一郎丸 竜一(いちろうまる りゅういち)

アラサーのゲイ。

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年末の短歌

いじっぱりみたいな休日寂しいけれど誰にも会わない いつか落としたAirPods Proの片割れは夢を見ている そうですかはいそうですかわかりましたはいそうですかよくわかりました 年末の電車がやがて空くみたいに世界も滅亡したらいいね

    • 徒然。

      その歌を私のために歌ってよ ライブ告知のDMじゃなくて お砂糖のような言葉を信じてる あなたは遠く遠くなりゆく あと何回おまえのことを救えれば 私のゲームはクリアしますか ミスドにもまいばすけっとにも恋があるマクドナルドにも恋があって 大きめのはフードはぜったい肩が凝るけど着てく可愛いからね  

      • 日記

         2週間前に出会った男と何やかんやあってオサラバした。  何度かきたメッセージを何度か返さないようにしたら、本日「お世話になりました」とだけきてブロックされていた。  いい人だったし、身長も高くて顔も良くて頭も良くてたくさん努力もしてる人だったけど、まぁオサラバするような理由もそれなりにあった。  会って2週間の人だし、そこまで落ち込むこともない。こういったことを、もう何度もループしている。  気分転換にカフェで本を読んだ。  おばさまたちが多くて、飼ってる犬の話と

        • とあるリスナーからのおたより。

           Podcast『こじらせゲイのひとりごと』第26回より。  おはようございます、こんにちは、こんばんは。こじらせゲイのダイキです。皆さんいかがお過ごしでしょうか。この番組は都会の隅っこで暮らすしがない拗らせゲイ男子の僕が、リスナーさんからのおたよりを中心に気ままにトークするゆるゆる雑談番組でぇす。番組の感想はハッシュタグ『#こじゲイ』でつぶやいてくださいますと尻尾振って喜びま〜す。  はい、今週も始まりましたけれども、もう26回ですか。去年細々と初めたこの番組なんですけ

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        • 今日は、男の話をしよう。
          3本
        • レトロポップサイコキネシス
          3本

        記事

          さよなら、学校の怪談。-7

           昇降口から入った駆たちは、小さな学校を「懐かしい懐かしい」と子供のようにはしゃぎながら巡り歩いた。  シューズや運動靴を入れていた下駄箱。深い海の底のような色をしたリノリウムの廊下。『ろうかは走らない!』と書かれた日焼けしたポスター。昔は鯉が泳いでいた裏庭の小さな池。水のない二十五メートルプール。渡り廊下の先に古びた体育館。横を見れば学年ごとの花壇や菜園。職員室に保健室。音楽室に図工室。コンピュータールームや図書室。家庭科室に給食室。小さい頃はあんなに広かった学校が、今で

          さよなら、学校の怪談。-6

           一次会が終わり、既婚者組は早々に帰宅。婚活組はそろってカラオケに出向くらしい。そのどちらでもない駆たちは、すっかり薄暗くなった真夏の夜道を一台のワゴン車で走っていた。  車は山田先生が乗って来たワゴン。大きめの車だが、大人が六人も乗ると少し窮屈だった。 「いやぁでもまさか、海老沢さんまで来てくれるなんてね」  助手席に座る俊介が、ミラー越しにこちらを見ながら言った。ちらりと横を見ると、海老沢海がニコニコと笑って座っている。  居酒屋を出ようとした際、案の定海は他のク

          さよなら、学校の怪談。-5

           結局、行くことになってしまった。  言い出しっぺは自分なのだが、なんだか大変なことになったと駆は苦笑した。誰もいない居酒屋のトイレに、駆の巨大なため息が響く。山田先生が断るかと思っていたのに、なんだかんだで隆史に丸め込まれてしまった。  まぁ仕方ない。学校に行きたいのは事実なんだし。  長くなりそうだったらこっそりと帰ろう。  駆はフッと短く息を吐き、トイレを出た。 「あっ」 「えっ」  トイレを出てすぐの廊下に、思わぬ人物が立っていた。 「えっと……大倉、く

          さよなら、学校の怪談。-4

          「ねぇねぇねぇ今どこに住んでるの? やっぱりタワマン?」 「こないだのドラマ観たよ~。すっごい泣いちゃった!」 「ちょう肌きれい~化粧水どこの使ってるの?」 「滝川ルイと付き合ってるってうわさ、ほんと?」  案の定、海老沢海の周りには人だかりができており、駆たちは話すことはおろか、声をかけることさえままならなかった。  そんな状況が面白くないのか、隆史はずっと唇を尖らせている。 「けっ……皆して海老沢海老沢って……ここに未来の大物ユーチューバーがいるってのに」

