ウィンチェスター・ウィッチクラフト
両手の小銃が立て続けに二度、小気味良い音を奏でる。
自ら銃を手に取る事は久しいが、やはりこのM1876は出色の出来栄えだ。自動的な死の機構も悪くは無いが、自ら与えるそれには愉悦がある。
部屋にはまるで三つ子の様な男たちの死体。身元を知る術は無いだろうが、おそらくピンカートン探偵社・魔女狩課の人造探偵だろう。
二百年。意外と早く辿り着かれた。
私は娘に続き、夫に先立たれた悲劇の女であるのと同時に、莫大な遺産を相続した羨望と妬みを一身に受ける存在だ。
表向きの顔が有る以上、私はボストン社交界より差し伸べられた手を無下に扱う事は出来なかった。いや、あえてしなかったのだ。そこに私の富に集る蛆の様な輩の思惑が有る事も承知でだ。
それ程私は退屈していたのだ。
斯くして私はボストンの霊媒師なる女に会う事となった。
期待自体無かったが、一目で本物では無い事が分かった。
霊媒師は尤もらしく話した。
「貴女も亡き御家族も、貴女の一族が作り出した銃により死した無数の者たちに呪われ、取り憑かれています」
怯えると思っていた私からの素っ気ない態度に彼女は戸惑いを見せた。
「此処より遥か西、合衆国の西の果てに貴女自身と御家族、そして浮かばれぬ魂たちの為に屋敷を建てなさい。そして増築を続けるのです。然もなくば貴女はたちどころに死霊に蝕まれ、死に至るでしょう」
私をこの地より放逐し、怯えさせ、富を山蛭の様に吸い続ける筋書きか。
だが面白い。
「確かにやり過ぎたわね。我が子らは生産され、増え、この地に満ちた。数多の獣を滅し、数多の部族を滅し、そして数多の民を相争わせ大陸を血に染めた。ならばその地で終わらせるのも悪くないわ」
聞く者は居ない。
霊媒師の額には穴。
魔女狩探偵が来る。
メキシコの魔女が来る。
ピースメイカーの牧師が来る。
赤と白の復讐者が来る。
異端審問大統領が来る。
さあ愉しませなさい。もっと私と銃とこの屋敷を愉しませなさい。
【続く】