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143.第5章「映画とテレビでトップをめざせ!不良性感度と勧善懲悪」

第22節「日本アニメ史に残る1970年代東映動画の名作①」

 本ブログでは、1970年代に放映され人気を博した「巨大ロボットシリーズ」「魔女っ子シリーズ」などを中心に数多くの東映動画アニメ作品をご紹介して参りました。
 今節は、日本のアニメ史に足跡を残した1970年代東映動画作品をご紹介いたします。

①NET(現テレビ朝日)系土曜20時30分『デビルマン』(1972/7/8~1973/3/31 全39話)

 1972年当時、NETは、TBS土曜20時の大ヒット番組『8時だョ!全員集合』に対抗するべく、東映に子供層ターゲットの30分番組2作の企画をオファー。そこで東映は、石森章太郎原作の東映テレビプロ制作特撮ドラマ『人造人間キカイダー』と永井豪原作の東映動画制作アニメザ・デビルマン』2本立ての「変身企画」を提案しました。

1972年7月 社内報『とうえい』第167号

 そして7月から『人造人間キカイダー』とともに『デビルマン』の放映が開始します。 

『デビルマン』
©ダイナミック企画・東映アニメーション

 テレビ放映がスタートする少し前の6月、永井豪は『週刊少年マガジン』(講談社1972年25号6月11日号)からマンガ版の連載を開始、悪魔をヒーローにしたダーク世界の壮大な連続物を展開することで年齢層が高めのファンを魅了しました。

 それに対しアニメ版は、基本設定が同じ永井ワールドでありつつも、辻真先オリジナルストーリーによる子供でも楽しめる原則一話完結の勧善懲悪ヒーロー物として幅広いファンの獲得を目指します。
 「デ、ビール」の掛け声とともにデビルマンに「変身」する不動明とデーモン族の妖獣との闘いは、恋人牧村美樹との物語やコメディー要素の強いサブキャラクターの登場で、暗い要素を持ちつつもより明るいものとなって子供たちの人気を集めました。

 アニメ版『デビルマン』は3クール全39話(初放送38話)続き、印象深いアニメとして子供たちの記憶に残る名作となります。

 「東映まんがまつり」では、オリジナル劇場版『マジンガーZ対デビルマン』(勝間田具治監督)という魅力的なクロスオーバー作品が1973年7月18日に公開されました。

1973年「東映まんがまつり」『マジンガーZ対デビルマン』勝間田具治監督
©ダイナミック企画・東映アニメーション

プロデューサー:宮崎慎一 企画: 有賀健籏野義文 原作:永井豪 脚本: 辻真先他 演出: 勝間田具治他 キャラクターデザイン:小松原一男 作画監督:小松原一男他 作画: 清山滋崇友永和秀荒木伸吾兼森義則丹内司白土武他 音楽&オープニング主題歌作曲・編曲:三沢郷 主題歌作詞: 阿久悠 歌:十田敬三他 エンディング作曲:都倉俊一 エンディング編曲:青木望

②NET系土曜20時30分『ミクロイドS』(1973/4/7~10/6 全26話)

 1973年4月、ヒットした『デビルマン』の後番組として、手塚治虫原作東映動画制作『ミクロイドS』が始まりました。

『ミクロイドS』
©手塚プロダクション・東映アニメーション

 この作品も前作の『デビルマン』同様に、3月からアニメ放送に先行して手塚治虫原作にて『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)に1973年14号3月26日号)でのマンガ連載がスタートしています。

 今作品は昆虫と環境問題をテーマにし、前作同様マンガ版アニメ版ともほぼ共通の基本設定にて、高めの年齢層に向け終末観の強い手塚マンガによる広い年齢層に向けてのオリジナルストーリー1話完結ヒーロー物、という媒体別に展開しました。

 『ミクロイドS』は、2クール全26話で終了します。

プロデューサー:宮崎慎一 企画: 籏野義文 原作:手塚治虫 脚本: 辻真先他 演出: 明比正行他 キャラクター設計:我妻宏 作画監督:我妻宏他 作画: 高橋信也兼森義則小松原一男友永和秀奥山玲子他 音楽&主題歌作曲:三沢郷 主題歌作詞: 阿久悠 歌:ヤング・スターズ 

