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大麻解禁は雇用へのインパクトがデカいのか?

先日、ついにタイも(医療用途での)大麻合法化にふみきった。ぼくの知る限り、娯楽用も事実上解禁の流れになっているような気がする。

ついにアジアにも大麻合法化の波が来たかという気持ちと、この現象をどう解釈したらいいのだろうかといろいろ考えているのだけれど、タイの話を聞いて、あぁ、これは雇用を生む新しい産業の始まりを期待しているのかもしれないと思い始めている。

ようやくこのムーブメントにおける合法化へ向かう政府の狙いがわかってきたような。

タイトルに示唆されている通り、これは大麻という新しい産業の瞬間を見ているような気がしてきている。どこも景気悪いし、雇用の受け皿だった工場の仕事だって減ってる。日本でさえ、この30年で製造業の労働者は3分の1減ってる。じゃあ労働人口も減ってますかというとそんなことはないわけで困っている。

ブルーカラーもホワイトカラーも苦しいのだけれど、選択肢の多さという点で見た場合ブルーカラーの方がしんどそうである。じゃあそいつらも良い職につくために勉強すればいいじゃんって言いがちなんだけれど、ぼくはできない側の人間だからわかるんだけれど、やる気があってもできない人というのはいる。「健康的な食事と適度な運動をして、消費カロリー以上に摂取カロリーをとらなければ誰だって瘦せる」って正論をどれだけの人が実行できますかという話と同じだ。わかってるけどできない。

大麻解禁は、今ブームというのもあるのだけれど、飲食業とか観光業とかと同じような新しいエンタメのような気がしている。つまり、ITエンジニアみたいにめちゃくちゃ勉強しないといけないようなものではなく、そこまで勉強ができなくたって関われる仕事であるということ。カリブやヨーロッパで大麻を喫っている人を身近で見てきたけれど、大麻喫うから酒飲まないとはならないし (大麻喫うとめっちゃお腹減る)、旅先だろうがどこだろうが喫ってる。なにかの代替品ではない。

オランダのコーヒーショップのような店内での使用に限るというルールでも、バーへ行く前後で立ち寄ることも全然ある。どう表現するのが適切なのか、単純に新しくお金を落とすスポットができたような気がする。

大麻ビジネスにかかわる人みんなが莫大な利益を得るようなことはないだろうけれど、キオスクのオーナーとか、大麻関連商品で月に数千円から数万円売上が上がる程度のインパクトはあるような気がしている。副収入くらいのインパクトはあるのかもしれないと感じている。

それが、新たな雇用を生む!というレベルの雇用の受け皿になるのかはまだ測りかねている。所詮、農産物だ(コモディティになってしまえば儲けは減る≒供給過剰は価格下落につながる)という気持ちと、天然ゴムのプランテーションみたいになるかもなというのが先入観としてあるような気がして、伝聞に頼る情報が多い分、詳しくはないのでうまくイメージができていない。


3年前、カリブで合法化の現場にいた

3年ほど前にカリブに住んでいたときは、まさに合法化の流れがきていて、めちゃくちゃホットな話題で、そもそも身近に娯楽目的で喫っている人だらけ(アイタルと呼ばれる宗教の人は無条件に合法的に喫える。)で、大麻についてよくわかっていなかったのもあり、大麻合法化ってやつはパンドラの箱なんじゃないかと思っていた。

いま以上によくわかっていなかった。

その後、本を読んだり、YouTubeやニュース記事を読んだりして大麻というものについて理解を深め (?) ていくうちに、ぼくの中で新しい酒のようなものだという理解に落ち着きつつある。


大麻の何が問題か


大麻にはざっと2つ主要な成分がある。
CBD(カンナビジオール)とTHC (テトラヒドロカンナビノール)だ。

前者のCBDはダウナー系でリラックス効果があり危険ではなく日本でもこの成分に関しては規制されていない。ここ数年で日本でもCBDオイルがどこでも売ってるように気軽に手に入るものになったように思う。問題は後者、THC。これあアッパー系でハイになる成分だ。これが麻薬にあたるので日本含め多くの国で規制対象になっている。また、娯楽用として解禁されている国、エリアでもTHCの含有量には制限があることが多い。つまり、一定以上のTHCを含有している大麻は引き続き違法なのだ。THCが含まれていることで相乗効果なのかCBDの効果がより出るというのもあり、THCはゼロにはなっていなかったりする(…はず)。


医療用途っていうのも方便ではない

さて、それで多くの国が掲げている医療用大麻解禁っていうのが何を指すのかって、将来の娯楽用途解禁のための様子見段階の方便なんじゃないかと思っていたのだけれど、いろいろ見聞きしているうちに、これはようするに緩和ケアの話なんじゃないかと思い始めている。

