて大丈夫なものばかりだけれど、でも、その数回に当たってしまったらどうしよう、ととても怖い。

 LINEも同じようなものだ。高校生の時は親からLINEを禁止されていたから、あまりその手のメッセージアプリに慣れていない。雑談でも時間差がある分余計なこと言ったかなとか考えてしまいがちだ。それにやっぱり、LINEでも何度か怒られたことはあって、今回もそうなんじゃないかと怖いこともある。
 それに、例えば遊びの誘いだったら、今はそんなに体調が良くないので億劫さが先に来てしまう。断ろうかOKしようか考えるだけで消耗する。全体LINEに垂れ流されるお知らせもどんどん脳のリソースを削り不安を煽って行く。

 電話は微妙である。大抵1回目は無視する。それでどこからかかってきたか調べて、必要そうだったら折り返す。電話で知り合いと話すことはほとんどないから、相手は大抵事務的な話しかしないので、怒られるかもという不安は減るのだが、無くなりはしない。

 抑うつが酷いとこれらが加速する。たぶん不安感が増すからだろう。だからスマホの通知を全部切って、何も気が付かないようにする。何にもない時もあるけれど、大事になることもある。あまりにも返事をしなかったせいで、一度は親に警察を呼ばれた。

 わたしにとってメールとかLINEはいつ爆発するか分からない不発弾のようなものである。開ける時はいつだってその恐怖と戦っている。多くの人には理解されないかもしれない。そんな人もいると知ってくれる人が増えたらいいけれど。

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