見出し画像

144.第5章「映画とテレビでトップをめざせ!不良性感度と勧善懲悪」

第22節「日本アニメ史に残る1970年代東映動画の名作②」

1.西洋を舞台にした少女大河アニメ

⑤テレビ朝日系金曜19時『キャンディ・キャンディ』(1976/10/1~1979/2/2 全115話)

 1976年10月東映動画制作のカーレースアニメ『マシンハヤブサ』(1976/4/2~9/17 全21話)の後番組として、テレビ朝日系金曜19時枠にて講談社なかよし』連載中の人気少女マンガ、水木杏子原作、いがらしゆみこ作画『キャンディ・キャンディ』が始まりました。

1976年10月発行 社内報『とうえい』第195号

 前作『マシンハヤブサ』を企画した山口康男に、茂野一清が加わり企画を担当。メインライター雪室俊一、チーフディレクターは今沢哲男と京撮出身の設楽博、キャラクター設計・監修を進藤満尾が任され、金田 伊功(かなだ よしのり)、奥山玲子などが原画を描いています。
 音楽、主題歌の作曲は渡辺岳夫、作詞の名木田恵子は原作者水木杏子の別名で、アニメソングの女王堀江美都子が歌いました。

 この作品は徐々に人気を高め、2クール目からは少女の間で圧倒的な人気を得るに至ります。
 スポンサーのポピー(現バンダイ)が発売した玩具は爆発的に売れ、ポピーは『仮面ライダー』『マジンガーZ』が作った男児玩具市場に加え、女児玩具でも市場を確立しました。

 「東映まんがまつり」では、第29話のブローアップ版が1977年7月、劇場版短編キャンディ・キャンディ 春の呼び声』(脚本城山昇・作画監督進藤満尾・ 演出笠井由勝)が1978年3月、そして同じく劇場版短編キャンディ・キャンディの夏休み』(脚本笠間由紀夫・作画監督進藤満尾・演出笠井由勝)が1978年7月に公開されます。

 大ヒットした少女大河アニメキャンディ・キャンディ』は、1979年2月まで2年4か月続き、全115話で終了しました。

 テレビ朝日系金曜19時枠の後番組には東映動画制作で南フランスを舞台にした「東映魔女っ子シリーズ第8作花の子ルンルン』(1979/2/9~1980/2/8 全50話)が続きます。

 そして、次番組「東映魔女っ子シリーズ第9作魔法少女ララベル』(1980/2/15~1981/2/27 全49話)の後、1981年3月から再び『ハロー!サンディベル』(1981/3/6~1982/2/26 全47話)でイギリスを舞台にした少女大河アニメが復活しました。

『ハロー!サンディベル』
©神保史郎・桜井誠・東映アニメーション

2.永井豪原作巨大ロボットアニメから松本零士原作宇宙SFアニメへ 

 1970年代前半東映動画は、フジテレビ系で放映された永井豪原作「マジンガーZシリーズ」や「ゲッターロボシリーズ」を制作し、子供たちの間に「巨大ロボットブーム」を巻き起こしました。

 70年代後半には、松本零士原作で東映動画が制作した『銀河鉄道999』(1978/9/14~1981/3/26 全114話)など、宇宙へのロマンを描いたSFアニメが、テレビとともに成長したヤングアダルト層、いわゆるアニメファンの間で大ブームとなります。

 フジテレビ系日曜19時枠で放映され大ヒットした巨大ロボットアニメUFOロボ グレンダイザー』の後番組であり、この2つのブームの間の橋渡しの作品が、東映動画が初めて松本零士に原作を依頼した『惑星ロボ ダンガードA』(1977/3/6~1978/3/26 全56話)でした。

 『惑星ロボ ダンガードA』は平均視聴率17.1%、変形ロボット玩具「ダンガードA」の1977年度売り上げは「マジンガーZ」を越える27億円という大ヒットを記録します。

 番組放映中の1977年8月1974年西崎義展が製作し松本が企画に参画した『宇宙戦艦ヤマト』(読売テレビ・日本テレビ系1974/10/6~1975/3/30 全26話)の再編集版が、東映洋画部配給で劇場公開され、SF宇宙アニメ大ブームを呼びました。

