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〜大きなパリ〜 欧州旅行記④

昨日はカフェドフロールから帰って、二人とも死んだように寝た。

ただ朝起きたら普通に元気なのは、パリの美しさから来るアドレナリンなのか、旅行を最後まで満喫したいという意思が強いからなのか、メンタルがもたらす身体の作用であることに違いはないだろう。

今日は朝から蚤の市に行くことが決まっている。ただ何処に行くかはその日に決めるというのが我々のテキトーさなのである。
しかも大体ノリで決まり今日は蚤の市行ってないなら蚤の市だね。と僕が言ったら場所などは無言で奥さんが調べてくれて、本当にいつも申し訳ないなと思い、たまに自分でもマップを開いてやってる感を出すのだが、結局奥さんの指示について行くことが多いというダメ亭主ぶりを発揮してしまうのであった。

今日はそんなこんなで最初に僕はとにかくポスターが欲しかったので、これもノリで朝一にセーヌ川沿いに面した屋根付きの古書店やポスター専門のお店に行くことにした。

実際に行ってみると昨日頑張って行った左岸地域と右岸の丁度境のところに何店舗かあったのであった。

そこで売られていたポスターはレプリカではあるが日本で売っているレプリカと違って紙質が凝っていてヴィンテージ感があって意外に良い感じであった。ただこれはお店で飾る用ではなく自分家用に2枚だけトリュフォーとゴダールの映画ポスターを見つけて買った。

その後、なんとなくセーヌ川をまた超えるとなんとあのノートルダム大聖堂が昨年の火事の為の工事中の姿で出会った。僕はパリに来たらノートルダムのガーゴイルを見たいと思っていたのでナイスであると思った。ガーゴイルはなんともパリを守っている感じがして結構ダークな感じでカッコいいなと思っていた。中には入れなかったので間近で見ることはできなかったが、遠くから目を凝らして上の方を見てみると、あの特徴的な形を確認でき、少し満足を覚えた。よーく見てみるとガーゴイルも様々な形と表情も違かった。ガーゴイルについてちゃんとまた調べてみようと思った。

そんなこんなでまた歩いていくと、僕らのもう一つの目的地であるとその時に思い出した本屋があった。その本屋は「シェイクスピア書店」という本屋で英文学を専門に…と、まとめサイトでは紹介されていたが、全然新書から古書まで扱っていて結構観光客も多くイカしたグッズも取り扱っているお店であった。グッズが可愛かったのでキャップとトートバッグ、よせば良いのにアルセーヌ・ルパンのフランス語の本を買ってしまった。フランス語の勉強にという口実で二人で買ってはみたがなかなかこの勉強は難しいとは思われる。
全体として結構良い感じのお店ではあった。

さて、そろそろ大きな蚤の市の方に行こうということで、奥さんが調べてくれたパリで最も大きな市場があるということで向かうことにした。
ここから電車で15分程のパリの中でも端の地域であった。

いざ地上へ出てみると、おや、また雰囲氣が全然違うぞと思った。まず歩いている人が黒人の方が多い、駅の近くのお店のガラスが割れている。道が汚く、変なAppleの偽物みたいなのを売ってる人もいると、なかなか治安が悪そうな感じであった。ここから10分程歩いた場所にその市場があると奥さんから聞き、ふーんと言いながら、内心では結構物騒なところにあるなと思った。

取り敢えず我々はお腹が空いていたのであったが、ここら辺の個人店のお店は普通に店員からお客さん達まで怖そうな感じで、とても落ち着いて食べれそうなところがなかった。お手洗いにも行きたかったので妥協案としてチェーン店なら比較的綺麗なトイレがあり、味もそこそこで安心して食べられるのではないかと思い、駅のすぐ近くのケンタッキーに入ることにした。

ガラス張りの店内で1階は少々汚かった。
パネルの前でセルフでスパイシーチキンバーガーのチーズの乗ったポテトセットを頼んだ。
うちの奥さんはお手洗いに行きたかったのでまず先に2階にあるトイレに行ったが、コインを入れるタイプのトイレということでちょっとしてから戻ってきて黒人の女性のウェイトレスが少々無愛想に対応してくれた。

僕は注文したものを5分程なんだか落ち着かない店内で待った。注文の品が出来上がり、僕はガラス壁面の階段横の2人席に座った。前の席には白人女性と男性、後ろは黒人家族という並びであった。

先に一口だけ頂こうと思いチーズのかかったポテトを食べた。うーんぬるい。出来上がりまで5分待ったので期待していたがポテトもふやけててぬるくてあまり美味しくはなかった。
うちの奥さんが戻ってくるのがちょっと遅いなと心配しながらバーガーの方も食べてみた。とてもぬるい。やはりあまり美味しくはなかった。

そんなこんなで20分程奥さんを待っていた。
階段から音がして奥さんがなんだか悲しい表情で戻ってきた。
これは様子がおかしいなと思った僕は「どうした、なんかあったか?」と聞いた。
そしたら奥さんが「上に変なやつがいて変なこと言われた。」と言った。変なこと、と不審に思い
「何を言われたの?」と聞いたら、いや大丈夫と首を振った。心配になった僕はまず事情を聞いてみた。

どうやら奥さんはなかなか女子トイレが空かず待っていたのだが、2階のフロアはかなり様子のおかしい人達がいて何故かビールを飲み荒らして訳のわからないことを喋ったりしていたらしい。
女子トイレがあかないから仕方なく男子トイレを使い、出てきた時に手を洗うタイミングでどうやら女子トイレを使っていたと思われるフランス人の白人男に大変に下品で差別的なことを言われたらしい。ここではとてもじゃないが言えない内容なので割愛させて頂く。

奥さんは無視をしてここに戻ってきたということである。

奥さんが「フランス語だからしっかりは分かんないけど大体は分かるじゃない。」と悔しそうな表情をした。
僕も「なんかあったら危ないから無視でいい。」

と話をしている時にその気持ちの悪い男が下の階へ降りてきた。
僕が目線を上げて、奥さんに戻した。奥さんはアイツと言い、僕は無視をしながら注意深くその男の様子を伺った。
男は端から順番に客に対して喋りかけ残ったポテトやチキンの物乞いをした。黒人達は無視をした。1人だけナゲットをあげる者もいた。
我々の順番になり我々は目も合わせず冷たい目で無視をした。僕は少しでもまたキモいことを言ったら殴ってやりたいと思う程僕も頭に血が湧いていた。だが冷静に考え、僕らは沈黙を守り頑なに無視をした。男は10秒程我々の前に立ってぶつぶつ喋ったが無視をされ諦めて1階のテーブルのない我々から遠くのカウンター席に行った。

僕らはまずいバーガーとポテトをほとんど食べずにゴミ箱に捨ててさっさとケンタッキーを後にした。後ろからアイツが追ってくるのではないかと心配したので僕はたまに後ろを振り返った。

信号を超えて目的地の蚤の市場まで向かっていたが、我々は正直それどころの心境ではなかった。
向かってる途中でも怪しい人間がうろうろしており大きな声で電話する黒人や偽物しか売っていない洋品店などを通り、我々はなんだか気分が全然晴れなかった。

結局、蚤の市場まで着いたが広過ぎる市場をさーっと流し見して1時間もしないで元の駅に戻った。その時にちらとケンタッキーを見た、ガラス越しのカウンター席にあのキモいフランス人がまだ1人で座っていた。

⑤へと続く。

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