現在の景気拡張局面のまとめ

先日の「いざなぎ超え」認定を受けて、自らの備忘録も兼ねて、現在の景気拡張局面について特徴を整理してみた。

実質国内総生産(GDP)の平均成長率は戦後最低。現行基準と異なるGDP統計ではあるが、いざなぎ景気(11.5%)の10分の1である。現行基準でさかのぼれるバブル景気(第11循環)の5分の1である。現時点で戦後最長の第14循環よりも低い。

日本が人口減少社会に入ったことを踏まえ、「推計人口」(総務省統計局)を用いて、人口1人当たりの平均成長率をみても、この傾向に変わりはない。

「労働力調査」(総務省統計局)の就業者数を用いて、就業者1人当たりの平均成長率をみると、現在の景気拡張局面の平均成長率はダントツに低い。この要因としては、以下の2つが考えられる。
(1)「医療・福祉」分野での就業者の拡大
 就業者は2013年から2017年にかけて204万人ふえているが、その37%(76万人)が、労働集約的産業と考えられる「医療・福祉」分野である。
(2)短時間労働者の拡大
 「毎月勤労統計調査」(厚生労働省)によると、総実労働時間指数(2015年=100)は、2013年の100.7から17年は99.2へと4年間で1.5%も減少している。

働く人1人当たりが生み出す付加価値の伸びが低いと賃金の伸びも弱くならざるを得ない。現行基準でさかのぼれる1994年以降について、GDP統計の実質雇用者報酬を労働力調査の雇用者で除して、景気拡張局面における1人当たり実質雇用者報酬の平均成長率を確認すると、現在の景気拡張局面はマイナス0.2%と緩やかな減少になっている。

そもそも、現在の景気拡張局面が2012年12月から続いているという見方について疑問の声をあげる人は少なくない。私も、2017年6月15日の第17回の景気動向指数研究会において、2014年4月以降を景気後退局面と認定しなかったことに対しておかしいのではないかと書かせていただいたことがある(週刊エコノミスト2017年12月19日号)。

景気拡張期間にも疑問があり、戦後最弱の成長であることを考えると、「いざなぎ超え」と現在の景気拡張を賞賛するのは妥当ではないだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?