③NET系土曜20時30分『キューティーハニー』(1973/10/13~1974/3/30 全25話)

 1973年10月、2クールで終了した『ミクロイドS』の後継番組として、再び永井豪原作の『キューティーハニー』が決定しました。

『キューティーハニー』
©ダイナミック企画・東映アニメーション

 これまで同様今作もメディアミックス企画であり、 『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)の1973年9月1日号から永井豪の同名連載マンガが登場しています。
 また1973年11月号から、ダイナミックプロ石川賢が『冒険王』『別冊冒険王』『映画テレビマガジン』(秋田書店)、その他中島昌利テレビランド』(徳間書店)、岡崎優テレビマガジン』(講談社)、菅沼美子たのしい幼稚園』(講談社)、別府ちづ子おともだち』(講談社)、岡崎優が少女月刊マンガ雑誌『なかよし』(講談社12月号から、など数多くのマンガ連載が連動しました。

 「多羅尾伴内」や「仮面ライダー」など変身ヒーローの演出を取り入れたアニメ放送が始まると、敵のパンサークローと戦うキューティーハニーのカッコよさに、男の子も女の子もワクワク・ドキドキします。

『キューティーハニー』
©ダイナミック企画・東映アニメーション

 少女型アンドロイドの主人公如月ハニー声・増山江威子)が7つの姿に変身するシーンは子供たちに強烈なインパクトを与えました。

 また、永井豪の他作品キャラクターたちの登場も作品に明るさを与え人気を集めます。

如月ハニーと仲間たち
©ダイナミック企画・東映アニメーション

 「東映まんがまつり」では、ブローアップ版が公開されました。
  第12話「赤い真珠は永遠に」(1974年3月16日公開)

 20時30分放映のため通常アニメ作品より少し高い年齢層をターゲットにした『キューティーハニー』は、人気を獲得しましたが子どもたちへの刺激が強すぎたこともあり、2クール25話で終了します。

 しかし、これまでのかわいい魔法少女とは異なる、強くてセクシーでファッショナブルな美少女アクションヒーローは、多くの子供たちの記憶に残るキャラクターとなりました。 

プロデューサー:宮崎慎一 企画: 勝田稔男 原作:永井豪 脚本: 辻真先他 演出: 勝間田具治他 キャラクターデザイン:荒木伸吾 作画監督:荒木伸吾他 作画:山田稲波柿崎敬子束田久美子並木孝他 音楽&主題歌作曲:渡辺岳夫 主題歌編曲:小谷充 歌:前川陽子 オープニング作詞: クロード・Q エンディング作詞:伊藤アキラ 

 『キューティーハニー』の終了で、NET系土曜20時及び20時30分枠1時間ドラマ枠に替わります。

④NET系水曜19時30分『少年徳川家康』(1975/4/9~9/17 全20話)

 1975年4月NET関西地区における毎日放送MBS)から朝日放送ABC)へのネットチェンジにともない、NETMBSと共同製作してきた水曜19時30分から1時間半放映の歌謡番組『ベスト30歌謡曲』が水曜20時スタートの1時間番組に替わりました。

 そしてこの空いた水曜19時30分からの枠にて、日本船舶振興会(現日本財団)一社提供の東映動画制作『少年徳川家康』がスタートします。

『少年徳川家康』
©講談社・東映アニメーション

 この歴史アニメは、山岡荘八の長編小説『徳川家康』を原作に、少年時代、人質として苦労する竹千代徳川家康の幼名:声小宮山清)とその母お於(だい)の方(声増山江威子)の波乱に富んだ涙と感動の物語を描き出しました。

 『少年徳川家康』は約2クール全20話続き、その後番組に大ヒット時代劇アニメが誕生します。

プロデューサー:旗野義文坂梨港荻野隆史 原作:山岡荘八 脚本: 大川久男他 チーフディレクター:田宮武矢吹公郎 演出: 勝間田具治他 キャラクターデザイン:荒木伸吾 作画監督:白土武他 作画:内山正治川筋豊伊勢田一他 音楽&主題歌作曲:渡辺岳夫 作詞:伊丹亮一郎 編曲:小谷充 歌:ニュースタジオシンガーズ    

⑤NET系水曜19時30分『一休さん』(1975/10/15~1982/6/28 全296話)