もちろん先端医療用の医薬品開発も行われているのだろうが、大麻吸引っていうのが、抗うつ薬や鎮痛剤的な効能があるというので、これは先端医療にアクセスできない人向けのものなんだろうなと。

ぼくがいたカリブは途上国に分類される中低所得国なのだけれど、そんな国でも先端医療機器があったりする。人工透析だってできる。けれど、途上国だからって医療費が安いわけではない。先進国と同水準の利用料がかかる。だいたい先進国の人間なら保険でカバーされるのだろうが、途上国になかなかそんなものはない。あったとしても一般の人が賄える保険料ではない。

負担が大きすぎて利用できないのだ。それを大麻が解決できる可能性がある、というわけだ。治すことはできないだろうが、痛みを和らげることはできる。すべての人に最先端の医療を、という理想を体現するわけではないけれど、現状、現実的に提供しうる手段としては最善とはいえるかもしれない。少なくとも病気によって苦しむ人は減る。

タイ政府が医療用途解禁とともに大麻の苗、100万株を無料配布したのは一般家庭への薬の無料配布の意味合いもあるのかもしれない。市場に大量に大麻を配布することで、反社以外からの供給ルートを確保するのと大麻の市場価格を下げる意図もあり、大麻へのアクセスは容易になっているのは間違いない。おもしろい施策だ。

…もっと強いのもあるよ

ヨーロッパでも大麻合法化の流れはあり、先日訪れたチェコでも合法化されているらしく、小さい商店というのかキオスク的な店舗でレジ横に大麻が売っていた。

プラハの街角で

ぼくはこれまで、売人的な人から手に入れる場面しか見たことなかったのだけれど、こう堂々と売っていると(合法化されているからやましいことは何もないのだけれど…)けっこうびっくりした。

そして、この大麻ってやつはどうやらブランド?品種?があるらしく、moonrockやら、super lemon hazeやらいろいろあることを知った。そして、このときに大麻のクオリティーが良いというのは、多くの場合THC含有量が多いことだと察した。

これはちょっとおもしろいなと思って、もっと強いのはないのか、全部合法なのか?なんて聞いてたら、もうちょっと強いのあるよって店の裏からTHCの強いを出してきて、「これはちょっと違法」なんて言っていた。買う時も特にIDの提示を求められるわけでも、パスポート情報をひかえられるわけでもないので、これは現実的に取り締まりは難しいだろうなと感じた。

この他にも写真撮ってないのだけれど、大麻クッキー的なのとかお菓子的な商品がたくさんあって、このムーブメントの盛り上がりを感じたりした。

店頭に並んでいるのは、基準値内だけれど、あとから出してきたのは基準値外ということはインフォーマルなのだろう。こういうことができてしまうってことは、THC含有量の基準を設けるのって意味あるのかと思ってしまうし、合法化することによって反社会的組織の資金源になることを防ぐみたいな効果ってないのでは?とも思ってしまった。

結局、大麻愛好家の裾野を広げるだけなのではないかなと思わなくもない。THC濃度の低いものってあんまり楽しくないから、それで満足できる人って少ない。あるいは、もう少し強いのってどんな感じなんだろうって思ってしまう。消費者はよりTHC濃度の高いものを、違法なものを求めるようになってしまうのではないか、つまり、結局、反社組織にお金が流れるのを止めることができないのでは?これがゲートウェイドラッグってやつかと思わなくもない。

ただ、それが、クオリティーの高い(THC濃度の高い)大麻でも満足できなくなって、早晩大麻から覚せい剤やコカインへ向かうかというと、それはそれで飛躍が過ぎるのではないかと思わなくもない。そこはさすがに一線を越える感覚があるというか、地続きではない深い谷があるように思う。

ぼくが見聞きする限り、大麻を喫うっていうのは未成年が酒を飲んだりタバコを喫ったりしているような感じなのだろうと思う。だから、適切な表現ではないかもしれないけれど、大麻からコカインは万引きからレジ襲って強盗するくらいの感覚の違いを感じるのだ。

だって誰しも覚せい剤やコカインはヤバいと思ってるから。ただこの感覚もある程度のリテラシーが必要なんだろうなという気もしている。

※重要※

大前提として、日本では引き続き大麻は違法なのであしからず。たとえ、合法的に所持、喫煙できる海外でも、日本は一部(?)で属人主義を採用しているので処罰対象になる可能性がある。属人主義は刑法の場所的適用範囲に関する立法主義の一つで、自国民による犯罪に対しては犯罪地を問わず自国の刑法を適用するもの。


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