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ここは選ばれし者しか来れないんですよ

JICA事務所がないことで、なにか不便なことはないですか?

セントルシア事務所から出張してきた調整員さんと夕食を共にしているときに改めて聞いてきた。最近電話で何度か聞かれたことでもある。

ぼくが派遣されているセントビンセント及びグレナディーン諸島という国にはJICA事務所がなくて、隣国のセントルシア事務所が管轄している。

はっきり言ってよくわからない。だって最初からなかったんだから、事務所があることでどんなメリットがあるのかがわからない。ないのが普通で、あったことがないから想像もできない。その代わりに現地アドバイザーという人がいて、JICAに言うほどでもないけど何か困ったことがあればその人を頼ることになっている。

その人はたまに自身の農園で収穫されたアボカドやマンゴー、グァバなどの野菜や果物をわけてくれて、そしてそれらは市場で売ってるものよりおいしいからとても重宝してるんだけど、事務所があればそういうサービスの頻度が上がるとかあるのだろうか。

それに、国境を越えるといっても、飛行機で30分ほどのことだったりする。出入国時間含めてドアツードアで3~4時間ほどでセントビンセントの自宅からセントルシア事務所にいけるような気がする。この距離感って国土の広い国や交通事情の良くない国の地方隊員より早いんじゃないかな。

特に困っていない気がする。

ぼくら隊員3人、改めて聞かれても沈黙と虚空を見つめる時間が続いたあと耐えかねた調整員さんが、

まあね、ここは選ばれし者しか来れないところですから。事務所がないぶん語学力は高めに設定してますし、業務遂行力もあって精神的にタフなやつしか送ってくるなと本部に言ってあるんで。希望しても簡単に来れるところじゃないんですよ。みなさんは事務所の要望通りの選ばれし者ということですね

と言った。

語学力高めに設定してるというのは、これまでいろんな人から何度聞いたことがあって、現地の訛り強すぎて全く意味ないと思うんだけどなと思っていたけれど、あとの2つは初めて聞いた。

いや待ってくれ。

ありがとうございます、リップサービスでも嬉しいです。

でも、ぼくセントビンセント一切志望してないんだよ。

他の2人は第1志望と第2志望でおよそ希望通りだから、ちょっと誇らしげな顔をしているのもわかる。

ぼくコロンビア、ニカラグア、ペルーとかそのへん志望した気がする。セントビンセントなんて文字列は合格通知で見るまでほんとに知らなかったもの。

いや、ぼくさ、ぼくがさ、志望したところってさ、要請内容的にこの程度だったら余裕で成果出せるから、適度にお茶を濁しながら2年間のバケーションを楽しもうと思い描いていたわけだよ。(※真に受けないでください)

それがさ、なんだよ。精神的にタフなやつだって?そんなハードシップの、日常的に銃声鳴り響く町に、言ってみれば戦場の最前線になんの断りもなく放り込むなんて、控えめに言ってびっくり。(※話半分で聞いてください)

ぼくのプランではこの2年間で勘所を掴んで、国際協力分野でキャリアを築こうと思っていたわけだよ。それがさ、リソースゼロで、何もかもができてない足りないところに放り込まれてさ、毎日泣きそうになりながらなんとか立ってるんだよ。つらいよ。(※真に受けないでください。話半分で)

これ心折れるよ。ぼく田舎出身やけど良いところの家の子やから。精いっぱい甘やかされて育ったから。

精神的にタフなんてぼく一言でも言ったかあ?

記憶にない。豆腐メンタルなんだが。

選ばれし者ね。

応募して採用されたという点では、間違いないが。

難しいことをやってる方が暇しなくて良いんだけど、上手くいってたらそんなことも言えるけど、ぼく活動うまくいってないんだよなあ。

そして最短来年の7月に来るとリクエストをだしていた新隊員の募集はひっそりと取り下げたらしい。障害者協会に派遣されてぼくと同じような内容の業務。要件レベル高すぎて、こんな人材いないってなったらしい。

ほぼ同条件で派遣されている、ぼくの存在とは。

久しぶりに知りたくない事実に遭遇した。

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