ジン・ガイ・パーティ ~奇種流離譚~
俺たちを襲ってきた集団の、おそらくリーダー格であろう、その男は目を丸々と見開き、顎が外れるのではないかと心配になるほど大きく口を開けている。「唖然とした表情」の選手権があれば上位入賞は固いのではないか、と思わせる表情だが、それも無理からぬ事だ。
人間、ゴブリン、オーク合わせて三体を多数で囲んで叩きのめす。楽な仕事、と思っていたはずだ。だが、ゴブリンが振るう白刃によって前衛は瞬く間に壊滅し、後ろに伏せた虎の子の魔道士はオークの構える奇妙な杖から撃ち出された魔石によって、既に倒れ伏している。悪夢のような心地に違いない。
表情を見れば何も知らずに襲いかかってきたのは明白だが、念のために裏を確認するべきか。
「…殺すほうが簡単なんだが、な」
こちらの呟きが聞こえたのか、表情はそのままに男の顔面が真っ青になる。
その様に滑稽を通り越して妙な感動を覚えながら、俺は腕を解いて触手に戻した。
【続く】