 1975年10月、『少年徳川家康』の後番組としてとんち話で有名な日本の禅僧・一休宗純の子供時代を描いた東映動画制作アニメ『一休さん』が幕を開けました。

『一休さん』
©東映アニメーション

 前作と同じく笹川良一会長日本船舶振興会が一社提供して始まった中央児童福祉審議会推薦の教育的番組は、子供たちの心を捉え大ヒットします。

1976年4月発行 社内報『とうえい』第191号

 南北朝の動乱期を背景に、一休さん(声藤田淑子)のとんちに室町幕府第3代将軍足利義満を始めとする大人たちがやりこめられる痛快話が多く描かれました。

一休さんと足利将軍
©東映アニメーション

 一休さんにいつもとんちで負けてしまう蜷川新右衛門(にながわ しんえもん)も実在の人物です。

一休さんと新右衛門さん
©東映アニメーション

 ポク、ポクという木魚の音が響く中、両手の人差し指で頭の上を2回ほど円を描いてから結跏趺坐で瞑想。やがてチーンというおりんの音とともに頓智が閃く一休さんの有名なポーズを、当時の子供たちは何度も真似をしました。

『一休さん』に登場する主要人物
©東映アニメーション

 CMに入る前の一休さんのセリフ「あわてない、あわてない。ひと休み、ひと休み。」そして『一休さん』主題歌も多くの子供たちに愛されます。

一休みする一休さん
©東映アニメーション

 さよちゃんの「一休さーん」と呼ぶ声から始まるオープニング曲「とんちんかんちん一休さん」の背景で描かれる安国寺は、京都府綾部市にある紅葉で有名な山寺安国寺の風景をモデルに描かれました。

安国寺で修行する一休さん
©東映アニメーション

 当時子供だった人々は「好き好き好き好き、好きっ、好きっ、愛してる。好き好き好き好き、好きっ、好きっ。一休さん」の歌詞をみんな覚えています。

 エンディング曲「ははうえさま」は、後小松天皇の子供と言われる一休さんと別れて住む母の伊予の局(声・坪井章子増山江威子)との母子の愛情がテーマでした。

一休さんの母「伊予の局」
©東映アニメーション

 そして『一休さん』に関係する音楽と言えば、途中で流れる日本船舶振興会のCM「戸締まり用ー心、火の用ー心。」です。
 大太鼓を打つ高見山、纏を大きく振る山本直純、拍子木を打つ笹川会長とインパクト抜群でした。

 願い事をかなえる「てるてる坊主」もかわいいけど不気味でこわかった思い出があります。

 「東映まんがまつり」では、ブローアップ版が4話劇場版オリジナル新作2話公開されました。
 ブローアップ版
 第1話『一休さん』(1976年3月20日公開)
 第5話『一休さん 虎たいじ』(1976年7月22日公開)
 第13話『一休さん おねしょお姫さま』(1976年12月19日公開)
 第2話『一休さん ちえくらべ』(1977年3月19日公開)
 劇場版オリジナル新作
 『一休さんとやんちゃ姫』(1978年3月18日公開)
 『一休さん 春だ!やんちゃ姫』(1981年3月14日公開)

 『一休さん』は、6年9ヵ月全296話を記録する大ヒット長寿アニメとなります。

 海外へも輸出され、仏教国のタイはもとより、中国台湾香港など中華圏でも大ヒットし、何度も再放送を重ねます。
 知らない子供はいないくらいの人気を得た『一休さん』は、日本と同様、当時子供だった多くの人々にとって、今でも日本語で主題歌を歌えるほどの思い出深い作品となりました。

アジアで大人気の『一休さん』
©東映アニメーション

NET→テレビ朝日プロデューサー:宮崎慎一碓氷夕焼 プロデューサー:坂梨港高見義雄栗山富郎 脚本:辻真先他 チーフディレクター:矢吹公郎 演出: 勝間田具治他 キャラクターデザイン・監修:我妻宏 総作画監修:石黒育 音楽&主題歌作曲・編曲:宇野誠一郎 作詞:山元護久 オープニング歌:相内恵ヤング・フレッシュ エンディング歌:藤田淑子

トップ写真:『一休さん』©東映アニメーション