見出し画像

沖縄・うるま市でコーヒーを中心に新たな文化をつくる。「ウルマ・コーヒー・ネットワーク」インタビュー①(高橋武紀さん編)

今回は、コーヒー生産者グループ「ウルマ・コーヒー・ネットワーク」の一員として、コーヒー苗を栽培・販売されている、コーヒー農家の高橋武紀(たかはしたけのり)さんにお話を伺いました。
実は、高橋さんにはTODOQの制作チームのWEBディレクターとしてもご尽力頂いていて、私達にとっては頼れる兄貴的存在なのです!そんな高橋さんの知られざるコーヒー農家としての一面を探ってみると、そこには、生産者と消費者の関係を超えた、「コーヒーを通した仲間」としての出会いを楽しむ高橋さんの姿がありました。

――なんとなく高橋さんの雰囲気から、きっと、本土出身なのかな…?と思っていたのですが、ご出身はどちらですか?
高橋さん(以下、高橋):出身は寅さんで有名な東京都葛飾区柴又です。こちらへ来るまでは、神奈川県の川崎に住んでいて広告代理店で仕事をしていました。

ウルマ・コーヒー・ネットワークの高橋武紀さん

ーーずっと本土でIT関係のお仕事をされていたわけですが、沖縄へ来るきっかけがなにかあったのですか?
高橋:実は、広告代理店の出社初日が、3.11の東日本外震災の日でした。その後世の中が一変し、自粛ムードにより広告を見る機会は減り、「思っていたのと違う…」と感じるようになりました。
そういった経験や、沖縄でのびのびと子育てをしたいと思っていたこともあり、奥さんの実家のある沖縄へ移住することにしました。

ーーこうして、高橋さんの沖縄での暮らしが始まるのですね。では、そこから一体どうしてコーヒーを育てることになったのですか?
高橋:沖縄に移住するにあたり就職活動をしていたのですが、面接で一度沖縄へ来たときに、ふと「きっと沖縄のような熱帯系の気候だとコーヒーやバニラを栽培できんじゃないか?」と思いつき、ネットで調べたところやはりコーヒーが栽培できることが分かり、その日のうちに1本のコーヒーの苗を買いました。その苗は、沖縄のお義父さんにしばらく世話をお願いし、半年後、無事移住が決定し、自分でも栽培し始めることになりました。

ーー半年間お義父さんがお世話を!?笑 協力的なお義父さまの存在がとっても大きいのですね!
高橋:自分を受け入れてくれ、農家をさせてくれる環境を与えてくれたお義父さんには本当に感謝しています。自分のコーヒー農園の名前である「FUKU COFFEE FARM」のFUKUはお義父さんの名前に由来しています。

初期の頃から栽培しているコーヒーの木

ーーそれほどお義父さまの存在が大きいのですね。そのお義父さまと高橋さんでお世話をした1本のコーヒーの木が、現在栽培されているコーヒーたちの原木となり、高橋さんのコーヒー農家としての活動が始まっていったのですね。
高橋:最初の1本は、買ったときには2年目くらいだったようで、その年にはもう実がなりました。翌年、種から育ててコーヒーの苗を増やしていきました。当初から、苗を増やしていくつもりでしたが、コーヒーで生計を立てるというより、一部をコーヒーで賄うイメージで行っています。というのも、海外の大規模なコーヒー農園で大量に作られるコーヒーと比べ、沖縄の限られた土地で作られるコーヒーの量には限界があります。今は300本ほどを栽培し、収穫できる豆は数100グラム程度でまだ販売はできていません。将来的には少量ながらも「このカフェに行かないと飲めない」というような価値のあるコーヒーを提供できるようになりたいですね。

コーヒー栽培を初めて7年。それだけ経験を積んできても発芽しないこともあるそう。生き物と向き合うことの難しさ、やりがいを感じますね。

ーー なるほど、沖縄県産コーヒーの今後は「付加価値」を持たせることが大事になってくるのですね。それを踏まえて、「ウルマ・コーヒー・ネットワーク」がどんなグループか教えてください。
高橋:うるま市にある自家焙煎珈琲店 Tettoh Coffeeオーナーの石川さんが中心となり2021年に発足したグループです。石川さんが、うるま市産のコーヒー苗や生豆がホームセンターで安く叩き売りされている現状を知り、「もっと価値があるはずだ!」とこれまで眠っていた価値を掘り起こそうと動いてくれたのがきっかけで、うるま市のコーヒー文化を盛り上げるための活動をしています。今はコーヒーの葉をお茶にしたり、コーヒーの苗を販売したりしています。メンバーには、30年もののコーヒーの木を栽培する伊波さん、生産者でありながらQグレーダー(コーヒーの品質を評価できる国際資格)を持つ松田さんという「すごい人達」がいます。