 そのため『マジンガーZ』から始まったフジテレビ系日曜19時枠での東映動画制作巨大ロボットアニメ終了し、次の番組はブームで盛り上がる松本原作のSF宇宙アニメに替わります。

 また、テレビ朝日系火曜19時枠にて、東映動画が制作した松本零士原作『宇宙海賊キャプテンハーロック』(1978/3/14~1979/2/13)の放映が1978年3月14日から始まりました。

テレビ朝日系『宇宙海賊キャプテンハーロック』
©松本零士/零時社・東映アニメーション

 京都撮影所出身の田宮武が企画を担当し、チーフライター上原正三、チーフディレクターりん・たろう、キャラクター設計・作画監督は小松原一男を中心として制作します。
 前半は視聴率に苦戦しましたが、最終回第42話は10%の視聴率と健闘して終了しました。
 この枠での後番組として、東映テレビ部の企画者飯島敬鈴木武幸日本サンライズで製作した石森章太郎原作『サイボーグ009』(第2作 1979/3/6~1980/3/25 全50話)が始まります。

『サイボーグ009』
©石森プロ・東映

 シリーズ終了後の1980年12月20日には、東映動画制作の劇場版オリジナル長編映画『サイボーグ009 超銀河伝説』が公開されました。

『サイボーグ009 超銀河伝説』明比正行監督
©石森プロ・東映

 プロデューサーは東映飯島敬小湊洋市が担当し、脚本中西隆三、脚本協力ジェフ・シーガル、監督明比正行、作画監督・アニメーションキャラクターデザイン山口泰弘、メカニック作画監督・メカニックデザイン、美術総設定角田紘一を起用します。
 音楽はすぎやまこういちで、主題歌の作詞山上路夫、作曲森田公一、編曲小六禮次郎、元「ズー・ニー・ヴー」のボーカル町田義人が歌いました。
 この作品は東映ではめての正月第1弾アニメ映画となります。

⑥フジテレビ系日曜19時『SF西遊記スタージンガー』『SF西遊記スタージンガーII』(1978/4/2~1979/8/26 全73話)

 1978年4月、大ヒットした『惑星ロボ ダンガードA』の後番組として松本零士原作『SF西遊記スタージンガー』がスタートしました。

『SF西遊記スタージンガー』
©松本零士/零時社・東映アニメーション

 これまで同様、東映旭通信社(現ADKホールディングス)の共同製作、東映動画制作のこの作品は、『ゲッターロボ』『UFOロボ グレンダイザー』『惑星ロボ ダンガードA』の企画者勝田稔男が担当します。

 勝田は、石川英輔が書いた小説『SF西遊記』の原案に「スタージンガー宇宙の暴れん坊)」と言う名称を加えタイトルとしました。 
 前作に引き続き松本零士が原作としてアニメ用に設定を描き、マンガ家桜多吾作が『テレビランド』(徳間書店)、池原しげとが『冒険王』(秋田書店)でマンガ連載を始めます。
 『ゲッターロボ』から脚本に参加していた田村多津夫がシリーズ構成とメインライター、ベテランの芹川有吾がチーフディレクター、キャラクターデザインは須田正己がそれぞれ担当しました。

 等身大サイボーグで主役のジャン・クーゴ孫悟空)の声は石丸博也オーロラ姫玄奘三蔵法師)は杉山佳寿子キティ博士釈迦如来)には増山江威子が吹き替えます。

 音楽及び主題歌の作曲は、勝田作品を支える菊池俊輔、歌はさささきいさおがこれまで同様に起用されます。主題歌の作詞は伊藤アキラでした。

『SF西遊記スタージンガー』
©松本零士/零時社・東映アニメーション

 当時、TBS系でザ・ドリフターズのコメディ人形劇『飛べ!孫悟空』(1977/10/11~1979/3/27)が子供たちの間で大ヒットしており、8月には日中平和友好条約が締結されるなど中国に注目が集まっていました。
 また、『SF西遊記スタージンガー』放映中の10月には、堺正章が孫悟空、夏目雅子が三蔵法師を演じる日本テレビ系ドラマ大作『西遊記』(1978/10/1~1979/4/8)が始まり、ゴダイゴの歌う主題歌と共に大ヒットするなど「西遊記ブーム」が興っています。

