シリーズA~Bのスタートアップがなぜ採用で苦戦するのか

こんにちは、とがり(@KenseiTogari)です。

久松さんの「採用市場に中堅エンジニアがほぼ居ない/どこに行ったのか目撃情報を集めてみた」という記事を読んで、シリーズA~Bのスタートアップがなぜ採用で苦戦するのか私自身の実体験と合わせて腑に落ちたので、言語化してきます。

スタートアップでエンジニアの採用担当をしております

まずは、どんな人がこの記事を書いているかわかった方が読みやすいと思うので、自己紹介します。
私は、オプティマインドという物流系のスタートアップでエンジニアの採用担当をしております。2年前に入社して1.5年エンジニアをしてから、採用に異動しました。その経緯は以下のnoteにまとめています。

オプティマインドは、2019年10月にシリーズAで10億超を資金調達しました。それから2年弱立っているので、シリーズA~Bくらいのイメージをしていただいて差し支えないと思います。人数もこの2年間で15人→35人になり、約1年後の2022年5月には55-60人を想定しております。

※このnoteでは、私の実体験に基づく内容と個人的な意見が主なので、n=1とサンプル数が少ない前提で読んでいただけますと幸いです。

オプティマインドも採用に苦戦しています

オプティマインドでは 1年で20-25人の採用を予定しております。うち、エンジニアは10-15人です。私が採用を始めてから8ヶ月程経ちましたが、目標値が雲の上と感じるほど採用に苦戦しております。

その要因として根本的に私の能力不足や求める採用要件が高いなど、いくつか考えられるのですが、今回は採用市場という外部要因に目を向けたいと思います。私が参加している勉強会でも、いない人を探しても意味がないのでマーケット感はまず考えるべきとおっしゃっておりました。

私は、「採用市場に中堅エンジニアがほぼ居ない/どこに行ったのか目撃情報を集めてみた」で述べられているように、採用市場には中堅(30代)だけでなく、経験数年以上の20代ですらいない状況であると感じております。

なぜ、スタートアップがなぜ採用で苦戦するのか

ではスタートアップがなぜ採用で苦戦する原因を久松さんの記事を引用しながら考えていきましょう。

Seed期のスタートアップ
意外にも人気なのがここです。ベンチャーキャピタルの方とお話をした際にも答え合わせができたのですが、0-1のフェーズは人気で、1-10のフェーズになると急に不人気になる。具体的には社員数が20名くらいになるともうエンジニア採用には詰まり、むしろ流出する。CTOだけしか残っていないベンチャーとかもあったりします。

2年ほど前まで二次請けより下のSIerの方は「上流に行きたい」「自社サービスに行きたい」「顧客の声を聞きたい」が転職理由として定石だったのですが、この層が上流や自社サービスではなくSeed期のベンチャーに向かっているようです。1-10や10-100フェーズの自社サービスベンチャーでの王道採用ターゲットだっただけに、厳しいところです。
「採用市場に中堅エンジニアがほぼ居ない/どこに行ったのか目撃情報を集めてみた」

seed期のスタートアップは人気のようです。ただ、記事で言及されているように「1-10のフェーズになると急に不人気になる。」ようです。まさにシリーズA~Bの会社がここに当たるのではないでしょうか。

私の観測範囲では、よりレイターのステージ(シリーズB以降、従業員100人以上、10-のフェーズ)に関しては、一部の"採用に強い"会社以外はシリーズA~B以上に苦戦すると感じております。
シリーズB以降の会社で実際に働いた経験があるわけではなく、候補者・採用担当者・記事で見たり、聞いた内容ですのでそんなことはないかもです。

本題に戻ります。シリーズA~Bのスタートアップが採用で苦戦する理由として、待遇と 2 成長・活躍環境があると思います。

待遇
外資や大手において、新卒で500万や30代で1000万は普通に見かける金額でです。しかし、シリーズA~Bの会社でそこまで出せる会社はほとんどないのではないでしょうか。なので、多くの会社はそのマイナス分を未来を語ることで補填する必要があるのだが、多くの場合、seed期のスタートアップの方が熱狂具合が高く、それがシリーズA~Bになると、30人の壁・50人の壁と言われるように薄れてきてしまいます。