石川さんがオーナーを務める鉄塔のふもとに佇むステキな自家焙煎珈琲店。その名もTettoh Coffee(テットウコーヒー)

ーー活動を通して高橋さんが感じる「面白さ」を教えてください。
高橋:パイオニアになれる、ということですかね。例えば、メンバーの松田さんは、これまでに存在しなかったコーヒー精製所を併設したコーヒースタンドをオープンする予定で、古材を活用した内装や家具はすべて手作りというこだわりぶり。また、うるま市のホテルのアクティビティとして伊波さんのリーフティーの収穫体験ができるようになったりと、自分が好きな「コーヒー」を通して、うるま市の新しい文化・価値を生み出している感じがします。

ーーそんなたくさんの人の想いがつまったうるま市産のコーヒー。現在、TODOQでも苗を販売して頂いていますが、TODOQから届くものは高橋さんが栽培した苗が届くのですか?
高橋:そうですね。

まず驚くのが鉢の長さ!これはコーヒーの直根性(真下に根が伸びる性質)に合わせた鉢を採用しているため。
観賞用としても楽しめるようにきれいな葉の状態をつくるのが得意な高橋さん。沖縄県のうるま市で愛情こめて育てられた苗がみなさんのお手元に届きますよ。

ーーこちらの苗は、観賞用に飾るだけではなく、コーヒーとして飲むこともできますか?
高橋:もちろん飲むこともできます。3年ほどすると、人の背丈ほどの高さに成長します。その頃には、鉢は高さがある8号〜10号のものが良いでしょう。うまく行けば、3年目の春に蕾が出来、花を咲かすことができれば、3年目の冬には実が付くはずです。花を咲かせるのが難しいのですが、花が咲く条件として、蕾を雨に当てること、というのがあるので、蕾が出来たら雨に当ててあげるとうまくいくかもしれません。

取材当日コーヒーのお花を見ることができました!小さくて可憐な白いお花。雨が降った後にお花が咲くことが多いようです。

ーー実がなったら収穫し、焙煎ですね!
高橋:実かパーチメント(実の果肉部分を取り除いたもの)の状態でカラカラに乾かし、中の生豆を取り出し焙煎します。
焙煎はYouTubeでも自宅での方法が色々紹介されていて、私は動画を参考にしながらフタ付きの鍋を使って屋外で焙煎しています。

左から順に、コーヒーの実(乾燥)、パーチメント(実の果肉部分を取り除いたもので、豆を守る殻に覆われた状態)、パーチメントの殻を破いたもの、殻の中にあるコーヒー豆。
生豆の状態

ーー最後に、読者の方にメッセージがあればお願いします!
高橋:苗を販売しているのは「繋がっていたい」という想いがあります。コーヒーは飲んでしまえば終わりだけど、苗は少なくとも成長するまでの3年間は気にかけてもらえるじゃないですか。そもそも、コーヒーの苗を買って育てたいなんてレアな人なので(笑)、そんな面白い人たちと“一緒に”楽しみたい、「楽しめる状態」をつくりたいですね。実が出来たら一緒に飲みたいし、分からないことがあれば聞いて欲しいんです。だから、お客さんというより「仲間」に近い感じだと思っています。

ーー商品名に込められた“生産者とつながる”の意味が分かった気がします。高橋さん、貴重なお話ありがとうございました!

コーヒー苗を自分で育て、自分で焙煎し、自分でコーヒーを淹れる。こんな贅沢な経験ができるのは、恵まれた環境の沖縄だからですよね。その魅力を沖縄の方にこそもっと知ってもらいたいな、と取材を通して感じました。それにしても、まさか、うるま市でコーヒー通して新しい文化・価値を作り出そうとするこんな面白い人たちが居たなんて!これはウルマ・コーヒー・ネットワークの他のメンバーのお話も聞いてみないといけないな。
というわけで、次回は、同じくウルマ・コーヒー・ネットワークのメンバーで、30年もののコーヒーの木を育てる伊波さんにお話を伺ってみたいと思います!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?