素直には喜べないイノベーション
フィンテックのスタートアップにSoFiというユニコーンからの上場を果たした会社がある。ソフトバンクも出資していた。
このスタートアップがまず提供したサービスは低金利の学生ローン。
すばらしいビジネスモデル
アメリカの大学の学費は年々高騰していて(80年代に比べて2倍以上!)、学生の多くは学生ローンを借りる。大学を卒業したばかりの、いわゆる新卒の人たちは平均3万ドルの借金があるとされてる。その負担が大きいが故に子を持つこと遅らせたり…とよりよい人生を送るための大学進学だったはずが、次のライフステージへのブレーキになっていたりする。
で、この学生ローンはトップスクールだろうが、そこそこの大学だろうが成績がどうだろうが利率は同じ。ここにSoFiは目を付けた。なぜなら高学歴の人は返済する可能性が高く、返済が滞るリスクが低いから。つまり、金利を低くして学生ローンを貸しても成り立つから。お金を貸す側も銀行に預けるよりは良い金利収入を得ることができるから、学生ローンの原資も集まりそう。というか集まったんだろう。
SoFi的にも高学歴の人たちを学生ローンで囲めたことで、その後のライフステージに合わせた金融商品の提案がピンポイントでできるようになった。なぜなら低リスクの高学歴の人たちとはつまり、高所得層の卵であるから。
不動産融資や、保険、投資、転職などあらゆるサービスの優良顧客リストを持っているということだから。それが故にSoFiはユニコーン、そして上場へ爆速成長したのだと、ぼくは理解している。顧客側としても低利という大きなメリットを享受しているwin-winな関係というわけだ。
すばらしいビジネスモデルだと思う。メディアでも低金利で学生に貸せるという点で社会的事業として紹介されることが多かったと思う。
教育ってそれでいいんだっけ?
で、ぼくが何にひっかかっているかというと、ますます分断がひろがるんじゃないかと。
つまり、学生ローンの金利がみんないっしょって、ほぼ確実に返済してくれる人たちとちょっとリスク高いなって人たちを均して金利設定してるわけで、ほぼ確実に返済してくれる人に抜けられると、返済リスク高い人しかポートフォリオ内に残らなくなる。
実際はごそっと一気に抜けるなんてことには市場シェア的にないのかもしれないけれど、それでも少なくとも低リスクの人の割合が減るわけだから、金利は上がりそうではある。
つまり、返済リスクが高い人の金利が上がる。これはよりさらに、返済延滞リスクも上がる。それに呼応して金利が上がる…と悪循環になりそう。
上記のような仕組みでないのなら問題はない。けれど、もしそうであれば、それって社会全体にとっていいんだろうかと立ち止まってしまう。
そのリスク高い人たちにとっての大学進学って、中間層への足掛かり的な意味合いがあったりするんじゃないかと。それって社会の側がすくい上げていくべき人たちなんじゃないかと思ったりする。零れ落ちる人増えちゃうんじゃない?って思ってしまう。
別に、低リスクの人が低金利になるのはけしからんと言いたいわけじゃない。高リスクの人たちのリスク分の金利を払えと言いたいわけじゃない。
だって問題は学費の高騰だから。
だからSoFiが悪いわけではない。SoFiは高学歴の学生ローンの金利の課題を解決したんだから。
けれど、その解決に投入された資源が共有地から持っていかれたような、小学校の掛け算の授業で、まだ7の段6割くらいの人わかってないのに次行っちゃったみたいな、なんかモヤモヤする。
杞憂ならいいのだけど。
参考記事:
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