 「東映まんがまつり」では、劇場用新作映画SF西遊記スタージンガー』が1979年3月17日、第8話のブローアップ版『SF西遊記スタージンガー悪魔のバリバリゾーン』が1979年7月21日、と2作品公開されました。

 『SF西遊記スタージンガー』も前作同様にヒットし、5クール64話続いた後にタイトルを『SF西遊記スタージンガーⅡ』に替えて1クール9話、計6クール73話で終了します。

3.西洋を舞台にした歴史大河アニメへのチャレンジ

 1978年7月東映動画が制作した永井豪原作の巨大ロボットアニメ『UFOロボ グレンダイザー』は、『Goldorak(ゴルドラック)』と改題され、フランスにてテレビ放映が始まります。
 当初夏休みだけの予定が、子供たちの心を捉え高い視聴率を獲得し1979年1月まで延長。キャラクターグッズも飛ぶように売れ、主題歌はフランス国内で記録的ヒットとなりました。
 続いて、女の子向けの『キャンディ・キャンディ』、松本零士原作の『宇宙海賊キャプテンハーロック』、永井豪原作『マジンガーZ』などのシリーズが放映され大ヒットします。
 これらのアニメ作品はイタリアへも輸出され、フランス同様に子供たちの心を捉え大ヒットしました。

⑦フジテレビ系日曜19時『円卓の騎士物語 燃えろアーサー』(1979/9/9~1980/3/30 全30話)『燃えろアーサー 白馬の王子』(1980/4/6~9/21 全22話)

 東映動画は、これら作品の海外での大ヒットを受け、また、大ヒットした『キャンディ・キャンディ』の男の子版を狙い、『SF西遊記スタージンガー』の後番組として、イギリスアーサー王と円卓の騎士伝説を原作にしたアニメ『円卓の騎士物語 燃えろアーサー』を制作します。

『円卓の騎士物語 燃えろアーサー』
©旭通信社、東映アニメーション

 プロデューサーは前作『SF西遊記スタージンガー』の勝田稔男、脚本は『惑星ロボ ダンガードA』から参加の馬嶋満がメイン、チーフディレクターは明比正行、キャラクターデザインを野田卓雄が受け持ちました。
 音楽及び主題歌作曲は、これまでと同じ菊池俊輔、作詞は関根栄一で、菊池が編曲したオープニングをささきいさおこおろぎ'73武市昌久編曲のエンディングは堀江美都子こおろぎ'73が歌います。
 『円卓の騎士物語 燃えろアーサー』は7か月全30話で終了、続けてほぼ同一スタッフにてアーサー王伝説から離れた新たなストーリーの『燃えろアーサー 白馬の王子』が始まりました。

『燃えろアーサー 白馬の王子』
©東映アニメーション、旭通信社

 この続篇の主題歌作詞は保富康午ほとみ こうご)、編曲は 田辺信一が行い、オープニングは水木一郎、エンディングは大杉久美子こおろぎ'73が歌います。

 『燃えろアーサー 白馬の王子』は2クール全22話で終了。1972年の『マジンガーZ』以来続いてきたフジテレビ系日曜19時枠東映動画作品は、この後4年間ほど休止しました。

 東映動画は、アニメ業界の先駆者として「巨大ロボットアニメ」「宇宙SFアニメ」「魔女っ子アニメ」、そして西洋を舞台にした「少女大河アニメ」など様々なジャンルのアニメにチャレンジします。
 そして成功や失敗を重ねながらアニメ新たなジャンル開拓することで、現在に至る日本のアニメ産業の隆盛に貢献して行きました。

トップ写真:松本零士原作『宇宙海賊キャプテンハーロック』©松本零士/零時社・東映アニメーション