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とあるリスナーからのおたより。

 Podcast『こじらせゲイのひとりごと』第26回より。

 おはようございます、こんにちは、こんばんは。こじらせゲイのダイキです。皆さんいかがお過ごしでしょうか。この番組は都会の隅っこで暮らすしがない拗らせゲイ男子の僕が、リスナーさんからのおたよりを中心に気ままにトークするゆるゆる雑談番組でぇす。番組の感想はハッシュタグ『#こじゲイ』でつぶやいてくださいますと尻尾振って喜びま〜す。

 はい、

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枝豆と桜海老のおにぎり

枝豆と桜海老のおにぎり三合分作って持ち帰るだけのお花見

「あぁすっげ」「やっべ」とそう言いますけれど凄くもやばくもないですよね

お手洗い行ってる間にマーガリン塗られたコッペパンのしょっぱさ

仮想通貨の話が出てしまったからあなたとはもう終わりねロマンス詐欺さん

新宿のつるとんたんの器くらいあなたのことを許してあげたかった

とは。

愛とは光。
愛とは暗やみ。
愛とは歪み。
愛とは祈り。
愛とは砂鉄。
愛とは砂塵。
愛とは夢見。
愛とは夢幻。
愛とはストゼロ。
愛とはノンシュガー。
愛とは。

愛とは。

愛とは魔法。
愛とは音楽。
愛とは地獄。
愛とは輝き。
愛とはヘドロ。
愛とは毒ガス。
愛とは平凡。
愛とは特別。
愛とは。

愛とは。

あぁ。きみが好き。

消える。

「カビ取り剤ってさ、実際はカビを漂白してるだけで、カビがなくなるわけじゃないんだよ。消えるボールペンも、擦ると色が透明になるだけで、ほんとに消えるわけじゃないんだって。そういうことでしょう。見えなくなっても、消えずにこびりついてるんだよ。何もかも消えてなくなるなんてこと、ないんだよ」

☆ホモバレ注意報☆

 ホモバレって、怖いですよね?

 毎日必死に自分がホモであることを隠しているそこのあなた。もし先の未来が少しだけわかったら楽なのに……なんて思ったことはありませんか?

 そんな時こそこの未来予報アプリ『ホモバレ注意報』を使ってみましょう! 使い方はカンタン♪ 自分のスマホにダウンロードして置くだけで、あなたがホモバレする未来を感知してアラームを鳴らして知らせてくれます。しかもメッセージでどんな

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春、リアル。

「おっ」

 久しぶりにマッチングアプリでタイプの男とマッチした。マッチング画面を見るのが久しぶりすぎて、一瞬アプリがバグったのかと思った。哀し。

 だが自らの非モテっぷりに落ち込んでいる場合ではない。彼氏いない歴X年。これ以上空き家が続くと事故物件のレッテルを貼られかねない。怖い。結婚のないゲイ業界。なのにどうして我々はずっとつがいを探し続けるのだろう。知らんけど。俺は寂しいんだ。週末

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すてきなガチャ

 ゲイの世界に本格的に足を踏み入れて数年、様々な経験を通して俺は一つの結論にたどり着いた。

 この世界は、超超超超外見至上主義社会だ。

 見た目が良ければもうそれで最強。言うことなし。何をやっても何を言っても許される無敵の存在になる。ノンケの世界もある程度はそうかもしれないが、ゲイの世界はもっと露骨だ。見た目の良いゲイたちはアイドルのようにもてはやされ、ブスは話しかけられもしない。集合写真を撮

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レトロポップサイコキネシス

「なぁ俺、お前のこと好きなんだけど」

「ごめん、むり」

 通算384回目の告白も、結果は同じだった。俺は肩を落として目の前のクリームソーダを一口飲んだ。学校帰りに寄り道した古い喫茶店。もう何週間ここにいるんだろう。俺の一世一代の告白を一蹴した張本人は、呑気に大盛り鉄板ナポリタンをガツガツ頬張っている。いったいどうすればいいんだろう。もう考えるのもつかれてしまった。

 ぐらり。視界が歪む。あぁ

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横断歩道

横断歩道

「最近この辺りで何人も人が消えてるんだって」

 帰り道。いつものようにお喋りしながら下校していると、ユカちゃんが思い出したように言った。横を歩くカオリちゃんが「あっ知ってる知ってる」と大袈裟に頷く。

「この先の横断歩道で神隠しみたいに人が消えるんでしょ。3組のカナちゃんがそう言ってた」

 神隠し。なんだそりゃ。そんなわけないだろう、と私は内心思っていたが、そんなことを言うと2人の機嫌を損ねか

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虚無虚無プリン

同居人がデートの帰りに彼氏を家に連れて来ると言うので、逃げるように予定を作って家を出た。同居人は「居てもいいよ」と言っていたが、状況がそうは言っていなかった。

新宿のルイヴィトンの前で同い年のセフレと待ち合わせして、とりあえず彼の行きつけのゲイバーに向かった。

晩ご飯を食べていなかったのでお腹が空いていたが、彼は「変な時間に牛丼食べちゃった」らしい。仕方がないのでゲイバーのカウンターに置いてあ

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欲しいものは

欲しいものは

 大学に入学して、初めて恋をした。

 今まで何人かとはなんとなくそういう関係になったことはあったし、その時も「好きだよ」なんて口にしてはいたけれど、それが全部真似事でしかなかったと気付かされた。そう思うくらい、僕は落ちてしまった。

 好きになったのは同じサークルの先輩。優しくて面倒見がよくて、でもどこか子供っぽくて。近所のお兄さんみたいな彼に、僕はときめいてしまった。僕たちは同じ学生寮で部屋も

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初リアル

初リアル

「初めまして。ヒロさんですか?」

 昼下がりの新宿アルタ前にやってきた彼を見て、俺は心の内でガッツポーズをした。かわいい。それもかなり。出会い系アプリのプロフィール写真はだいたい盛ったものを使うので、会う前はいつもハードルをできるだけ下げるようにしていたのだが、彼はそんなハードルを軽々飛び越えるほどの見た目をしていた。

 東京で暮らし始めて数多くのゲイと出会ってきたが、これほどの上物が現れたの

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それでも

それでも

「キャラクターみたいだねってね、よく言われるんだけどね」

友人のF君がすっかり氷の溶けたアイスコーヒーをつまらなそうにかき回しながら口を開いた。

退屈な連休のはざま。新宿の古い地下喫茶店は、それでも人の声にあふれている。

「漫画とかアニメとかのキャラクターとかゆるキャラとか、そういうの。それっぽくて可愛いねってよく言われる」

F君の穏やかそうな顔や丸々としたフォルムを見て、確かに童話に出て

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焼きそば

あっ。

不意に背中が総毛立った。あ、あ、あ。
パソコンを睨んでいる最中。全く頭に入ってこない企画書。鳴らない電話を待つ間にそれはやって来た。

何が何だかわからなかった。みぞおちの辺りが熱いようなくすぐったいような、気分。唐突に私を支配したその感覚を言葉にするなら、

言葉にするなら、

懐かしい。

叫び出したくなるような懐かしさだ。

なんで。何が。どうして懐かしいのかは全くわからな

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