事業と脳の神経細胞は、似た仕組み@トグルという物語/エピソード4
※前回のエピソードはコチラ
S:ニューロンのようなものが形成される、とは?
伊藤:人は、集団や群れになっています。それに従い当然、知識も群れになっていると私は考えていて。それぞれの情報に詳しい人がいるわけです。トグルなら、たとえば不動産売買、不動産開発、人事、不動産投資などなど。メンバーそれぞれの得意領域があります。そこに医療、その反対側に金融という領域が仮にあったとき、その知識を持つ人はクラスター(集団)になっています。
伊藤:トグルホールディングスが、不動産売買や開発をはじめるとなったとき、それは、その情報や人と、かかわりができることを意味します。他方で、医療や金融などの新規事業をはじめるとは、その情報や人と『新たに』かかわることです。それは、脳が新たな神経細胞に触手を伸ばす構造に似ているというか。私は、事業と頭脳の神経細胞の仕組みは、似ていると考えています。
S:どんな仕組みですか?
伊藤:脳の神経細胞が、次の神経細胞へ情報を伝える構造をニューロンといいます。ニューロンによって、つながり、形成されているのが脳内の複雑なネットワークです。ネットワークを電気信号が走っています。神経細胞が発する情報をやりとりするためです。この構造になぞらえ、トグルという頭脳の神経細胞をさまざまな方向へ伸ばし、あちこちでクラスターになっている情報や人に、つながることができたらと考えています*1*2。
S:さまざまな場所で群れになった情報、人、集団があって、そこまでの間を埋めたい。という理解でも、よいですか?
伊藤:はい。「トグルの社会関係資本を構築しましょう」という話です。新しい人と出会って打ち合わせをすることでネットワークを形成し、事業を進めていくわけです。たとえばの話ですが、医療や金融が飛び地の領域だとします。そこに参入するためのスキルやノウハウが、この瞬間、トグルにはありません。でも、ネットワーク網を広げ、社会関係資本を構築していけば参入可能になるタイミングが来ると考えます。
伊藤:情報、知識、人に限らず、別な視点からいえば、事業における『地域』についても同じアナロジーで説明することができます。トグルは、いま東京でしか事業展開をしていません(2022年2月時点)。
S:ネットワークがないから?
伊藤:そうですそうです。でも、ネットワークを張り巡らせれば、人との交流、情報が得られるようになり、事業の展開先を分散的に持つことができるわけです。さらに別な切り口なら、イノベーター理論にも転用することができます。
伊藤:アメリカの大学教授によって提唱されたマーケティング理論が、イノベーター理論です。イノベーター理論では、市場の新商品を手に取るタイプには、五つあるとされています。新商品を手に取るタイミングが早い順に(上図の左から)、イノベーター(2.5%)、アーリーアダプター(13.5%)、アーリーマジョリティ(34%)、レイトマジョリティ(34%)、ラガード(16%)です。それぞれを日本語にすると以下のように言い換えることも、できます。
変革者
初期採用者
前期追随者
後期追随者
遅滞者
伊藤:ビジネス的にも社内の人材的にも、イノベーターやアーリーアダプター、リーチできていたとしてもアーリーマジョリティまでにしか、トグルという頭脳の神経細胞は届いていないと、私は思っています。
S:レイトマジョリティやラガードにはトグルの、”神経”が接続されていないのではないか?
伊藤:おそらくは。
S:それらに、神経を張り巡らせることも重要?
伊藤:重要です。
S:なぜですか?
伊藤:私たちには、コネクションがありません。でもこれから、たとえばトグルホールディングスが大きな事業に着手しようとするなら、絶対にアーリーマジョリティやレイトマジョリティ、ラガード(という人、集団、知識の群れ)とのつながりも必要になります。いかにして彼らと神経を接続させ、トグルがネットワークを形成することができるか。これは、私が向き合っている『問い』でもあります。いろいろなところにトグルという、頭脳の神経を張り巡らせたいわけです。それが冒頭(エピソード3)で話した「緩やかな共同体を作りたい」ということかもしれません。言葉にならなかったイメージが、だいぶ言語化されてきました。ゆくゆくはDAO、Web3の世界観になると思っています。トグルトークンみたいなものが配られ、そのリターンを共同体の参加者は得ることができる、というような世界観です。次の時代へ向けた構想と考えてもよいでしょう。
S:トグルトークンは、ポイント経済圏のようなイメージですか?
伊藤:近いです。既存の『〇〇経済圏』とは、資本主義的で経済的な、つながりですよね。安く買える、ポイントが貯まるなど。要は、お金の話だと思います。そうではなく情報、知恵、知識が目的の共同体です。参加者にとっては、お金ではないリターンを得ることができる場にしたいですね。ここまで話していて思ったんですが「トグルのファンを作りたい」「トグルのファンを増やしたい」そういうことなのかもしれません。
伊藤:そうはいっても「起業はこうしろ」などと指南する成功者ユーチューバーのような人は、たくさんいます。そこと競争すれば自分たちが陳腐化するので、特徴が重要ですね。とがった何かを共同体のテーマに据える必要があると考えています。
S:そうではなければ、ファンをつくることができない?
伊藤:生まれた企画や、つくったコンテンツが誰の心にも刺さらないということに、なりかねません。
S:共同体には、どんな人に参加してほしいですか?
伊藤:パッと浮かぶのは、社長や役員以外のビジネスパーソンです。
S:なぜ?
伊藤:経営層は、すでに目覚めている場合が多いからです。そうではない実務家が目覚める。そんな共同体にしたいですね。
S:とがった何かを共同体のテーマに据えるとして、現時点で浮かぶキーワードはありますか?
伊藤:うーん…。
S:自分の特徴は何か。そう問われて頭に浮かぶのは?
伊藤:それでいうと、私の特徴の一つは全体性ですね。私の場合、何かを説明するなら、まず全体からです。それから「この領域がよさそう」という説明をしなければ、本質的に人は賢くならないと思っています。だから全体を――。全体性を大切にしたいなと思っているんですよ。
S:戻りましたね、一番大事なキーワードに――。
S:――伊藤さんが全体性を大切にしたいのは、なぜですか?
(つづく/エピソード5へ)
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【参照情報一覧】
*1◆理化学研究所より【ヒトの脳全体シミュレーションを可能にするアルゴリズム】
*2◆岐阜工業高等専門学校・電気情報工学科より【ニューロンとは】
*3◆東京大工ICPより【イノベーター理論をわかりやすく解説!【事例あり】】
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