          さよなら、学校の怪談。-3

           恩師の登場により盛り上がりを見せた同窓会も、時間が進むにつれてしっぽりと落ち着いた雰囲気になりつつあった。 「いやぁ俺はほんとに幸せもんだよ。こんなに素晴らしい仲間たちに囲まれて、俺のためにこんなに集まってくれるなんてさァ」  隆史が日本酒の入ったお猪口を片手に、ぽつりとつぶやいた。横にいる俊介が「そうだね」と優しく返事をする。隆史からそのセリフが出るのは今ので十七回目なので、駆を含めた他の面々は皆無反応だった。 「だがしかしお寿司大倉!」  突然隆史に指差された駆

          さよなら、学校の怪談。-2

          「いやぁ、ほんっと久しぶりだよなぁ」  乾杯前のビールを片手に、藤井俊介が噛みしめるように言った。その言葉に周りもうんうんと頷く。  駆はテーブルの端っこで、居酒屋の座敷に集められた市立きさらぎ小学校の卒業生たちを見渡した。顔は何となく覚えているが、名前が出てこない人が結構いる。店に入る前も何人かに声をかけられたが、相手の名前が思い出せずに中途半端な笑顔で誤魔化すしかできなかった。 「成人式の時に中学とか高校の同窓会はやったけど、小学校のは初めてだし、嬉しいよ」

          さよなら、学校の怪談。-1

           市立きさらぎ小学校の廃校の知らせを受けたのは、大倉駆が二十八歳を迎えた年のことだった。  加速する地方の過疎化や少子化によって、駆の地元である片須市の子供の数は年を追うごとにぐんぐん減っていった。きさらぎ小学校の今年の卒業生は、たったの十人。駆が通っていた頃の三分の一以下だ。今年度からは隣町の小学校と合併して、在校生たちはバスなり親の車なりでそちらまで通わねばならないらしい。そんなことを電話の向こうで、母が寂しそうに語っていた。 『あんたもたまには帰って来なさいよね、東

          さよなら、学校の怪談。-プロローグ

           さとるくんの噂って知ってる?  公衆電話に十円玉を入れてね、自分の携帯電話の番号にダイヤルするんだ。繋がったら受話器に向かってこう唱える。 「さとるくん、さとるくん、おいでください。さとるくん、さとるくん、おいでください。さとるくん、さとるくん、いらっしゃったらお返事ください……」  唱え終わったらすぐに電話を切る。そしたらね、二十四時間以内にさとるくんから携帯に電話がかかってくるんだって。  え? かかってきたらどうするって?  それがさ、さとるくんっていうのはどん

          さよなら、学校の怪談。-プロローグ

          02.カオナシ男に御用心。

           アプリに顔を晒さない男は多い。彼らのプロフィール画像は風景だったりご飯だったり、ソシャゲのスクショだったり様々である。もちろん人には人の事情があるのだから、顔を出せない男には顔を出せない事情があるのだろう。でもやっぱり顔を最初から出している人に比べ、一度顔を見せてもらう必要がある分どうしてもテンポが悪く感じて、カオナシ男への返信率はついつい悪くなってしまう。  コロナ禍になって世の中がイケメンだらけになったような気がする。それはマスクで顔の下半分が隠れ、自分の理想の顔を勝

          01.写真と違う男。

           マッチングアプリあるある。「写真と全然ちゃうやんけ!」問題はゲイの世界でももちろん多発している。  まだ掲示板を使って見知らぬゲイと出会っていた頃、事前に送られてきた写真よりも3倍くらい横に大きな人が現れたことがあった。あの写真っていつ撮ったやつですかと聞くと「3年前」と返事があった。その人には「写真と雰囲気全然違うね」と言われてその後連絡が取れなくなった。お前が言うな。  ゲイアプリには周囲へのゲイバレを恐れて、顔出しをしていない人も多い。そういう人から苦労してなんと

          00.はじめに。

           私はゲイである。ゲイの出会いに偶然はない。漫画やドラマのような運命の出会いが散歩してたらたまたま落ちていることなんて、本当にない。びっくりするほどない。職場のカッコイイ上司がたまたま……とか長年親友だったあいつがまさか……とかそういうのはマジでない。少しずつ理解が進んできたとはいえ、まだまだセクシャルマイノリティが生きるには苦しい世界。みんな自分の正体を必死に隠しながら生きているのだから、そりゃそうである。だから、ゲイの出会いはただただ必然を重ねていかなければいけない。

          新しい生活を始めた話。

           引っ越しようと思ったのは7月初め、まだ梅雨も終わり切っていない頃だった。  年下の男を追いかけて名古屋に出向いたものの、すぐに破局しTOKYOへとんぼ返りしたのがもう5年ほど前の話になる。それから友達とルームシェアを開始。2年ほど住んだ後、友達がコロナを機に実家へ戻ることになりさらに別の友達とルームシェアを始めた。名古屋時代から数えると、実に6年近く誰かしらと共同生活をしていたわけである。  誰かと住むのはそれなりに我慢も多いが、都合のいいことも多い。まず、お金。同居人