涙、泪、涕
久米春花です。
todokeru,座興公演「り、り、り」終演いたしました。
ご来場くださったみなさま、お力お心を寄せてくださったみなさま、本当にありがとうございました。
新町川文化ギャラリーという素敵な空間で本作をお届けできたこと、大切な経験になりました。
3作のオムニバスで紡いだ「り、り、り」は、ひとつの部屋を舞台にそれぞれの喪失、そして地続きの日々を描いた物語でした。
『コーヒー』は、カフェ兼雑貨屋を開店する予定の女性2人組が物件探しにこの部屋を訪れるシーンから始まります。
岡田多恵という役を演じました。
今までtodokeru,で演じた役のなかで一番素の久米に近かったのかな?
でもあんまりそんな感じはしなかった。
多恵のこれまでとか、選ぶものとか、言葉とか、
それらが自分の身体に落ちてきたときに、自然と多恵として息を吸っていました。
鈴江さん演じる奥本朋美はとってもチャーミング。
多恵と朋美の会話はかみ合ってるようで、恐ろしくかみ合ってない笑
基本振り回されペースを乱される多恵と、最後結局おこられる朋美ですが、きっとベストパートナー。
彼女らの過去を掘り下げたり、
バリスタの動画見たり、
柳原可奈子の動画見たり(?)、
稽古期間中にひとつ深いところまでいけたかしらん♩
ドロシーとブリキとは全然ちがう関係性だけど(笑)
信頼させてもらえました。
一生久米さん鈴江さん呼びなんだけど、心の距離グッと縮まった気がしてる。気のせいじゃないよね?
鈴江さん、ありがとう。
そして物語の核心、エビちゃんという存在。
お客様の受け取ったものがすべてなので、造形のあれこれはここでは書きません。
じゃあそうだな、久米自身の話をしますね。
私は普段、「涙もろい」という言葉の正反対にいる人間です。
ドラマとか映画とか音楽とか舞台とか小説とか大好きだし、
ていうか人間好きだし、
喜怒哀楽いずれにしろ感情の振れ幅は小さくない(たまにTwitterとかに漏れ出る)のですが、
涙ってそうそう出ません。
出ても、ジワっ、ぐらい。
体育祭優勝した、とかでボロボロ泣ける人っていたけど、あれどうやってんだろう。
今ふと記憶の扉が開いたのだけど、小学校の卒業論文で涙の研究しましたわ。
(久米の通ってた小学校には卒業論文ってのがありました。400字原稿10枚程度で、気になるテーマを研究するっていう。友達は、「糸電話で何メートルまで聞こえるのか?」とか「ドリンクバーのドリンクを混ぜて最高の組み合わせを考える!」とかやってた。)
そんな中久米(12)が書いたテーマ、「一番効率よく嘘泣きできる方法」。
あんま覚えてないけど、悲しいことを想像するとかあくびをするとか色々試したけど環境と体調によって結果がブレるので、結局ドライアイに気を付けながらまばたきを我慢する、みたいな結論でまとめた気がする。なんそれ。
なんだろ、私って冷たいのかなあ、みたいなありきたりなことを人並みに悩んだ時期もあった。
でも、そういうことじゃない。
この人の前では泣けない、泣きたくない、とかがあるんですよね。
ここで感動してるって思われたくないな、とか、
ここで弱み見せてたまるか、とか。
そういう自意識が人一倍強いというか、基本的に誰一人にもナメられたくないみたいな取るに足らないプライドがあるので、泣いてこなかったんだと思います。
こういう性質で色々損をしてきているとも思う。
話が大幅に逸れましたけども。
だから今回、エビちゃんを思って(それだけではないのだけど)、涙するシーン、鬼門かもな~と思っていました。
稽古中は言うても久米がそこにいて、なんか全然泣けなくて。
で、ほんと最後の一週間ぐらいですごく核心的なところ、エビちゃんのことが、恋心というものが、喪失するということが整理できて、これはいけると思いました。
多恵の気持ちが、心にストンと落ちてきたから、もうそこに立っているのは久米と鈴江ではなく、多恵と朋美だった。私の中ではね。
本番初日の幕が開いて、いい意味で私は緊張感なく(だって自意識がゼロになったから)、舞台に立っていました。
冷静でもあったけど、そこに確かな熱もあった。
todokeru,に入ってから、いや、いままで舞台に立ったなかで、はじめて、これがすべてだと思う芝居ができました。
で、初日の夜公演が終わって、家に帰って、ご飯食べてお風呂に入って、で、来ていたLINEの通知を見て、心がグワぁーーーーーーーーっとなった。
で、これはすごいプライベートな話なので心配はしないでほしいんですけど、その夜に、ある大切なものを失くしました。悲しい出来事でした。
試練、与えてくるなあ。
一筋縄ではいかないなあ、演劇。
満たされてしまったら、それが終わりの合図なんだろうけど、
まだまだやめられないな。
明日も2公演あるのに涙涸れちゃうじゃねーか、って思ったけど、朝起きたら目は腫れてなくて安心しました。
舞台上では絶対に多恵であろう、矜持を持って会場に向かおう。
2日目の2公演も、多恵として泣いてました。
全3公演、陽射しのあたり方も、体感温度も、窓から見える景色も違って、それぞれの瞬間で新しい気持ちが生まれました。
会場が生きていると思ったのは初めての感覚でした。
新町川文化ギャラリーという場所でこの作品を上演できたこと、大切に思っています。
改めて、ありがとうございました。
当日パンフレットもつくったよ。
中の挿絵はふみさんに描いてもらいました。
普段泣かないとか言ってっけどよ、
なんか打ち上げで2回ぐらい泣いてたよこの人。
飲んでたのであんま覚えてないでーす。
「り、り、り」って涙の流れる音にも聞こえる。気がする。り、り...…
受け止めてくれるみんな、愛してるぜ🫶🏻
todokeru,はこれからも歩み続けます。
8/6の平和祈念朗読会、9/14のマエカブ演劇フェスティバル!
目の前の目標があるというのは幸せなことですね。
絶対良いもの届けたい。
ご期待ください。
久米 春花
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