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シュガー・シュガー・マッドネス

「お前のお仲間の仕業じゃないのか?」
「旦那!そりゃあんまりだ!」
「ホセ、お前じゃない。コイツに痛っ!角で突くな!」

 コイツの説明が必要かい?
 痛っ!悪かったって!コイツじゃない、訂正するよ騎士殿。
 説明は…まあ、今は必要無いか。

「旦那ぁ、クスリはやめたんだろ?その…独り言は程々にしてくれねぇとコッチも心配になるんでサ」
 情報屋のホセが哀れみの目で俺を見ている。
「もうやってねーよ。お前は誰か来ないか廊下で見張ってろ」
 この場から離れられて清々した様子でホセは部屋から出て行った。

 それもそうだ、辺り一面血の海…って訳じゃ無いが、床を埋め尽くすのはカラフルなキャンディ、ジェリービーンズ、グミ、etc…。
 一見すると詰め物をぶちまけたピニャータ工場だが、此処は間違いなくマフィアの隠し事務所だ。
 ほら、そこに落ちてる叩き壊されたピニャータみたいなモノを良く見てみろ。ありゃカポ・レジームのドメニコだ。一見たちの悪いジョークやWWYDに見えるだろ?

 俺には…いや俺にしか分からねぇ。
 コレは殺しだ。

 やっぱりコイツの説明は必要かい?
 痛っ!間違えただけだ、怒るなって!


 ちょっと前の話だ。 俺は死にかけていた。

 迷い猫探しをしていた筈がどういう訳かカルテルの取引現場に出くわしちまって…腹と頭に一発ずつ貰っちまったって訳だ。
 どうにか逃げて路地裏に隠れてはみたものの、もう歩くこともままならねぇ。追っ手が俺を見つけるのが先か、垂れ死ぬのが先か。

 忌の際ってのは世界から次第に色が失われて往くもんなんだな…と最後の一服を咥えてモノクロに変わりつつある世界をだだ見つめていた、その時だ。
 場違いにも程があるパステルカラーが俺の前に現れた。

「ごきげんよう!…あなただいじょうぶ?」ってね。

 目の前に浮かぶ、パステルカラーで虹色ストライプの体、ユニコーンめいた角の生えた、喋るイルカ。

それがお菓子の国の懲罰騎士・スウィーティとの出会だったって訳さ。


【続く】

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