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台所の化学:ワインから結晶を作る

息子は夏休みの自由研究(科学論文)で,酒石酸を用いて「酒石酸カルシウム」の結晶を作った。

自由研究提出後に,「酒石酸はワインの中に入っているんだよ」と話したら息子が,「ワインで結晶を作ったらどうなるんだろう」というので,「自由研究は提出し終わったけど,ワインを使って作ってみようか」となった。

【酒石酸の説明】
「酒石酸」をはじめて聞く人がいるかもしれないが,実は身近な酸である。酒石酸はぶどうやワインに多く含まれる酸で,ジュースやゼリーの酸味料としても使われている。ベーキングパウダーにも使われている。

酒石酸化合物として特に有名なものには,酒石酸カリウムナトリウムがある。酒石酸カリウムナトリウムの結晶はロッシェル塩とよばれていて,かつては潜水艦などのソナーの材料に使われていた(連続テレビ小説「マッサン」では,軍に依頼され,ワインから原料となる酒石酸を取り出すシーンもあった)。

ワインに石灰を入れると石灰は酒石酸と反応する。そのときにできる化合物が酒石酸カルシウムである。こんかいは,重曹とワインの中の酒石酸から酒石酸ナトリウムを作り,酒石酸ナトリウムと塩化カルシウムから酒石酸カルシウムを作った。

酒石酸ナトリウムではなく,酒石酸のままでも,演歌カルシウムを混ぜれば酒石酸カルシウムはできるが,息子の自由研究で,酒石酸ナトリウムを用いた方が綺麗な結晶ができたので,こんかいも重曹を入れ酒石酸ナトリウムにした(ヘニッシュにも理由はわからないがナトリウムが入っていた方が良好であるようなことが書いてあった)。

【材料】
白ワイン 1本
重曹  6gくらい
塩化カルシウム(除湿剤(水とりぞうさん)に入っている白いツブツブのやつ) 6gくらい
寒天  6gくらい

分量によって,できる結晶の大きさが決まってくるが,ワインにどのくらいの酒石酸が入っているかわからないので,分量は適当に決めた。また,白ワインと赤ワインのどちらがよいかはわからないが白ワインにした。

寒天以外は100円ショップで調達した。最近の100円ショップはなんでも揃うね。

【作り方】
1. ワインを煮詰める
おそらく,ワインをそのまま使うと,酒石酸の濃度が低いので,ワインを1/10くらいになるまで煮詰める。

2. 酒石酸ナトリウム水溶液を作る
ワインの中に重曹を入れる。このとき酒石酸と重曹が反応して,二酸化炭素と酒石酸ナトリウムができる。これはベーキングパウダーの反応で,二酸化炭素の泡が出るので,吹きこぼれに注意する。重曹を入れたところ,ワインの他の成分と反応したからか,ワインが白濁してしまった。重曹は入れない方がよいかもしれない。

3. 寒天を入れて固める
2の溶液に寒天を入れ,冷やして固める。息子の自由研究によると,寒天の量はギリギリ固まるくらいが良いようである。

ワインが白濁したせいで,下が白色,上が赤色の2層に分離したが,原因はよくわからない(わかる人がいたら教えてください)。

寒天を入れる理由は,酒石酸カルシウムが水に溶けにくいからである。水に溶けにくいので,そのまま材料を混ぜると酒石酸カルシウムのパウダーができてしまう。そこで,寒天を入れてドロドロにすることで,ゆっくりと反応させて,結晶成長させる。

4.  塩化カルシウム水溶液を作る
除湿剤から塩化カルシウムを取りだし,塩化カルシウム6gを100ccの水で溶かす。それを,寒天で固めたワインの上に静かにのせる。

ここまでできたら,あとは1週間ほど待てば良い。

【結果】
1週間後がこれ。↓

写真だと見づらいかもしれないが,寒天の中に最大で2mmくらいの粒ができていた。2層に分離した上の層では,赤い粒が,下の層では白い粒ができていた。

これを取り出して洗った。赤い粒も白い粒も水には溶けなかったが,白い粒のものは,力を入れるとすぐに粉々になってしまった。結晶ではなく粉末が固まっていただけのようだった。

大きめの赤い粒を取り出し,顕微鏡でみたものがこれ。↓

下に,結晶の大きさがわかるように,1mmの目盛りのものさしを置いてある。長い辺が最大で2mmくらいだろうか。

結晶が凸凹なのはおそらく,寒天の量が多かったらだろう。息子の自由研究ではワインではなく酒石酸粉末を用いたが,寒天を多くしていくと,同じように凸凹になった。寒天の量を減らしてもう少し柔らかくすれば,もっときれいな結晶ができると期待している。

へニッシュの本では,珪酸ナトリウムゲルを用いて7mm程度の酒石酸カルシウムの結晶ができると書いてあったが,それよりも悪い条件のもとで2mmくらいできたのだから,まずまずである。

【まとめ】
そんなに大きくはないが,ワインを使って最大で2mm程度の結晶を作ることができた。

結晶をつくる実験は,基本的には材料を入れて待っていればできるので小学生の化学実験にはおすすめである。

結晶成長の実験は,ミョウバンが定番であるが,たまには違うものをつくりたいってときに,みなさんどうでしょうか。

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