また、未来にかけてもらう文脈においてSOがありますが、これも実際に計算してみると、

IPO企業の公募ベース時価総額の中央値で70億円
20人を超えたタイミングでの入社で付与されるのはせいぜい0.1%程度
入社後5年で上場
現在の時価総額は10億
と想定すると、
70億円 x 0.001-10億 x 0.001 = 600万円
600 / 5 = 120 万円 / 年

かなり雑に計算しましたが全てのスタートアップが上場できるわけではないので、30%が上場できると仮定すると、

120 x 0.3 = 36 万円 / 年

これでは、待遇面で勝負するのは厳しい戦いになります。seed期のスタートアップや(ネクスト)ユニコーンと比較してみると、

seed期のスタートアップは
・より高い配分
・より低い時価総額
で付与される可能性が高いです。

(ネクスト)ユニコーンは
・より高いIPO時の時価総額
・より短い行使までの期間
・より高い上場確率
で付与される可能性が高いです。

ここまで、会社員として比較としてきましたが会社に属さないフリーランスとも比較する必要があります。

採用担当をしている私の体感値では、
フリーランスは70-90万
社員は40万-60万
です。

雇用が安定していないから(いつでも切れるから)高額なんだと思われる方も多いかもしれません。エンジニア側としては、市況感を考えると契約終了になろうが他にも仕事がある状況なので、
(契約終了のリスク)<(高給)
と感じているフリーランスエンジニアの方は多いと思います。

「保険が...、年金が...」という話もあるかもしれないですが、30万 / 月の差を埋めるほどはありません。むしろ厚生年金を払う必要がなく嬉しい人もいるのではないでしょうか。

このような経済合理性から外資や大手だけでなくフリーランスとの比較でも厳しい戦いを強いられます。

成長・活躍環境
社内の環境も、重要な要素になります。一緒に働く人による成長と制度による活躍になかなか時間を割けない会社が多いのではないでしょうか。

seed期と同じようになんとなくでオンボーディングして仕事任せてその中で育ってねのままでは、社員は紹介しづらいし候補者は活躍できるかの確証が持てず最後の意思決定の妨げになります。

給与も低くブランドもない会社にきてもらうことは、次のキャリアに影響します。ですので、候補者が活躍・成長できるイメージを持てるような環境を整備する必要があります。活躍できる環境を用意できれば社員からの紹介も自然と発生し、さらに参画いただいた方の早期活躍も期待できるので会社としてもメリットが大きいです。

どうするのが良いのか

じゃあ採用できないよねでは業務を放棄してしまっているので、どうするべきか私の考えをまとめます。

1 業務委託やインターンを積極的に活用する
正社員ではない雇用形態を活用する方法です。すぐに給与レンジを上げたり環境を作るのは不可能なので、これからも苦戦を強いられるのは事実です。
当社でも業務委託やインターンを積極的に活用しており、社員と同数程度の方に参画いただいております。
なぜ正社員である必要があるのか、一度考えてみるべきであると思います。

2 会社の制度を採用から考える
会社の制度は社内に目を向けたROIではなく、採用も加味したROIを考えるべきであると思います。
例えば、勉強や資格の補助制度を検討するときに「別になくても良いよね」となった経験はないでしょうか。社内に目を向けると投資対効果が見えずらく、自費でやりたい人だけやったら良いという結論になりがちだと思います。
一方で、採用市場からの見え方を考えると、育成にお金を使っている会社と使っていない会社、どちらの会社に魅了を感じると思いますか。採用に一人当たり数百万かかることを考慮に入れて採用面での投資対効果を考えた制度設計をしていくことが重要です。
会社を採用市場にFitさせるために会社を変える必要があるので経営陣を巻き込んでいく・コミットしてもらうことが必要です。

最後に

ここまで採用面の難しさを述べてきましたが、事業は0→1の真っ暗闇の手探りの中から一筋の光明が見えてきたタイミングです。
如何に仮説検証を繰り返してサービスを磨き上げられるか、そして10→100のフェーズに向けた土台を作れるかという非常に面白いフェーズで例えば、オプティマインドでは
・日本郵便様の業務への導入
・大手宅配や小売の企業に試験導入や実証実験
・自動運転サービスの実証実験
などが進んでおり、今最高に面白いタイミングだと感じています。

オプティマインドでは、エンジニア・デザイナー・セールス・人事など各方面で積極採用中です。まずはお気軽にご連絡お待ちしております!


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